Confidence (4)

俺の言葉に頷いたハロの顎を指で持ち上げて唇を重ねる。
何度もキスを繰り返しながら自分のベルトを外し、ハロの下着に手を掛ける。
少しでも早くひとつになりたくて、全てを脱がせる時間さえもどかしく思えた。
自分でもどうしようもないほどに気持ちが昂ぶり、抑えきれない思いに本能が突き動かされる。
彼女を抱き込む腕に力が入る。
男の生理だけではない。
ハロへの想いがそうさせるのだ。
柔らかな唇に思い切り吸い付いて、このままでは愛し過ぎて本当に食べてしまいそうだと思いながら、大きく音を立てて解放した。
目の前には焦がれるほど愛する女がいて、艶めかしい表情で俺を見上げている。
胸の辺りがざわめく。
鼓動が速くなる。
まるで条件反射のように。
いつもは大人しい顔をしてるが、行為の時のハロの顔はやけに色気があって、本人がまるで分かっていない分、たちが悪い。
俺にはハロ以外、もう何も見えなくなっていた。
膝裏に手のひらを入れて片足を押し上げ、ファスナーを下ろし勃ち上がった先端を彼女の入り口に押し当てる。

「加減出来そうにない」

何とか理性を働かせそう告げて、こくんと頷かれたと同時に腰をゆっくりと沈めた。
一気に押し込みたい衝動に駆られるが、そんなことをしたらすぐにでも達してしまいそうだった。
狭い場所をこじ開けるように腰を押し進めると、強い快感に襲われて思わず声を飲み込み息を止める。
久し振りのハロの身体はいつにも増して狭く、自分以外に何も受け入れていないことを身を持って実感し、胸が熱くなった。
辛そうに眉を寄せたその可愛い顔を見下ろして、こんなにもハロを愛しているのかと、改めて自分の想いを再認識した。
ゆっくり息を吐き出しながら全てを埋め込む。
隙間などなく。
奥に届くまで。
すぐに頭の中まで溶けそうな快楽が訪れた。
すると俺を見上げているハロの、まるで貫かれる瞬間を待ち望んでいたようなその淫らなな表情に、思わず身震いがした。
その顔に僅かに残っていた理性があっけなく壊されてしまったらしい。
俺は狭くなっていた彼女の身体を解すことなく、いきなり激しい律動を始めた。
それでも甘い声を上げて悦んだハロを容赦なく深い場所まで突き上げて、大きく身体を揺らしていく。
途切れる間もなくこぼれる喘ぎ声。

「ハロ……」

愛する女の名前を呼ぶ自分の声にさえ昂ぶって、動きを更に速めていく。
首筋に感じるハロの吐息。
耳朶をかすめる甘い声音。
上体を反らすように大きく喘いだハロの身体をこれ以上ないくらいに激しく突き上げながら、うわ言のように愛の言葉を繰り返した。

「好きだ……愛してる」

その唇に奪うようなキスをしながら限界の近さを感じ、震える身体を強く抱き締める。
快楽と辛さの感覚が曖昧になると、目も眩むほどの充足感が訪れた。



ハロが意識を手放そうとする度に何度も揺さぶって、二人して達する。
それでも抱き足らずに、こうしてハロの身体に覆い被さっている。
愛おしい。
言葉にならないほど。
上気した頬に乱れきった吐息、今にも泣き出しそうなほど潤んだ瞳。
シーツに押さえつけた両腕は、もう大分前から僅かな力も込められてはいない。
それでも俺は、拘束した腕を解こうとはしなかった。

「そんな顔、本当に誰にも見せてないよな?」

最初とは全く違う、緩やかな腰の動きでハロを見下ろし、問いただす。
そんなことは今日、最初にハロを抱いた時点で、分かりきっていた。
それに、俺と同じ想いでいてくれるハロが、自分以外の男に抱かれるような真似は絶対にしないことも分かっている。
それでもこんな風に攻め立ててしまうのは、俺のくだらない独占欲なのだろう。
誰よりも優しくしたいのに、余りにも愛し過ぎて、逆に壊してしまいたいと本気で思ってしまう事さえある。
エゴだと言われても構わない。
こんな俺のガキ臭い独占欲の問いにさえ、疲れたきった身体で何度も頷いてくれるハロが愛おしくてどうしようもなかった。
そんな仕草に、俺はどこまでも煽られてしまう。

「可愛過ぎだろ……まったく」

更に大きく腰を動かして、何度目か判らない高みを目指した。




目の前で規則正しく上下する胸の膨らみを眺める。
自分が付けた沢山の赤い痕がまるで所有印のようで、自分の独占欲の強さに思わず溜め息を付く。
穏やかな寝息こそ立ててはいるが、かなり無理をさせてしまった。
自分でさえ身体が怠い。
何度抱いても、すぐにまた欲しくなってしまう。
ハロの表情も声も、その仕草のひとつひとつが俺の欲を刺激してくる。
深い快楽につい翻弄されてしまった。

(全部がツボに入っちまうんだよな……まったく困ったもんだ)

辛かっただろうに、それでも俺を受け入てくれたハロが可愛くて。
これ以上、心も身体も満たされたことなど一度もなかった。
そして、こんなにも誰かを自分だけの物にしておきたいという想いを知ったのも初めてだった。
目の前の無防備な寝顔は歳よりも幼く見えて、乱れた髪に指を通しながら、子供にするように優しく何度も撫で続けた。
つい先程まで、自分でも呆れるほど激しく抱いていたくせにと、自嘲気味にうっすらと笑う。
ハロのこんな寝顔は、自分以外の誰にも見せたくはない。

「……俺だけのものだ」

小さく声に出して、その唇に静かにキスを落とす。

(そういえば上着、玄関に脱ぎ捨ててきちまったのか)

出張の土産に買った、銀色のリングを包んでいる小さな箱が、内ポケットに入っている。
たかが出張の土産にしては値の張る物を選び過ぎだと、困惑する彼女の顔が目に浮かんだ。
あれをハロの指に付けておけば、少しは安心できるのかもしれない。
それでも、俺達のことを秘密にしておく気はもうない。
今日はわざと遅めに、二人一緒に出社しよう……ハロに、あのリングをはめさせて。

(今度はもっと高いやつ買ってくるか? 一生付けさせておけるくらいの……)

「……ニール?」

薄らと瞼を開いたハロが、掠れた声で俺を呼んだ。

「あと二時間寝られるから。起きたらシャワー浴びて会社行けばいいだろ」

小さく微笑んで目を閉じると、余程疲れたのか、彼女はすぐにまた眠ってしまった。

「無理させちまったな……悪かった」

そう呟いて、俺はハロの頬にそっと唇を押し当てる。
どうしようもない愛しさに、今度は彼女の唇に自分のそれを重ねる。
起こさないように、優しいキスを。
目の前で眠る、 愛するハロに。

【END】
 



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