「ねえ、メローネは私のどこが好き?」 ベッドの上、名前と絡まりながら髪や耳朶を弄んでいたら、彼女が唐突にそう言った。 一瞬どうかしたのかと思ったけど、彼女が妙に悪戯っぽい表情をしていたから、「ああ、またアレが始まったのか」とすぐに理解した。 名前は最近、こうして変な役作りをして、俺とイメージプレイに興じることがお気に入りらしい。 この間は看護婦と患者の設定で、その前は俺が生徒で彼女が教師だった。 今日は「恋人ごっこ」といった所か。 「んー…そうだな、この魅力的な身体かな」 適当に返事しながら、服の中に手を忍ばせ、身体のラインをなぞっていく。 盛り上がった胸、きゅっとしまったウエストから、また丸いカーブを描く尻。 上から下へと掌を滑らせて、太股と尻のところで滑らかな肌を堪能すべく行き来させると、彼女はくすぐったそうに腰をくねらせた。 「もう、それじゃまるでセックスだけが目当てみたいじゃない」 名前は俺の返答に不満気に頬を膨らませ、恋人を嗜める可愛い女を演じて見せた。 そんな顔して、俺の知らない所で他の男ともヤッてんだろ? よく言うよ、このビッチが。 そう詰って、今すぐその口にペニスをねじ込んでやりたい衝動に駆られる。 でもここは抑えて、彼女のお遊びに付き合ってやることにする。 それは勿論、こういったお芝居によってプレイに幅が出ることは俺にとっても都合がイイことだから。 「おっと、それは悪かった。じゃあ言い方を変えるよ。君の性格も身体も全てが好きだよ、愛してる。君は俺の運命の人だ」 ベッドに片肘をつき、大げさに身振り手振りを沿えてぺらぺらと口から出任せを吐いた。 こんな安っぽい、今時ドラマの中ですら聞かないようなセリフ、自分で言っていて薄ら寒くなる。 「ありがとう、私もメローネのこと大好き」 しかしこんな低レベルの演技でも名前の合格ラインには届いたらしく、彼女はまたもわざとらしい作った声でそう言って、俺にぎゅうときつく抱きついた。 その勢いで何度もキスして、それが徐々に深くなっていき、口の端から唾液を滴らせるくらい激しい口付けに発展する。 「んん…」 唇を離すと名前はまた俺の首にしがみつき、首筋や耳にまで熱いキスを降らせた。 お返しにと、俺も胸元に手をやり、そこを柔らかく揉み上げてやる。 「ん、ぁっ」 色っぽい吐息が耳元で聞こえて、下半身に血が集まってくるのを感じる。 それにしても今日はやけにスキンシップが激しいな。 いつもはお互い愛撫は熱心にするけど、キスやハグはこんなにはしない。 これもプレイの一環か? そんなことをぼんやり考えながら、乱れた服を手っ取り早く脱がせ、床へ放る。 小芝居で気分がノッたのか、名前はまだ直接触れてもいないのにいつもより濡らしていた。 「あ、っ」 愛液で満ちているそこへ指を侵入させ、手前の性感帯を圧迫しながらゆっくりと出し入れしてやる。 「ぁん、ん」 名前は目をぎゅっと瞑っていて、心なしか喘ぐ声もいつもより初心っぽく、可愛らしい。 「なんで目、瞑っちゃうの?」 「恥ずかしく、て」 そう言って視線を逸らす名前。 いつも俺のペニスを美味そうにしゃぶってる口からそんな言葉が出たことがおかしい。 これが最中でなけりゃ、きっと笑い出してるくらいに。 「俺はこっち向いて欲しいな。名前と見つめ合いながら一つになりたいんだ」 経験の浅い女を優しく導く男になりきって、俺も演技を続ける。 「好きだよ、名前」 彼女は「私も」、と小さく呟き、大きな瞳で俺を真っ直ぐ見据えた。 その演技はなかなか真に迫っていて、「純情な乙女を騙し犯している」と思ってみると俺の方も結構燃えた。 ベッドがギシ、と大きく軋む。 「あぁっ、メローネ」 挿入の瞬間、切なそうに名前を呼ばれ、視線が重なる。 ふと、もしかすると名前は本当に俺のことを、…なんてことが頭をよぎった。 「好きよ、メローネ」 本当の恋人にするように、愛おしそうに目を細めて俺の乱れた前髪を手で払う名前。 今日の彼女の演技は「演技している演技」なんじゃないか? 「ああ…、俺も好きだよ」 しかし、俺はそんな疑問は絶対に口にしたりしない。 折角「お似合い」で「いい友達」でいる俺たちの関係を崩すなんて、そんな勿体ないことできやしない。 それにもし俺の想像が当たっているのであっても、名前だってそう考えているからはっきりと言わないのだろう。 だから俺はそれに甘えて、とりあえず今は「恋人ごっこ」を存分に楽しませて貰うことにする。 対面座位に体勢を変え、耳朶を甘噛みしながら愛を囁き、「綺麗だよ」「素敵だよ」と煽てて鏡の前で立ちバック。 「君の全てがほしい」と支配的な後背位にも持ち込んだ。 そして最後はまた正常位できつく抱き合い、彼女の奥の奥へたっぷりと射精。 受けとめた彼女の幸せそうな顔が滑稽で、でもそこがとても可愛くて、こっちの方がこの「遊び」にハマッてしまいそうだなと俺は思った。 |