Immorality / epilogue

バイトを終えて帰宅すると、自分の部屋の机の上に置かれている一枚の葉書に気が付いた。
帰ってた俺がすぐに分かるよう、兄貴がここに置いたようだった。

【 結婚しました 】

そう書かれた、風景写真の葉書。
緑と海と教会が写っている綺麗な風景は、多分アイツの故郷のアイルランドだろう。

「……俺に遠慮なんかしねえで、結婚式の写真でも送れっての」

それを手に取り眺めると、ぎゅっと締め付けられるような痛みが胸に走る。
いつだったか、クリスに聞かれて俺は『本能的にアイツが嫌いだ』と、言ったことを思い出した。
今ならよく分かる……あれは、間違っていなかった。
俺の本能は正しかった。
高校を卒業して二年が経った今も、こうして思い出す度に胸が痛むなんて自分でも呆れる。
それでも後悔はしていなかった。
子供だった独りよがりの恋愛を自分で断ち切ることで、俺はほんの少しだけ大人の男に近付けた気がする。
目の前の葉書を眺めながら、永遠の愛を誓い合った二人の姿を思い浮かべると、増した胸の痛みに思わず苦笑した。

『アイツにも、誰にも負けねえ大人の男になってやるからな』

胸の中で、そう呟きながら。

【END】





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -