Chocolat (Neil ver/2010/バレンタイン)

「ハロ」

名前を呼べば、甘い吐息を漏らす。
向かい合わせに座った体位で繋がっている下肢を揺らす度に、ハロの口からは湿った息遣いが聞こえ、その背をしならせた。
括れたウエストに腕を回しながら綺麗に浮き出ている鎖骨の窪みを舌先でなぞれば、跳ねるように浮かせた腰をすぐにまた引き寄せて、より深くまで沈めさせる。
なじませるようにゆっくりと動かすと、ハロは切なげな喘ぎ声を上げながら俺の首に腕を絡めた。


にこやかに営業用スマイルを浮かべながら、小さな可愛らしい包みを上司や同僚に手渡しているハロの姿を横目で眺める。
普段イベントに興味を示さないハロも、毎年女子社員の全員が騒ぎ立つ今日ばかりは、何もしない訳にはいかないらしい。

(……仕方なしに配ってる割には随分愛想振りまいてるじゃねえか)

たかが義理チョコを配るだけだ、あんな笑顔まで見せる必要はない。
いくら義理とはいえハロにあの微笑でチョコレートを手渡されれば、勘違いする馬鹿が出てきてもおかしくはない。(と、俺は思う)




また貰ってる……あんなに綺麗で豪華なラッピング、義理では有り得ない。
カードまで付いてるその中身は、もしかしたら手作りなのかもしれない。
女心を最大限にくすぐるあの笑顔を見せられた秘書課の子が、ニールを見つめながら途端に頬を染めていく様子は遠くからでもはっきりと判った。

(……甘いもの苦手なくせに幾つも貰ってくるんだから)

毎年紙袋に沢山のチョコレートを入れて持ち帰ってくるニールは、こっそり告白だってされているに違いない。
ニールに全くその気はなくてもあんな笑顔で受け取られたら、勘違いしてしまう女の子がいたっておかしくはない。(と、私は思う)


「お前、来年から義理でもチョコレート配るな」
「どうして……?」
「勘違いする奴がいたら困るだろ?」
「じゃあ……ニール、も」
「ああ、俺も受け取らねえから」
「……もしかして、心配だったり、する?」

彼は見つめ合った瞳を一瞬だけ不機嫌そうに細めると、急に近づいた唇が噛み付くような仕草で私の口を塞いだ。
温かい舌先が唇を割って入ってくると、口の中にほんのりと広がるビターチョコのほろ苦い甘さ。
彼の好みに合わせて作った甘さ控えめのフォンダンショコラは、唯一ニールが口にしたバレンタインのチョコレート。
強引だけれど幸福感に満たされるような甘いキスに、胸がぎゅっと締めつけられる。
きつく抱き締められながら腰を揺さぶられれば、重なった唇の端から漏れる二人の熱い吐息。
一際強く突き上げられ、より深くまで繋がる感覚に、呼吸さえ止まりそうになる。
二人の繋がった場所が曖昧になるほど、蕩けていきそうな快感。

「……このまま、溶けちまいそうだ」

ほんの少し離れたニールの唇から零れたその言葉。
こんな表情で見つめられて、こんなにも甘い声で囁かれて、私の全てが溶けていってしまいそう……まるでショコラのように。

ライルverと話の内容は全て同じです。
【2010.02.14】





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