ハロウィンの夜、名前は寝返りを打とうとして圧迫感に目を覚ました。

寝ぼけた眼にぼんやりと映るのは、縛られている両手足と、腰の上に圧し掛かっている何か白くて重い物。


その異常な光景に、ぎょっとして一気に覚醒した。

恐ろしさに叫びそうなのを我慢して暗闇の中目を凝らして見てみる。

その白い塊はどうやら人間のようだ。
白い布で体中をぐるぐる巻きにしていて顔はよく見えない。


あなた誰?何をしているの?

そう恐る恐る声をかけようとした名前より先に、不審者の方が口を開いた。


「やっと起きたな!トリックオア…おあ…あ…?…アアア?…えっと…」

「…トリート?」


その特徴的な喋り方で男の正体が判明し、名前はほっと一息ついた。

同時に笑えてくる。
不気味な白い布は包帯男の仮装のつもりだったのだ。


「それだよぉ!トリート!くれ!」

「セッコ、ハロウィンなんて知ってたんだ」

「チョコラータがそう言ったら名前が美味いもんくれるっつったんだよ!なのに寝てやがるからイタズラしてんだぜぇ!」


この悪ふざけがチョコラータの仕向けたことだと聞いて、すんなりと納得がいった。

ハロウィンの意味をよく分かっていないセッコをけしかけ、名前を困らせて楽しもうなんて、意地悪な彼が好んでしそうなことだ。

よく見るとベッドの脇に彼愛用のデジタルカメラまで用意されている。
当然のように録画中の赤いランプが点った状態だ。

ビデオに映る名前の怯えた顔を見てゲラゲラ笑うチョコラータを想像し、名前は少しムッとした。


それにしても、セッコの言う「イタズラ」とは、この腕と足にキツく巻かれた包帯のことだろうか。

チョコラータの考えた嫌がらせにしてはぬるいな、彼だったらこのまま水の中に落とすくらいはしそうなのに。

そんなことを思いながら、名前は不自由な手足を揺らし「はやくこれ取って」とアピールしたが、セッコは何かに夢中のようでそれに気付いてくれない。

彼の視線の先に目を向けると、名前のパジャマの胸ボタンを一生懸命外そうと格闘しているところだった。

手先があまり器用ではない彼は、一向に外れようとしないボタンに焦れて「クソ!」と叫ぶと共に名前のパジャマの前をボタンもろとも引きちぎってしまった。



「何するの!」

驚いて大きな声を出した名前にセッコは一瞬ビクッとして、しかしすぐに強気に「チョコラータがやれって言ったんだよお!」と言い返す。


ここでやっと名前はチョコラータの本当の目的を理解した。

自分の恋人が他の男に襲われているところをビデオに撮ろうというのだ。

彼はきっと嫌がって泣き叫ぶ名前の顔が見たいのだろう。

チョコラータの性癖をよく知っている彼女は、そんな彼を逆に困らせてやることを思いついた。

いつも自分に酷いことばかりする彼に対するささやかな仕返しだ。




「分かった、待たせてごめんね。今トリートをあげるから、これほどいて」

にっこりと微笑んで、名前は優しく言う。


彼女が思いついた仕返しとは、喜んでセッコに抱かれてやってチョコラータを悔しがらせてやろうというものだった。

名前を虐め尽くす反面独占欲の強い彼は、もしかしたら本気で怒るかもしれない。

でも、その時はその時だ。

彼と付き合いを持ってから何度も危機に曝されてはぎりぎりの所で命拾いしている名前には妙な勇敢さがあった。




「絶対ほどくなって言われてるから…それはダメ」

自分に向けられた笑顔にどぎまぎしながらも、セッコはゆずらなかった。
それならば、と名前は彼に口で指示することにする。


「破れたそこから手を入れて、触ってみて」

セッコは戸惑いつつ、名前の言う通りにそこに手を差し入れた。

パジャマの下には薄いキャミソール一枚しか着ていない。
掌にダイレクトに感じる胸の膨らみの柔らかさを、彼は最初は遠慮がちに、段々強く揉み潰すようにして味わった。


「うん…そう。そうやって、先の方も撫でて…」

隆起してきた先端を爪で擦り、指の腹で撫でつける。
すると硬さを持ち始めたそこは指を弾力でツンと押し返してくる。

次はどうするかまだ何も言われていないのに、セッコはキャミソールごとパジャマを捲り上げ、起立したその突起を舌でぺろぺろと舐めた。

名前は胸の奥がキュンとして、下も反応してくるのが自分で分かる。




「ん……そこはもう、いいよ。今度は下を触ってみて」

「うん、わかった…」

鼻息が荒くなってきたセッコは、名前の履いているズボンをパンツと一緒に一気にずり下げた。
縛られている足首のところで三種類の布がもみくちゃになって絡まる。

名前は「触って」と言ったのに、少し濡れ始めているそこにセッコは迷わず口付けた。


長い舌がうねりながら奥へ奥へと入り込んで来る。
まるで何か別の生き物のような舌の動きに煽られて、名前のそこからは愛液が迸った。


ずちゅ、ずる。

下品な音を立ててそれを啜り上げられ、名前は流石に顔を赤くした。

しかしそれではチョコラータへの嫌がらせにならない。
名前はわざとカメラのレンズの方に顔を向けて、出来るだけいやらしく聞こえるように喘いだ。


「あぁ…、気持ちいい…。セッコ、とっても上手だよ」

本当はセッコの愛撫はさほど上手でもなく、一番触れてほしい場所を避けられて焦れったいくらいだった。
しかし意図してやったわけではないそんな焦れったさも、熟練した男の仕掛ける駆け引きと同じように効果があった。

夢中で舌を出し入れしているセッコの鼻が、赤く腫上がっている小さな突起を時々急に掠める。
それは予告してそうされるのよりも何倍も気持ち良い。

その刺激が気に入ったので、名前はあえて彼にどこを触れと指示はしなかった。

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