Change my world (5)

逃げ場の無いハロはニールの身体を押し退けようと、咄嗟に両腕を伸ばした。
素早く手首を掴んだニールはそのまま顔を近づけてすぐに唇を塞ぐ。
一瞬鋭い痛みが走り、反射的に顔を離して下唇を舐めると、口の中に血の味が広がる。
下からきつく睨みつけている黒い瞳に、腰の辺りにぞくりと小さな痺れが走った。

「……そういう顔も出来んじゃねえかよ」

掴んだままの手首を思い切り引っ張ると、倒れ込んできた身体を力尽くで反転させ、すぐに両手を後ろで束ねて動きを制限する。
それを左手で腰の上に押さえ込み、首の後ろを右手で掴む。
抵抗する暇を与えず、背後から覆い被さるように、ニールはハロの上半身を無理矢理キッチン台の上に抑え付けた。
真下にある強張った身体から乱れた呼吸音が聞こえ、手のひらからは首の細さが伝わってくる。
力を込めれば、すぐにでも折れちまいそうだ、そう考えただけで下腹が熱くなっていくのを感じる。
ニールは無意識のうちに血の滲んだ唇をもう一度舌先で拭った。
束ねたハロの両手首を強く押さえ込みながら右手を首から放し、ワンピースの裾をたくし上げ、柔らかな内腿をまさぐる。
途端に激しく身体を動かした様子に、そんなことをしても無駄だと解らせるため、もがく後姿を黙ったまま見下ろした。
乱れた髪から漂う甘い匂い。
黒い生地に薄っすらと浮かんだ背中の窪み。
不意に、嗜虐心を掻き立てられた。
今のニールは自分でも理解しがたい感情に支配されていた。
逃がさないようハロの腰に自分の体重を掛けながら、右中指の先を噛んで革の手袋を引き抜く。
その手でベルトを弛めれば、聞こえてきた金属音に拘束を解こうと、ハロが更に激しく全身を揺らす。
たくし上げたままの裾から覗いている白い太腿に再びニールの手のひらが触れた瞬間、肌がひくんと震えた。
薄い布越しから下腹部に掌を這わせ、指先を直に奥へと差し込む。

「……やっ……」
「ここに、何度も突っ込まれたんだろ? あいつに」
「やめ……っ」
「最後は、俺のものにしてやる」

薄い毛をかき分けて触れた突起を指の腹でなぞった。
跳ね上がった身体を封じるように、後ろから首筋に顔を埋め、きつく吸い上げる。
肌に付いた赤い痕を見下ろせば、言い知れない感覚がニールの身体の奥底から込み上げてきた。
狭い布の中で指先を動かしながらハロの横顔を覗き込んでやれば、ぎゅっと眉を寄せて唇を噛んだその表情が、堪らなく艶かしい。
太腿の間に膝を割り込ませ、指先に触れている小さな膨らみをもっと擽って転がして、震えたうなじを何度も啄ばんだ。
邪魔な布を乱暴に引き下ろすと、息を呑んで全身を強張らせた様子が伝わってくる。
あからさまな欲望を表している自分自身をハロの入り口へとあてがい、耳元に唇を寄せて低い声を吹き込む。

「力抜けよ」

嫌だというように大きく首を振ったハロには構わず、猛った先から滲み出ている先走りを擦りつけて、そこへ押し入る。

「あ……っ」

僅かに漏らした声を聞きながら、ハロをいっぱいに広げ、ニールは腰を奥まで沈めた。
仰け反らせた喉が声にならない吐息を零す。
繋がった半身から、じわじわと熱いものがせり上がってくる。
一度深く息を吐き出して、ゆっくりと腰を揺らし始めた。
きつく結んだ口元から漏れるハロの微かな声に気持ちが昂り、首筋に舌を這わせ、スリーブレスから見える薄い肩口に歯を立てる。
幾らか滑りが良くなりもっと奥を突き上げると、いやいやと小さく首を振り、弱々しい抵抗をしてみせた。
乱れた息を弾ませて、碧色の瞳が上から彼女を見下ろしている。
身体を揺さぶりながら、無理にハロを組み伏せた乱暴なセックスを自分がしているのだと自覚するニールは、今までに感じたことも無いほどに征服欲を刺激された。
自分が自分ではなくなっていく。
倒錯的な喜びであった。
ふと、この身体を同じように何度も犯す、あの男の姿を思い浮かべる。
胸の奥底をざらりと撫でていたあの感覚が、じりじりと焼けるような熱さに変わっていくような気がした。






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