今日も今日とて、女を呼び出してセックス。

「仕事、お疲れさま」

「ああ、ありがとう」

俺の仕事内容など露ほども知らない癖に名前はそう言って、俺は俺でそれに生返事を返す。

そして部屋の明かりを消し、薄暗くなった中、ベッドに横たわった女の上に覆い被さり、その身体に手をかける。

電話一本でわざわざここまで来るこの女も馬鹿なら、単なる日課として彼女を呼ぶ俺も馬鹿だ。

セックスなどもう飽きるほどして、実際少々飽き気味だというのに。

無駄に着飾っている服を一枚一枚剥いでいき、今更興奮も覚えない女の素肌を何の感動もなく目に映す。

本当に、なぜこんなことを習慣にして、そして抜け出せないでいるんだろう?

ごちゃごちゃした装飾がついている下着をよく見もしないまま床に投げ捨てて、俺は面倒な前戯の片手間に浮かんだ疑問の答えを探した。

俺にとって、セックスとは一体何なんだ?

以前何かの折に「趣味だ」などとうそぶいたこともあった気がするが、実際は違う。
趣味と言えるほど本心から楽しんでいるわけじゃない。
どちらかと言えば、必要だからしていること。

指に絡み付く生暖かい液体を確認して、そろそろいいかと手抜きの愛撫を終わりにし、まだ半勃ちのペニスを自分で扱いてから、手早くゴムをつけ、名前の中に突き入れた。

男は不便な生き物だ。
溜まっている物を放って置くと夜中に勝手に出て惨めな思いをするし、下手すると物自体が腐り落ちてしまうこともあるらしい。
一人で処理するのも手段としてあるが、終わった後のあの寂寥感は俺にはどうにも堪え難い。

それならば、という消極的選択で、俺はセックスをする。

ペニスを根元まで納めたと同時に、腰を前後に揺すってゆるやかな抽送を開始した。

そうだ、俺にとってセックスは、快楽目的とすら言い難い、ただ勝手に生産された子種を捨てるために行う作業だ。

愛液に塗れたそこが俺のものを深く飲み込んでは、腰を引く度ずるりと絡みつきながら名残惜しそうにそれを吐き出す。
俺の下で名前が顔を醜くゆがめ、鼻にかかった媚びるような声をあげる。

世の中にはこれと同じ行為を、最高の愛情表現として認識している人間がいるということが、俺には理解できなかった。

女の性器に自分の赤黒い男根を肉を抉りながら埋め込む、こんなグロテスクな行為を愛する人に行い、あまつさえ子供などといった邪魔者を作るなんて、信じられない。

勢いをつけて奥近くを突き上げると名前の身体が跳ねた。

もしも心から愛する人が出来たなら、俺はその女性とは絶対にセックスなんかしないだろう。
子供も要らない。二人の間には何者も存在して欲しくない。

「はあ、ああ」。悪夢に魘されるかのごとく、名前は絶えず苦しそうな息を吐いている。

しかしこんな俺にも、自分の遺伝子を引き継いだ子供と言うものを見てみたいという好奇心だけはあった。

俺の子は一体どんな顔をして、どんな声色で話し、俺のどの性質を受け継いでいるのだろう、そんなことを夢想してみるのも素直に面白かった。

俺の動きに合わせてベッドがぎしぎしと音を立て、名前の放り出された脚もゆらゆら揺れる。
女の熱い身体との接触面に汗が滲む。


突如、これは何も俺に限ったことでなく、男は誰しもこんな具合で、愛情だの父性だのといったものは後からついてくるものなんじゃないか、などという考えが浮かんだ。

実際に子供が出来てしまって初めて、その子に対する「愛」も自然に生まれ出る、そんなものなのかもしれない。

そうだ、俺はベイビィ・フェイスの息子にだって、出来のいい者には愛着を覚えたこともある。
息子を育成するのも、仕事でありながらなかなか楽しんでやっていると思う。

もしかすると、俺は本物の子供もそうやって愛せるんじゃあないか。
そうすれば、その母親である名前に対しても愛情を感じるように、なんてことも考えられる。

俺はその思いつきに身を任せ、ぐいと奥まで押し込むと同時に名前の身体を掻き抱き、出来る限り甘い声で囁いた。


「名前、俺の子を産んでみないか?」

「え、ちょっと、まさかつけてないの?」


俺の言葉を聞いて跳ね起き、顔色を変え、生々しいことを言いながら結合部を確認しようとする、そんな彼女の様子を見て、熱くなっていた気持ちが急激に冷めた。

冷静になって考えてみると、勝手にその気になって名前と子供を作ろうだなんて、如何に馬鹿らしい考えだったかがよくわかる。

どうやら絶頂前の衝動で、俺の頭は少しばかりどうにかしていたらしい。
そしてその射精欲求も名前の吐いた言葉で萎えて、遠退いてしまった。


「いや、ちゃんとつけてる」

「じゃあ変な冗談はやめてよね」


名前は不貞腐れたような顔でそう言い、また脚を開いて横になる。

行為を再開しても、萎びた気持ちは蘇らない。

どうにかこうにか意識を集中させて勃起を保ち、腰を一心不乱に打ち付けるという情けない動きを繰り返して、俺は女と俺の間を隔てる無機質なゴムの中に、不必要で汚らしい精液を吐き捨てた。

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