Atmospheric reentry

ヴェーダから送られてきた一通の暗号電文。
続いて届いた使い捨ての端末機器にペンダント型の超小型カメラ、それから二種類のエアチケット。
週半ばの予定は自動的に決定した。  
尾行任務は初めてじゃない。
予め定められた行動計画に従うだけで、スパイ映画のヒロインみたいな立ち回りを要求されたこともない。
だから今回も計画に沿って、横浜沖の海上空港から直行便でソロモン諸島近くの人工島へ向かった。
到着次第、決められたゲートをくぐり、決められたベンチに座って、食べる昼食だけは自由裁量。
出掛けに時間がなかったので、現地で軽食を調達した。
ターゲットはユニオンの軍人で、名前をハワード・メイスンと言う。
連れ合いの女性がおり、旅行の目的は観光。
観光客を尾行するのかと、出立前、ミス・スメラギに再度確認した。

「そうね。ヴェーダによる浮気調査ってとこかしら?」
「……うちはいつからテロリストやめて街の興信所になったの」
「あらいいじゃない、タダで小旅行」
「何を呑気に」

 
ヴェーダの考えていることは解らない。
通信ついでにミス・スメラギの傍にいたのでティエリアにも尋ねてみたが

「ヴェーダの意図をきみ如きが知る必要はない。理解しようとする、その試み自体が無駄且つ無意味だということを理解するといい」

と返された。
あの人はいつも一言以上多い。
ごときと言ったな、ごときと。
任務は拍子抜けするくらいあっさりと完了した。
おおまかな報告内容は次の通り。
某メイスン氏は若い女性(美女)と連れ立って人革連軌道エレベーター「天柱」のリニアトレイン966便に搭乗。
トレインは定刻通り発射し定刻通りに低軌道ステーション「真柱」に到着した。
そこで両名は熱い抱擁とキスを交わして別れたのち、当地で待ち合わせていたと思われる別の若い女性(美女)と合流。
愛らしい赤毛に縁取られた顔の正面、そして左右を捕捉。
撮影が完了した時点でミッション終了である。
嗚呼、神(ヴェーダ)よ。
これで戦争の根絶という大望が実現するなら私は何度でも浮気の現場を押さえてみせますが。
理解に苦しむ任務から解放されたのも束の間、擬似無重力を楽しんでいたところに、例の使い捨て端末が新たな暗号電文を受信した。
次のミッションだ。それは今回取得した全データを、現在地上某所で待機中である別のエージェントに届けること。
指定時刻を見て私は困惑した。
あと三時間しかない。
ここからじゃ到底間に合わない。
神よ、誕生日のプレゼントに大気圏再突入能力でもくれるつもりか。
多少の無理をおして、というレベルではない。
焦る気にもなれず、ミッション遂行が不可であることを返信しようとした時、後ろから肩を叩かれた。

「そいつは送らなくていいぜ、ハロ」

数ヶ月振りに会った仲間が立っていた。

「…………ロックオン、どうしたのこんなところで」
「トレミーからの増援ってやつだ。元気にしてたか?」
 
ミッションの最中、ハロは俺のことを決してニールとは呼ばない。
地上待機組にも俺達と同じ制約があるだろうし、もしかすると自分で何かを課しているのかも知れない。
詳しいことは俺には分からない。

「送らなくていいって、どういうこと?」
「ミッションの遂行は可能だってことさ。よし、行こうぜ」
「行くってどこに」
「いいから」

先月も、先々月も逢えなかった。
折角だからと衝動には素直に従うことにした。
さっさと肩に手を回して身体を軽く引き寄せた。
見下ろすと僅かに困惑を残しつつ、少し照れくさそうに身を預けてくる。
髪の香り。
肩を包むブラウスの下の体温を感じた。
幾つかの通路を経由してコンテナの搬送区画へ順調に進入。
事前に二人分用意されている認証カードの一枚をハロに渡した。

「天井のカメラは気にしなくていい。このカードで全てスルーされる仕組みになってる」
「偽造?」
「本物」

人影はない。
照明は扉を境にトーンが落され、無人の業務用通路には俺達の足音だけが響いている。
エレベーターで二層下がると重力場を抜けた。
浮き上がった連れの腕をとらえ、抱き寄せてやった。

「すまねえ、言い忘れてた」
「大丈夫」

これからどうするのと、薄暗い照明の下で俺を見上げる顔に、先程とかわって不安の色はあまりない。

「怖いか?」
「怖くないよ。ロックオンと一緒だもの」

何の照れもなくそういうことを言ったくせに、言ったあとで赤面している。
そういうところが初対面の頃と変わらない。
俺はありがとうなと、平凡な礼を言った。
彼女の無心の信頼が嬉しかった。
迷いなく見上げる眼差しも愛しかった。
それから出来るだけ何気ない口調で告げた。

「これからデュナメスに乗って降下する。俺とお前さんでな」
「なん……」

流石に絶句する彼女に、自分が持ってきたバッグを渡した。
ハロはまだ目を白黒させている。
まあ、無理もない。
前線要員やメカニック以外のメンバーがガンダムに乗るケースは稀だ。
機密保持、それもあるだろう。
そういう規則に関しては仲間うちでも煩い制限がある。

「ノーマルスーツが入ってる。そっちに使われてない小部屋がある筈だから着替えてきてくれるか?」
「……わかった」
「ああ、着方分かんなくなったら呼べよ。部屋の外にいるから」
「呼ぶわけないでしょ」

赤い顔して彼女は小部屋に入った。
人は来ない。
俺もその場でさっさと着替えを済ませて、彼女が出てくるのを待った。
慣れないモノに手間取っているらしく、一度からかい半分に声をかけたが、大丈夫だからときっぱり断られた。
五分後、ヘルメットとバッグを抱えてようやく現れた彼女はどうにか対Gスーツを纏い、表情には流石に緊張が見て取れた。
緩く噛み締められた唇の辺りに、不意に加虐心が煽られた。
何気なく手招きをして、ただでさえ薄暗い通路脇の物陰に引っ張り込んで、半ば強引に唇を重ねた。
急な行動に対する曖昧な拒絶、それに反して口中へおずおずと伸ばされる小さな舌先。
塞いだ唇の合間から溢れた吐息。
我を忘れかけた。
何ヶ月も逢えない時の方が、俺はまだ“まとも”でいられたんじゃないか。
遠く遠く離れた大気圏の底にいる、俺だけの小さな体温を欲して、募るだけの想いを持て余しても、今は未だ逢えないと解っているから嘘でも自分を納得させることが出来る。
寧ろ問題なのは、こうして逢った時の方だ。
自分についたその場凌ぎの嘘、おざなりな納得、理性も、大体気がつくともう吹っ飛んでいる。

「ハロ……」
 
グローブ越しの指先が柔らかな髪と、髪のかかる耳朶をまさぐった。
くすぐったそうに捩れた柔らかな身体を腕の中に閉じ込めて掻き抱きながら、唇を一旦離した。
忘れてた、とやり残していたことを思い出してピルケースを取り出すと、錠剤の一つを無造作に取り、自分の口に含ませてもう一度ハロの唇を塞いだ。
口中に触れた小さな異物を感じてハロが身動ぎをする。
舌先を絡ませながら、飲めと囁いた。
大丈夫だ。
言う通りに、従順に上下し始めた喉へ指先を這わせる。
柔らかな唇を貪る様に重ねながら、指先が嚥下を見届けた。
錠剤を呑み込んだ彼女は浅い呼吸を繰り返しながら、うっすらと声を上擦らせた。

「なに、いまの」
「ナノマシン」
「ああ……」
「一応な。身体に負担がかかるといけねえから」
「それ……別に、口移しする必要、なかったんじゃ」
「嫌か? そうは見えなかったぜ?」

呂律が回っていないのが可笑しかった。
だからもう解っちゃいるんだが、愛しくてどうにかなりそうだ。
文句を言いつつ大人しくしている彼女にもう一度軽いキスをして、あっという間に火照った額にも口付けた。


× × ×


ハッチが開く。
暗いコンテナの中、振り返って小声で指示をした。

「こっちだ。足元に気をつけろ」

ハロはそれに従ってゆっくりと足を踏み出したが、この暗さで着地点を計りかねている。
無理もない。
だから手っ取り早く、低重力をいいことに彼女の腕を引くだけで全身を引き寄せて腕の中にすっぽりと抱きかかえた。
「う」だの「あ」だの聞こえたが気にせず、上縁にぶつからない様にハロの頭を抱え込み、そのままシートへゆっくりと落ちた。

「上出来」

ハロは手足を縮めて俺にしがみついている。
長い黒髪がさらさらと広がり、さっきからようやく正常に戻った筈の拍動をまた上昇させようとしている。
スーツ越しに感じる柔らかな体躯のちょっとした動き、すぐ傍に感じる呼吸、少し不安そうな横顔、何もかもが、心の奥にまだ残る、こいつにしか許さない柔らかな場所に触れている。
逢いたかった。
ずっと、逢いたかった。

「ええと、どうしよう」
「どうしようって、俺の膝の上に決まってんじゃねえか」
「ええ!?」
「なんだよ、嫌か?」
「いや、それは……」
「ほらもう動くなって」

両足揃えて、そう、右側に投げ出して。
大丈夫だから。
狭いかと聞くと首を横に振り、諦めた様に苦笑して全身をことりと預けてきた。

「そうだ。お利口さん」
「また子ども扱いする……ハロ、久し振り」
『ハロ、ヒサシブリ、ハロ、ヒサシブリ』

コックピットの右前方にあるアタッチメントに下部を埋め込んだ球形AIは、平坦な丸い耳を嬉しそうにぱたつかせて応じた。

「今日は宜しく」
『ハロ、オジャマムシ、ハロ、オジャマムシ』 
「ロックオン、ハロに変な言葉教えちゃ駄目だよ」 
「俺かよ! こらハロ、あんまりハロをからかうな」
『ハロ、ナニモミナイ、ナニモミナイ、フキンシン、キニシナーイ』
「ったく……さて、お前さんさえ良ければそろそろ出すが、いいか?」
「ああ、うん、どうぞ。……本当に大丈夫?」

低軌道には無数の偵察衛星がある。
デュナメスがこのまま地球へ降下すれば、当然それらに機影を捕捉されてしまうだろう。
あの珍妙な尾行とそれに纏わるミッションは、それだけのリスクを冒して遂行する様なものだろうかと、ハロは最後まで心配していた。
しかし浮気調査の任務そのものは別として、この点についてはミス・スメラギの了承も取れている。
やはり不安そうなハロの髪を掌でそっと撫でた。
それから出来るだけ優しくヘルメットを被せてやった。
次に発する声はヘルメット内のインカムを通してハロの耳に届けられるだろう。

「心配すんな」

言い聞かせた。

「ハロを乗せてんだ。危険な目には遭わせねえ。約束する」

ランチアラリーだってデートの時は安全運転してるだろ?

『…………』
「声出して。メットのインカムチェックさせてくれ」
『……ラリーとガンダムを一緒にするのはどうかと思います』
「お前な」

ヘルメット同士がこつんとぶつかり合った。


× × ×


デュナメス、ロックオン・ストラトス、これよりコンテナを区画より離脱させる。
ハッチ開放。
射出まで二十秒、カウント開始。
コンテナ、離脱完了。
低軌道監視区域より脱出後、パージに移行する。
カウント開始。
三、二、一、……コンテナ、パージ成功。
レーダー良好、進行ルート上に機影なし。
ハロはセンサーに注視。
デュナメス、これより降下開始ポイントに向けて航行を再開する。

「よーし、まずまずだな……ハロ、平気か? ハロ?」

恋人は腕の中でぴくりとも動かない。
酔ったのかと心配してバイザーを覗き込んだ。

「ヘルメット取るぜ」

通常航行中だ。
短い時間であれば支障はない。
長い髪がゆったりと広がり、ハロはそれを自分の掌で静かに撫でつけながら、スクリーンを見つめていた。
スクリーンは時々映り込むオービタルリングがなければモニターのスイッチが入っていないのかと誤解するほど暗い。
どこまでも暗く、だだっ広い。
これが宇宙だ。

「大丈夫か?」
「大丈夫。ちょっと、……ぼうっとしてた」

次の瞬間、スクリーンに光が広がった。
ハロが息を呑んだ。
そこには昨日まで彼女が暮らしていた星が、信じられないほど青い光を纏いながら、真っ暗な宇宙空間に、奇跡の様にぽっかりと浮かんでいる。
 
「……すごいね」
「ん」

地球のなだらかな丸み。
惑星の大半を彩る海の青の、美しさ、鮮烈さ。
宇宙の闇に確固として放たれる反射光。
映像では決して実感することのない、その存在感がハロを圧倒している。

「ニールはいつも、こんな景色を見てるんだ」
「いつかお前さんにも、見せてやろうと思ってた。誕生日のプレゼントだ」
「……覚えてたの?」
「忘れるわけねえだろ」

俺の首筋に沿って落ちかかる髪のひと房を、愛しい指先が戯れに軽く引っ張る。
優しい瞳が俺を見上げている。
唇が触れ合う間際、愛してると囁いた。
大気圏突入シークエンスに移行する、その時が近付いていた。
俺達は再びヘルメットを被った。

「ちょっと揺れるからな。俺の腕に掴まってろ」

小さく頷いた。

「よし。……降下ポイントへ到着。ハロ、GN粒子最大散布、機体前方に展開しろ」
『……リョウカイ! リョウカイ!』
「デュナメス、大気圏突入を開始する」

その言葉を起点に、やや前傾姿勢を保っていた機体が加速を開始する。
次の瞬間、スクリーン一面に閃光が走った。
真っ赤な、真っ白な、どちらともつかない色の閃光だ。
あかあかとした輝きがまるで光の矢の様にバイザーに護られている筈の眼を射る。
そのあまりの激しさに目が眩む。
機体が揺れ始めた。
と、視界の少し下の方でハロが両手をかたく組み合わせて力を入れるのが見えた。
掴まっていいと言ったのに、遠慮して、操縦桿を握る俺の腕には触れようとしない。

「ハロ」

操縦に支障はない。
そう判断して、左手を操縦桿のグリップから離し、彼女をしっかりと抱き寄せた。

『駄目、離したら。大丈夫だから』
「ハロ」
『ロックオン』

インカムのおかげだ。
耳元で聞こえる声は、まるで本当にそこで囁いている様な錯覚を起こさせる。

「怖いか?」

ハロはゆっくりと、首を横に振った。
怖くないよ。
バイザー越しに俺を見上げた黒い瞳。
一緒にいるから。
抱き寄せた身体の側面から伝わる鼓動。
徐々に上昇する眩いばかりの大気。
いつも、気がつけば手を伸ばしていた。
それに随分長いこと、俺自身が気付かなかった。
暇を見つけてはトレミーの小さな展望室、強化ガラスの向こうに浮かぶ惑星を欲していたことに。
あの蒼ざめた大気の底から、空のあなたに向かって腕を伸ばしてると言ってくれた、愛しい人を想って。
俺の腕の中にいる。
ハロを今、腕に抱いてる。
待ち焦がれた、この瞬間。

「心配ない。一緒だ」
『うん』

落ちていく。

『うん……』

ハロと一緒に、大気の中を。
機体が大きく揺れた瞬間、ハロの押し殺した様な喘ぎ声がヘルメットのインカムを通して俺の耳朶を伝う。

「ハロ、辛いか」

名前を呼んだ。
首を微かに横へ振っているのは分かったが、声はない。
腕の中の少し忙しげな息遣いを知って、自然と左腕に力が込もる。
緊張感。
肌の上に滲む汗の感触。
吐息。
微かな声。
温もり。
抱き合いながら。
なんだかセックスに似てる。
欲情するなという方が無理だった。
やがて流星は墜ちる。
ふと思った。
俺達は同じ熱に包まれて、熔けて、消えてなくなるのだ。
長いような短いような降下の間、退廃的な思考が頭をかすめていく。
ハロ、このまま熱い大気の甘美な抱擁を受け、お前と一緒に飛び続けて、本物の流星の様に白く燃え尽きたとしても、お前と一緒なら悔いなどないのに。


× × ×


GN粒子最大散布から通常モードへ移行。
機体各部に異状なし。
巡航速度で目的地へ向かう。
気を失いかけているハロの頭からゆっくりとヘルメットを外し、額に張り付いた髪を梳きながら汗を拭ってやった。
訓練を受けた人間じゃない。
身体そのものに影響はないが、言わば軽いショック状態の様なものだ。

「……ニール」

降下完了から暫くして、彼女はようやく口をきいた。
気が抜けたのか、この日初めて俺をニールと呼んだことにも気付いていない。
普段よりずっと幼く見える彼女の薄く開いた唇にキスをした。

「どっか、痛むトコあるか」
「……平気。なんか、ちょっと」

気持ち良かった。
あどけない顔で笑う。
お前は俺の自制心に思い遣りを持ってくれ。

「牽制?」
「ああ。さっき降下ポイントだった場所、あの辺の国が最近、このご時世に地下核実験を復活させようって情報があってな。牽制に、簡易偵察も兼ねてってところか」
「ガンダムがあの国の上を飛ぶことで、核実験への牽制になる?」
「馬鹿げた考えを改めるきっかけになれば良しってな。見えてきたぞ」

目的地、南極大陸、南極半島に到達。
氷河上のポイントに着陸し機体外壁部迷彩皮膜を展開。
ハロに後を託して俺とハロはノーマルスーツのままコックピットを出て、氷河に降り立った。
見計らったかの様にそれから丁度十分後、白く静まり返った地平線の向こうから一台のスノーモビールが近付いてきて、俺達の手前まで来るとエンジンをかけたまま停止した。
乗員はたったひとり、身体をすっぽりと覆う防寒具にサングラスの所為で男か女か分からない。
こいつがハロのデータを待っている地上エージェントだった。
ハロは打ち合わせ通り、宇宙から持ち帰ったデータをエージェントに手渡した。
相手は終始無言を貫き、礼代わりに俺達に向かって軽く手を上げると、さっさとスノーモービルに乗って来た道とは別の方向へ走り去って行った。
小さな影が地平線の向こうに消え、俺達はヘルメットを取った。

「うわ、こんなに寒かったんだ」

ハロが笑い出した。
この半島は南極大陸を覆う氷雪気候帯の唯一の例外で、ツンドラ気候に属している。
しかし現在は冬季、八月の気温はそれでも身震いする程低かった。
ノーマルスーツを着用していると、それをうっかり忘れそうになる。
ハロは未だ笑っていた。
そんなにおかしいかと聞いたら、こんな誕生日になるとは思わなかったからと、まるで子供の様に無邪気な顔で言う。

「またやりたいか?」 
「駄目、地上エージェントは地上にいるのが仕事なんだから」

でも癖になりそうだね。
そう言って、また笑う。

「不謹慎かな」
「いいさ。どうせお尋ね者だ」

秘密を共有し、世界の変革を願う者。

 
頭上遥か、澄み渡った南極の蒼天。
あそこから落ちてきた。
全方位、遮るものもなく、どこまでも真っ白に続く雪原。
大気圏の底に。

「来い、ハロ」

楽しげな恋人の手を取って、今日何度目かわからないキスをした。








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