Lover (Lyle ver/2010/誕生日)

日付の変わる少し前から始めた落ち着きのない性急なセックスは、いつもより短い時間の中お互い駆け上がるように最後を迎え、それでも熱い身体と満たされた胸の中はとても幸せだった。
大きく弾んでいた二人の呼吸は次第に落ち着きを取り戻し、私の腰を抱き寄せていたライルの腕の力も少しずつ緩んでいく。
重なっている彼の肌がいつもより熱くて、その体温の高さがまるで急いだ行為の証拠のようで何だか微笑ましい。
まだ完全に整っていない呼吸のまま、肩の上に落とされた唇がしきりにキスを送ってくる。
ちゅ、と何度も音を立てながら肌の上を往復していくライルの唇がくすぐったくて、私は肩をすくめた。

「ライル」

名前を呼ぶと反応するように顔を上げて優しく微笑んだ彼の瞳に真っ直ぐ見下ろされ、緩く腰を抱いていたその腕にもう一度力が入る。
私は綺麗な彼の顔を半分隠している長い前髪に指を通し、そのまま耳の後ろへと持って行けば晒されたその表情を見た途端、胸に痛みを感じるほど愛しい想いが溢れ出てきた。
こんな表情で見つめられると、もっと彼と繋がっていたいと心が騒いでどしようもなくなってしまう。

「ライル、もう行かないと」

自分自身にも言い聞かせるように私は気持ちを切り替えようと、今まで隠れていた目の前の額へ小さなキスを送る。
本当はこんなことをしている時間、私達にはない。
出撃準備開始の時刻がすぐにせまっている。
見つめ合っていた瞳を一度閉じて溜息を付いたあと、彼が諦めた表情でまた私を見つめ直した。

「せめて生まれてきた日くらい、一日中ハロと過ごしたいもんだな」

おどけたように笑顔を見せながら近づいた唇が重ねられ、差し込まれた舌先がこの時間を名残惜しむように私の舌を優しく絡め取る。
ひとたびここを後にすれば毎回激しい戦闘を続けていかなければならないライルは、心配する私を安心させるため、必ず優しいキスを残していく。
そしてゆっくりと離れていった唇が、決心したようにいつも通り約束の言葉を告げた。

「行ってくる」
「うん」
「すぐにまた戻って、こうしてハロを抱き締める」
「うん」
「次の休暇、二人で地上に降りないか? アイルランドで墓参りして、家族にお前さんを紹介したい」
「……私、墓石の前でライルを作ってくれた御両親に心から感謝する」
「ははっ、なんだそりゃ?」

可笑しそうに声を出して明るく笑ったライルを見上げながら、私達を取り巻くように輝いている無数の星々のもっと先から彼を見守っている家族の姿を思い浮かべ、私は願った。

(どうか……、どうか彼が無事この腕の中に、戻って来ますように)

触れるだけのキスをもう一度だけ落としたライルがベッドから起き上がり、アンダーを身に付ける様子を眺めながら強く思う。
戻って来た時には一番に、この彼の身体を包み込むようにすぐ抱き締めよう。
この広い世界の中、愛しいと思える相手にめぐり逢い、そして抱き締め合える悦びに心から感謝の念を込めて。
私はベッドの上から広く逞しい背中に向かい、そっと告げる。

「Happy Birthday、Lyle」

生まれてきてくれて、ありがとう。

ニールverと話の内容は全て同じです。
【2010.03.03】

 
 
 



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -