White Christmas Eve 3 (Neil ver)
荒々しいほどのキスを交わしながらお互いの身体を強く抱き締め合って、私達はベッドにもつれこむ。
上になったニールが私の頭を両手で包み、髪の中に指を埋めて緩く掻き混ぜた。
ニールの舌が私の舌に絡まる。
あまりの心地良さに蕩けそうになり、重なっている唇の端から甘い吐息が漏れる。
不意に唇が離れて、すぐ目の前にある瞳が熱い眼差しで私を見下ろした。
「今は優しくしてやれる余裕、ねえから」
これから始まる行為の激しさを予感させるような低音に、鼓膜が震え、肌が粟立つ。
首筋に噛み付かれるようなキスをされて息を呑んだ。
熱い唇が、すぐに何度も肌をきつく吸い上げてくる。
ニールにこんなキスをされたのは初めてだった。
服をたくし上げた掌が素肌の上をなぞり、背中に移動した片腕がブラジャーのホックを外して、唇が胸の膨らみにまで下りてくる。
口に含んだ胸の先を舌で転がされて強く吸われるたび、電流のような刺激が身体の中を走っていく。
掌と口が交互に快楽を与えてくる。
自然と鼻にかかった声が漏れてしまう。
今、私はニールに愛されている。
あんなにも焦がれた人に抱かれ、愛されることを実感している。
掠れた低い声が乱れた吐息の合間に私の名を呼んだ。
首筋を撫でるように揺れる長く柔らかな髪から懐かしいニールの匂いがして、切なさが込み上がった。
上半身を起こしたニールが着ているシャツを脱ぎ捨てて、欲情した碧の瞳が私を見つめた。
綺麗に筋肉の付いたシャープなライン。
覆いかぶさってきたその身体の重みに、ベッドがぎしりと軋む。
胸元に下ろされた唇がまた淫らな音を立てながら、愛撫を始める。
この愛しい温もりさえあれば、私はほかに何もいらなかった。
気が付けば、ニールの腕の中に抱き込まれていた。
激しい快楽に意識が遠くなった事までしか覚えていない。
「……ハロ」
嬉しそうに私を眺める視線が恥ずかしくて広い胸に顔を埋めると、ゆったりと頭を撫でながら、指先が髪を梳いた。
ニールが私の髪にキスを落とすと、すぐにまた心臓がとくとくと速さを増した。
大きな掌に顎を掬われて唇が重なる。
軽く吸って啄ばんで、何度もそれを繰り返す甘いキスが、少しずつさっきの続きのような深いキスに変わっていく。
気だるさの残る身体を強張らせれば、押し入ってきた舌が逃げようとする私の舌を追いかけてくる。
捕らえられた舌を吸われ、あちこちを舌先で擽られ、その感覚にまた腰の辺りがぞくぞくと震え始めた。
ようやく唇を解放されると、潤んだ視界に映るニールがうっすらと微笑んだ。
「本当はこんなもんじゃ足りねえけど」
言いながら、澄んだ碧が愛おしそうに私を見つめている。
「これ以上無理させたら、ハロを宇宙に連れて行けなくなっちまうからな」
「……そら？」
弾む息のまま恥ずかしさも忘れて聞き返した私に、一瞬だけ悲しそうに笑った顔を見せて、ニールがゆっくりと話し始めた。
自分が生まれ育った祖国のことや家族のこと、少年時代にその家族をテロで失い、運命が大きく変わってしまったこと。
そして、ニールが先日報道番組の途中で声明を流した私設武装組織の一員で、あの紫色の髪をした人も同じ組織の仲間なのだということ。
その理念は戦争の根絶で、そのために世界と戦っていこうとしていることも。
今までニールが歩んできた道は、私が想像も出来ないくらいに険しいものだったのだと、彼の言葉ひとつひとつに思い知らされる。
だからこそ、今まで以上に彼の傍にいたいと、二度と離れたくはないと、私は心から強く願った。
ニールの首に腕をまわして胸に顔を埋めると、優しい力で抱き締められた。
その温もりが心地良くて、私も彼の広い背中をそっと抱き寄せる。
最高の幸福感を味わうように、私達は隙間も無いほどお互いの身体を重ね合った。
私はニールのことを忘れられなくてあの場所に立っていたけれど、実は、彼も同じ理由であのツリーの前に訪れていたことは、ただの偶然なのだろうか。
もしかしたら、本当に気まぐれなサンタクロースからのクリスマスプレゼントだったのかも知れない。
「奇跡なんてもんを信じるほど俺は楽観主義者じゃねえが、今日はクリスマス・イヴだからな。こうやってまたハロを抱けたんだ、一生に一度くらいは信じてやってもいいか」
優しく髪を梳いているニールの瞳には、私だけが映っていた。
眩しいほどの綺麗な瞳を見つめながら、初めて出会った瞬間からニールに惹かれていたことを思い出した。
「こんな日だから白状しちまうか……」
「なに？」
「初めてハロを見た瞬間から、俺はどうしようもなくお前さんに惹かれちまってた」
見惚れるほどの笑顔を見せられて、私は目を瞠る。
ニールが自分と同じ感情を、今、この時に告白してくれたなんて。
静かに重ねられた唇が愛してると囁いて、私の唇を甘く吸い上げた。
愛し、愛され、結ばれた心と身体。
私達はいつまでもお互いを抱き締め続ける。
これから先、こんな日が続いていく保障なんてどこにもないことは、ニールが全てを話してくれたことで十分理解はしている。
それでも、来年も再来年も、ずっとずっと二人が抱き合えると信じていれば、また奇跡は起こるのかもしれない。
今日のクリスマス・イヴが、そうだったように。
【 END 】
【 2009.12.24 】
【 2011.05.29 加筆修正 】