イタズラ

※カタカナ表示の題名の話は一応続きモノとなっておりますので、下から順にお読みになることをオススメします。


ロックオン・ストラトス(24)
その名の通り、成層圏の向こうまで狙い撃つ男である。
彼はこれからある部屋に武力介入を開始しようとしていた――。



「「「「「健康診断?」」」」」(←ロックオン・ティエリア・アレルヤ・刹那・ハロ)

「そう、マイスター全員のね」

ミス・スメラギがマイスター達を集めて言った。

「パイロットは肉体的にも精神的にも思った以上に負担が掛かるものなの。だからこれからのことも考えて、この際徹底的にチェックした方がいいって言うのよ、ドクター・モレノが」
「面倒くさいがしょうがねえか」
「謹んで辞退します」
「僕も研究所に居た頃を思い出しそうで……」
「俺も必要ない」
「私もやだ! スリーサイズ計ったりするんでしょ?」
「(ムカ!)ダメよ、これは決定事項なの。みんなきちんと受けること。最初はハロからよ。女性の方が検査項目が多いらしいのよ」
「え〜、だったらスメラギさんも肝臓診てもらった方がいいんじゃないですか?」
「(ムカッ!)私はいいのよ。とにかくしっかり診てもらいなさい、いいわね。それと脳のバイタルチェックをすると検査後二〜三時間は深い睡眠状態になるらしいわ。まあ、身体を休めると思って受けて頂戴」
「……はーい」
「……(ハロが二〜三時間睡眠状態? こりゃあ……)」
「ドウシタ ロックオン、ドウシタ ロックオン」
「何でもねえよ、ハロ(にやり)」

悪いな相棒、このミッションは単独でやらせてもらう……ロックオン・ストラトス、目標(ハロ)を狙い撃つぜ!



「抜き足、差し足、忍び足……ってな」

気配を消したまま部屋に入り後ろ手で鍵を掛ける。
部屋の明かりは少し落としてあるらしく、いつもよりは薄暗い。
さほど広くもない部屋の端に簡素な作りのベッドが置いてあり、ゆっくりとそれに近付いていく。
そこにはこの部屋の主であり俺の最愛の人が横たわっており、すやすやと小さな寝息を立てながら、気持ち良さそうに眠っていた。
ゆっくりと音を立てずに忍び寄り、静かに眠るハロの顔を上から見下ろす。
軽い睡眠剤でも飲んでいるのだろうか、ミス・スメラギの言っていた言葉を今一度思い出してみる。

『検査後二〜三時間は深い睡眠状態になるらしいわ、なるらしいわ、らしいわ、しいわ……(エコー)』
しかし、その言葉を鵜呑みにしてはいけない。
此処はひとつ、確認してみなければ……。
俺はベッドの横に跪き、小さな耳朶に唇を寄せて「ハロ」と囁きながら軽く息を吹きかけた。

「……」

反応が無いのはぐっすりと眠っている証拠だ。
ハロは異常なまでのくすぐったがり屋さんなので、もしも起きているとすればすぐにでも飛び起きるだろう。

「……随分と無防備なこった」

その可愛い寝顔を眺めたあと、細い身体を包んでいる薄いピンク色の検査着に視線を移しながら俺は口端を上げる。
前を合わせて横を紐で結ぶだけの余りにも簡単な作りだ。
俺はそっと手を伸ばしてハロの膝上辺りまであるピンク色の布に触れ、ゆっくりと合わせ目を開いていく。
白い太腿が露になり、更に開いていくと女性特有の小さな下着が見えた。
こんなの持ってたか? 俺、見たことねえし(怒)
シミひとつない白い肌にくびれた細いウエスト、はっきりと浮き出た腰骨が女らしさを主張している。
俺はそれらを眺めながら、ある物を取り出して呟いた。

「さあ覚悟しろよ? 俺の大事な眠り姫」




それは今から三ヶ月前にさかのぼる。
朝、目が覚めて隣で寝ているはずのハロがいないことを不振に思いながら起き上がると、腹の上に何か黒いものが見えた。

「……な、なんだこりゃぁぁあ!」

顔が描いてある。
俺の腹に、顔が描いてあるのだ。
目と、鼻と、口と、あとなんだこれ? ほっぺか? ぐるぐるが二つ描かれている。
しかも、とんでもなく下手くそな顔だ。
咄嗟に手で擦ってみるが消えるどころかまったく薄くもならず、それはまるで元々俺の腹にプリントされているかのようだった。

「消えねえじゃねえかっ!(滝汗)」

不意に、頭の中にハロの顔が浮かぶ。
俺はその辺に脱ぎ捨ててあるTシャツを被りスウェットを履いて、ハロの部屋に猛ダッシュした。 

「……ハロ(ぜえぜえ)」 
「あ、ロックオン、起きたぁ〜?」
「おまっ、これ、どーゆーことだっ!?」
「ああそれね〜! お腹に顔を書いて動かす『腹踊り』ってゆーのがあるんですよ。日本の伝統技に」
「……おう」
「昨夜えっちした後、ロックオンお腹出して寝てたよね?」
「……(ね?って言われても)」
「急に故郷を思い出しちゃって、書いてみたんだけど」
「……(んで?)」
「腹踊りって太ったお腹じゃないとダメってことに気が付いちゃって。ロックオンは腹筋割れててかカッコいいから似合わなかった」
「……(おいおい、カッコいいって(悦)」
「ごめんなさい(ちら)」
「(っ! ま〜た可愛い顔しやがって)……しょうがねえな、ったく。で、どうやったら消せんだ?」
「無理」
「へ?」
「だって、これで描いたんだもん」

ハロは【百年経っても消えない! クアトロ印 百式マーカー】と書いてある金色に輝く一本のペン(注:インクは黒)を取り出す。

「ま、まじかよ?」
「うん、ホントに百年消えないらしいよ。イアンさんが言ってたもん、さすがクアトロ印って」
「……」
「でも安心して? さっきイアンさんに百式マーカーのリムーバー作って、って頼んできたから」


「……おやっさん(ぜえぜえ)」
「おう、どうしたロックオン、そんなに息切れして。お前さんももう歳か?」
「百式マーカーのリムーバー、いつ出来る?」
「ああ、あれか。まあ一ヶ月てところだな」
「う、嘘だろ?」
「バカヤロ。百年消えないものを一ヶ月で消せんのはこのイアン・ヴァスティくらいだぞ。なんせクアトロ印だ」

クアトロ印とは、そんなにすごいものなのか……?
一ヶ月……もし、もしもこの一ヶ月の間にデュナメスごと何処かに、ユニオンやAEUや人革連に鹵獲でもされたらどうする?
勿論、身体の隅々まで調べられるに決まっている。
その時に、俺のこの腹を見られたら……。

「……すぐにでも拷問される方がマシだ(ガクガクブルブル)」
「ん? 何か言ったか?」
「お、おやっさんっ! 一生のお願いだっ!! 一日でも早くっ、一秒でも早く作ってくれ! 頼む!(もはや土下座)」
「……(またハロに何かされたな)」




あれから俺は一ヶ月間デュナメスに乗る度に、このまま鹵獲されるんじゃないかとビクビクしながらミッションをこなした(三`痩せた)。
そして今、俺の手には金色に輝く百式マーカーが握られている。
そう、これは復讐だ。
ハロは目に入れても痛くない程可愛いが、たまには仕置きも必要だろう。
それに、俺はこう見えても結構執念深いのだ。
静かにキャップを取り、目の前にあるハロの白い腹にそっとペン先を近付ける。

(……待てよ? リムーバーはこの前俺が全部使っちまったんだよな? てことはリムーバーを作るのにまた一ヶ月は掛かるのか)

視線をハロの寝顔に移すと、すやすやと無邪気な顔で眠っている。

(俺の気も知らずに、なんて可愛い寝顔してんだ、ちくしょう……! このまま腹に顔を書いたら消すまでの一ヶ月間は、確実にえっち抜きだろうな)

ちらりとハロの下着部分に目をやり、ごくりと喉を鳴らした。
まだ目を覚ますまでは時間があるはず。
俺は金色のペンにキャップをはめて、ハロの小さな下着に指をかけた――。

   
〈…二時間後…〉

「っは、ハロ、くっ……!」

これで何回ハロの中で果てただろうか。
隙間の無い筈の結合部分から俺の精液が溢れ出していて、結構すごいことになっている。

「…はあ」

さすがに疲れたが一ヶ月分だ、ハロに体重を掛けないようにして身体を密着させる。
目の前の恋人は相変わらず瞼を閉じていて、眠っているのをいいことに、普段させてくれないようなとんでもないことまで色々としてしまった。
急に罪悪感が湧いてきて、寝顔を眺めていた俺は、胸にちくりと痛みを覚える。

「ハロ悪い……でもな、お前さんが可愛い過ぎるのがいけないんだぞ?」

尤もらしい言い訳を呟いて、目の前の小さな唇に何度も触れるだけのキスを落とす。
次第に触れるだけのキスじゃ物足りなくなり、ハロの桜色の唇の間に自分の舌を差し込みながら角度をつけて吸い上げていく。

(マズイな、また……)

密着している下半身に再び血液が集まっていくの感じながら、ふっくらしている唇を貪るように味わった。

「……ん」
「?(今、ん、て言った?)」

不意にミス・スメラギの言葉が俺の頭をよぎる。
『検査後二〜三時間は深い睡眠状態(ry』
慌ててベッドの横に置いてある時計に目をやると、なんと二時間半もハロに悪戯をしていたらしい!

(うっわ、やべえっっ!)

俺は急いで身体を起こしハロを見下ろすと、幸いまだ意識は戻ってないようだ。
目を覚ます前に全ての痕跡を消さなくては……! 
俺の中でトランザムシステムが発動された――。


「……ロックオン」
「目、覚めたか?」
「うん」
「具合、悪いとこないか?(どきどき)」
「ありがとう、大丈夫だよ」
「そうか……そりゃあ良かった(ほっ)」
「もしかして、ずっと傍に居てくれたの?」
「ま、まあな!(どっきどき)」
「ありがとう、ロックオン……大好き」
「(きゅんっ)俺は……ハロのこと、あいしt「あっ! ドクター・モレノに連絡しなきゃ!」
「へ?」
「目が覚めたらすぐに呼べって言われたの」
「……そうか(涙)」

ハロはベッドから身体を起こした途端、どろりと自分の中から何かが溢れていく感覚に襲われた。
これは、云わずと知れたあの後の……ロックオンと夜を過ごしたあと、必ず訪れる感覚と同じもの。

「……あのさ、ロックオン」
「ん、何だ?」
「まさかと思うけど、私が寝てる間に何にもしてないよね?」
「!!(びっくぅぅぅ)」
「まさか、意識のない私に悪戯して中出しするようなこと、二十四歳のガンダムマイスターがする訳ないよね?」
「い、いやな、ハロがあんまり可愛いからつい、な?(焦)」
「また……『つい、な?』じゃないでしょー!」

怒りで思わず立ち上がると。
コツッ、コロロロロ……。
ハロの足が何かを蹴飛ばし、部屋の隅まで転がって壁にぶつかり止った。
二人は反射的に音がした方に目を向けると、そこには金色に輝く【百年経っても消えない! クアトロ印 百式マーカー】が転がっていた――。

次の日、健康診断で他のマイスター達に大爆笑された可哀相な男――ロックオン・ストラトス(24)
その後一ヶ月間、ロックオンは鹵獲されないようビクビクしながらデュナメスに乗り、ミッションをこなしたらしい(また三`痩せた)




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