Of the new year next……

『……重い』

身体に掛かる重さに耐えかねて、少しずつ意識がはっきりとしていく。
薄く目を開きほんの少し頭を起こせば、お腹の上には身体の両側から同じように回された二本の腕が、私の腰を抱くように乗っているのが見えた。
人間の腕は一本でも以外と重い。 
しかも身長185センチと186センチのいい歳をした男の二本の腕は、容赦なく私の腹筋に負担を掛けていた。
手を伸ばして最初の腕を持ち上げる。
左に寝ているライルの肩がぴくりと揺れたけれど起きる気配はなくて、そのまま私達の間にある僅かな隙間へ、そっとその腕を下ろす。

『一本クリア……』

今度はニールの腕を静かに持ち上げながら、さっきと同じように空いているスペースを探してそこへ下ろそうとした時、今まで力の入っていなかった腕の筋肉が急に硬さを増した。
突然動いたその腕に強い力で肩を抱き込まれてしまい、私の身体はニールの腕の中にすっぽりと収まってしまう。

『起きちゃった!?』

じっと動かずにニールの様子を伺えば、すうすうと規則的な呼吸音を額の辺りで感じて、ほっと胸を撫で下ろす。

『セーフ……!』

さてどうしよう?と顔を上げて、気持ち良さそうに眠っているニールの寝顔を目の前で眺めた。
まったく寝ている顔も格好良いんだから、などど考えて、もう何年も見ているはずの綺麗な寝顔に、ついつい魅入ってしまう。

『基礎化粧品も使ってないくせに……羨ましい』

男らしく引き締まった顔なのに綺麗さを感じるのは、色白で肌理の整った肌のせいなのかも知れない。
見分けをつけることが難しいほどそっくりな双子、しかもこれほどの容姿を持った一卵性双生児がこの世に存在するなんてと、彼等を見る度によくそう思ったものだ。
今はその二人にこうして挟まれて眠っていることが、自分でも不思議で仕方がない。
整った寝顔を眺めていると、ふと自分と違う匂いを感じ、胸の奥がとくんと揺れ動く。
同じバスケアを使っているのにどこか自分と違う匂いを感じるのは、二人が男で私が女だから……?
いつもは安心するのにこんな時は私を落ち着かなくさせる、そんな彼らの匂いを意識してしまうと、余計にとくんとくんと心音が速まった。
すると突然ライルが私の背中に抱き付いて、後ろから腰に腕を回してきた。

『今度こそ起きた……!?』

けれど耳の後ろからは静かな呼吸音が聞こえてくるだけで、私のお腹の辺りを抱えている腕も、それ以上動く気配はない。
はぁ……と深呼吸をすれば、後ろで眠っているライルからも、ふわりと私を落ち着かなくさせるあの匂いを感じて、鼓動が今以上に速さを増していく。
ニールとライル、二人の大きな身体に挟まれるようなこの体勢は、数時間前にした、いつもの行為を連想させる。
ライルに後ろから抱き締められながらニールを受け入れるセックスは、なぜか二人のお気に入りだった。
ライルに見られて恥かしがる私を抱くのが好きなニールと、そのニールに抱かれている私を後ろから眺めるのが好きなライル。
それでもそのあとには、二人が入れ代わって同じことを繰り返すのだから、こっちはかなりの体力を消耗する。
だから終わったあとの気だるさは相当なもので、それでもその時ばかりは二人がいつも以上に、私を甘やかすように可愛がってくれるから文句は言えない。
それに彼等の愛情を独り占めできる優越感は、この上ない幸せをもたらせてくれる。
囁かれる愛の言葉も二人分、そして、与えられる快感も……。
恥かしさにかられ、なんとか身体を仰向けに動かそうとするけれど、二人の腕の中にしっかりと閉じ込められてしまってはどうすることも出来ない。

「……ハロ、今お前さんが何考えてるのか、当ててやろうか?」

突然頭の上からからかうようなニールの声が聞こえてくると、くっと後ろからもライルの笑い声が聞こえてくる。

「そんなの決まってんだろ? なあ、ハロ」

『こ、この双子は……っ!』

一瞬でかっと頬が熱くなるのを感じ、二人の腕の外へ逃れようとして、その長い腕に捕まり引き戻される。

「ふ、二人とも大っ嫌い……!」

暴れるように手足をばたつかせても些細な抵抗だとばかりに、また元の通りニールとライルの大きな身体に挟まれてしまった。

「嘘を付きなさんな」
「大好きの間違いだろ?」

私の前髪にキスをするニールと、後ろから耳朶に噛みついてくるライル。
二人の顔は見えないけれど、きっと含み笑いをしているに違いないと腹立たしく思うのに、前からも後ろからも今までよりもっと二人の素肌が触れてきて、こんな風にからかわれても反応してしまう自分の身体を恨めしく思った。

「目も覚めちまったことだし……なあ、ハロ……」

耳朶を甘噛みしながら伺ってくるライルの動作と言葉に背筋が震えて、思わず漏らしてしまった吐息に気を良くしたのか、腰の辺りを撫でていた彼の掌が胸元へと移動してくる。

『また二回なんて無理っ!』

抗議しようと開きかけた唇が、ニールの強引なキスに遮られた。
半ば仕方なしにその唇を受け止めると、大きく顔を傾けながら深く差し込まれた舌が逃げようとする私の舌先に絡みついてくる。
ライルの大きな掌に膨らみを強く押し上げられて、自分でも嫌になるくらいの甘ったるい声を上げてしまった。
ゆっくりと離れていく濡れた唇に見惚れながら、鼻先に掛かる吐息に気付いて見上げた先には、色っぽく微笑んだニールの顔。

「諦めて抱かれろって」

どこか満足げなその笑顔に逆らえないことは、自分でも、そしてこの二人も十分分かっている。

『この笑顔、卑怯だ……!』

「愛してる……ハロ」

耳元に寄せられたライルの口から決定的な殺し文句が聞こえれば、もう拒む気力なんて起きてはこない。
悦びで全身に震えが走る。
何度囁かれても決して聞き飽きることなどない、彼等からの愛の告白。

「ハロ……愛してる」

続いて囁かれたニールの声に、身体中に走った震えが快感に変わり、甘い痺れが頭の中にまで伝わって、脳まで溶けてしまいそうだ。

「……私も、ニールとライル、二人をずっと愛してるから」

溢れてくる彼等への愛しさから、普段は抑えている自分の想いをつい口走ってしまい、瞬間赤面してしまった。

『い、言ってしまった……!』

恥ずかしがる私の様子を見た二人は、顔を見合わせて再び小さな笑いを零した。
そして何度も私の髪や顔中にキスをしながら、四つの大きな掌が私の身体のあちこちを撫で回していく。

「これが姫初めってヤツだろ?」
「そうだな、これが姫初めだ」

そう言って二人は無邪気に微笑みながら、また何度も繰り返し私にキスを落としてくる。

『一体どこでそんな日本語を覚えてくる訳!?』

胸の中でそう呟きながら、ニールとライル、二人から与えられる快感を堪えようと無意識に掴んでいた二人の腕に、私は仕返しとばかりにわざと爪を立てた。
 



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