Taboo (Lyle ver)

「姉さん……ハロ、もっと脚開いて」

頭では否定したくても、身体はまるで魔法にかかっているかのように、ライルの言葉に従ってしまう。
淫らな要求を告げるその表情を見上げているだけで、じわりと何か熱いものが下腹部に流れ込んでくるように感じた。
こんなにもあからさまな欲望を宿した碧の瞳なんて、きっと誰も見たことがない。
私しか知らない……私だけが、ライルの特別な存在。
これから、血の繋がった弟に組み敷かれ、啼かされる。
いつだってこの瞬間だけは良心の呵責を感じずにはいられなくて、胸に裂かれるような痛みが走った。
それでも身体は理性を放棄しているかのように、早く受け止めたいと強い昂りを訴えてくる。
弟に抱かれ、快楽を感じようとする、この浅ましい身体。

「ハロ、愛してる」

小さな頃から慣れ親しんだライルの声が、欲情しながら私の名前を囁く。  
セックスの時にだけ私の名前を呼ぶその声は、すぐに胸の痛みさえも甘い疼きに変えて、焼けるように身体を熱くさせた。


『姉さんを愛してる。俺は、姉さんしか愛せない』

告げられたその言葉を聞いた途端、言いようもないほどの悦びで全身が震えたのを覚えている。
ライルが誰かと付き合うたびにどうしようもない感情が胸の奥底から湧いてきて、苦しさから逃れるように愛してもいない男と身体を繋げ、何とかその気持ちを誤魔化していたから。
無意識のうちに私はいつだって、弟と似たような背格好の相手を選んでしまう。
そんなことを繰り返していたのは自分だけではなかったと、初めて気付いたのはライルだった。
私達は全く同じことを、長い間繰り返し続けていたらしい。

『姉さんが欲しくて欲しくて、姉さんを俺だけのものにしたくて、相手の男達を一人残らず殺しちまおうかと思った』

まるで迷いのない双眸に見つめられた時の、全身が粟立つほどの悦び。
その狂気染みた言葉にさえ、胸が締め付けられるほどの高鳴りを感じた。
もうすでに、私達は狂っていたのかも知れない。



腰を引き寄せてくる力強い腕に一瞬だけ抗えば、容赦なく深い所まで一気に貫かれる。
悲鳴にも似た嬌声が繰り返される律動に合わせるように、少しずつ艶めいていくのが自分でも嫌になるほどよく分かった。
揺すられるまま淫らな声を漏らす羞恥。
同時に、征服される悦びも込み上がる。
ライルの口からも荒く掠れた男らしい吐息が漏れて、呼吸の合間、耳元に名前を吹き込まれると、私は頭の中まで蕩けてしまいそうだった。
激しく攻められながら唇を塞がれ、舌の根元からきつく吸われてあまりの強さに涙が滲む。
今は与えられる痛みさえ、それがライルから与えられたものならば、全てが快楽に変わっていく。
両肩に添えた手のひらに思わず力を込めると、伝わってくる筋肉の硬さには男らしい力強さが満ちていた。
本当にこれが、以前は私を純粋に姉として慕っていた小さくて可愛かった頃の弟と、同じ肩なのだろうか。
絡めつけられる舌の動きに自らの舌を懸命に這わせながら、焦点が合わないほど近くにある綺麗な碧色を見つめる。
更に滲んだ涙で、碧の瞳が歪んで見えた。
身体も心も溶かされる瞬間を迎えるために私は瞼をきつく閉じて、何度も罪を重ねる。



「あ……ライル……」  

ハロが俺の愛撫に応えて身体の奥を濡らし、泣いているような甘い声で名前を呼ぶ。
淫らな行為のひとかけらも感じさせなかった弟思いの優しい姉さんが、今では俺に組み敷かれ貫かれ、艶やかに乱れていた。
こうして上から見下ろしたハロは普段からは全く想像も付かないほど淫猥で、何度回数を重ねても溺れてしまい、容赦なく求めてしまう。
ハロだけが俺を欲情させて、ハロだけが俺を夢中にさせた。
快感で蕩けているようなこの表情、この視線、この声。
自分の姉が男の前で、ぞくりとさせる表情を見せながら、潤んだ瞳で乱れた声を上げる。
組み伏せた腕の下でうねる裸体は、男を魅了するには十分だ。
この身体と一度でも繋がった奴等を一人残らず殺してやりたいと、俺は本気で思った。


  
気が付けばいつでも、どこかに姉の面影を感じさせる相手ばかり選んでいた。
気が付いてからは意図的に、一層相手の容姿にハロを求めて。
中身なんてどうでもよかった、身代わりにできるほど似通った顔と身体さえ揃っていれば、誰でも構わなかった。
それでも言い表せないほどの黒い感情に支配され、抱えていた気持ちを自分でも抑えきれなくなった頃、姉さんの新しい相手を目にした時に俺は気付いてしまった。
愛する女の腰を抱いて愛しげに見つめ合っているその男が、あまりにも自分に重なっていたから。
体格や顔のつくり、髪の色も長さも、着ている服の趣味さえ。
それは、以前から感じていた疑問が確信に変わった瞬間でもあった。
俺達は全く同じことを、長い間繰り返し続けていた。
気付いてしまえばもう、以前のように身代わりでは我慢できない。

『姉さんを愛してる。俺は、姉さんしか愛せない』

そう告げるとハロは身体を震わせて、引き寄せ抱き締めた腕の中で、黙ったままこの胸に顔を埋めた。



深く貫くたび背中を逸らせて下唇を噛んだハロを満足しながら眺め、優しい姉の顔と淫らな女の顔、そのギャップに堪らない興奮を覚える。
噛み締めた唇が傷付いてしまう前に口を塞げば、差し込んだ舌先に自分を絡めようとしてくる拙いほどの舌の感触に、しばらくの間酔いしれる。
他の男のものだったハロを自分のものにしたくて、抱き合う前は独占欲で気が狂いそうだった。
精神も、肉体も、全てが欲しくて。
溢れてくる感情に堪え切れず、唇を重ねたままうわ言のように名前を呼ぶと、肩の上にある小さな手のひらに力がこもる。
そして、近過ぎるほど間近で見つめ合っていた黒い瞳が、ぎゅっと瞼を閉じた。
その仕種が可愛くて愛しくて、俺はもっと奥深くまで入ろうと下半身に体重をかけて、思い切り突き上げ、かき回す。
ハロの身体を揺さぶるたび、言いようのない悦びにどうにかなりそうだ。
しっかりと身体を抑え付けて、自分の動きを受け止めさせる。

「ハロ」

苦しげな嬌声は、重ねたままの唇で、俺が受け止めて。

「死ぬまで、放さねえからな」

開いたままの唇に小さな声でそう吹き込むと、背中に縋り付いていた指先が応えるかのように、肌にくい込むほど強く爪を立てた。
そのまま加減なく腰を揺らし続けて、俺達は深い快楽に飲み込まれ、真っ白になっていく。


一生を穏やかに過ごす時間など、自分達には必要ない。
血の繋がっている姉弟を愛してしまった己、それを呪う感情も、捨ててしまおう。
激しいほどに互いを求め合う心と身体だけ……それ以外に、もう何も要らない。




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