打ち上げと称した盛大な酒盛りの後、チーム全員がそのままお決まりの雑魚寝になだれ込んだ。
少し前までの馬鹿騒ぎがどこへやら、酒をたらふく飲んだ男女は皆それぞれ好き勝手な位置に寝転び、深い眠りについている。

しかしその中でただ二人、ごそごそと不穏な動きをする者がいた。

「やだ、聞こえちゃう」

名前が自分の服の中に入れられた男の手に身を捩りながら、鼻にかかった声でそれを咎めた。
彼女の頬は火照って暗闇にも赤く染まって見え、かなり酔っていることが窺われる。

「平気へぇき、みんな潰れちまって夢の中だろ」

彼女を抱きしめてそう囁くホルマジオの方も、アルコールのせいで少しばかり呂律が回っていない。

「でも」

「しょーがねえなあ。じゃあこれでも咥えてろよ」

「ん、っ!」

渋る名前の口にホルマジオが指を捻込んだ。
指先で舌や口内を弄られ、名前は大人しくそれを舐める。

「こうしたら聞こえねーだろ?」


「…もう聞こえてるよ、馬鹿」

すぐ傍ら、彼らに背を向けた格好で横たわっているイルーゾォが、ぼそりとそう呟いた。
けれど熱中している二人が彼の言葉に気付くことはなく、そのまま恋人同士の愛撫は続く。

そんな彼らを咎めることを、下手なリスクを負いたくはない彼は早々に諦めてしまった。

かなり酔っていつもの高い判断能力を失っているらしいホルマジオのこと、名前との睦みに水を差されて、きっと不機嫌になるだろう。
理不尽に当られでもしたらたまったもんじゃない。

それで諦めたはいいものの、さてこれをどうしようかと、先ほどから男の本能に素直に反応してしまっている自分の下半身を見つめ、イルーゾォは気だるくため息をついた。

彼にとって不幸なことに、聞かなかったことにして眠り直すには目が冴えすぎていた。
つい数時間前まであんなに酔っていたはずなのに、あの大量のアルコールはどこへ飛んでしまったのかと不思議なくらい、頭は冷え冷えと醒め切っている。

きっと名前のあの甘ったるい声のせいだ。
抑え気味の声がホルマジオの指でくぐもって、余計にエロティックに聞こえる。

このまま自慰をしてしまおうか。
そう思ったが、ただするだけではなんだか悔しい。

どうせするなら、名前を酷く抱く想像でもしてやろう。

イルーゾォはより強い興奮で惨めな現状から目を逸らそうと、わざと自分を焚きつけた。

目を瞑り、頭の中の自分の手で名前を裸にする。
嫌がって暴れる彼女を力ずくに押さえつけ、敏感な部分を好きに弄り回す。

そうすれば名前は泣き叫んで、あいつの助けでも呼ぶんだろうか。


「んんっ、…ん…」

そこまで考えて、イルーゾォの空想は名前とホルマジオの口付けあう音で中断された。
少し振り返れば、ねっとりと舌と舌を絡めあっている彼女の蕩けた表情まで見えるのだろう。

やめだ、やめ。

自分の骨ばった指で服の上から擦ってみても虚しいだけだった。

そもそもオレに陵辱の趣味はない。

嫌な冷や汗をかきながら、股間だけが熱かった。

無理やりにでも寝てしまおうと再度目を瞑る。


それにしても、本人達は知らないとは言え、よりにもよって一番聞かれちゃならない人間に聞かれるなんて、あいつらも運がないな。

いや、一番不運なのはオレか。

そう自嘲してみても下半身の熱は収まらない。

冷え冷えとした頭で身体だけが焼け焦がされる、灼熱地獄のような熱帯夜に、イルーゾォは一人身をさらしていた。

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