Thank you!



誠凛


「おーい火神ー。まだ着替えてんのかー? …火神?」

部活の終わった体育館に鍵を閉めようと思ったら人数が足りない。まだ一人中に残っているようだ。
そしてその部員を呼びに行かせた木吉がまだ戻ってこない。
「なにやってんだあんのアホ野郎!」
あまりにも遅いからと、バスケ部の全員で火神を探しに行った木吉を探しに行く。なんて本末転倒なことをしているのだろう、俺たちは。そう思ったのは誰だったか。

「おい木吉! 火神一人つれてくんのにどんだけ時間かけて──」
「しーっ!」
勢いよくドアを開けて怒鳴りこんできた日向+部員にむかって、木吉は唇に人差し指をを当てた。所謂「静かに」のジェスチャーである。
「今火神眠ってんだ。よっぽど疲れてたんだな」
そう言って木吉が指差した先には、ベンチに腕を置きそこに頭を右向きに乗せて眠る火神の姿があった。

「ほんとだ、ぐっすり寝てやがる。最近練習に力入ってたからな…って何してんだ黒子!?」
「どれだけ熟睡してるのかと思いまして」
いつの間に移動していたのか、黒子が火神の頬をつんつんとつついたり引っ張ったりしていた。
「起きませんね」
「起きないな」
これじゃあ鍵閉めらんないんだけど…と日向がぼやく。

「それにしても、眠ってる火神君はずいぶんと可愛らしいですね」
なんとなしに黒子がそうつぶやく。それを聞いた小金井が、火神の正面へと移動する。
「どれどれ〜…ホントだ! 普段はあんなに怖いのに、今はすげー子供みたい!」
小金井の言うとおり、寝ている彼は普段よりもずっと柔らかく年相応の顔をしているように見えた。眉間の皺も今はない。
はしゃぐ小金井の声を聞き、他の部員たちも火神の寝顔をのぞきこむ。
「ちょっ、誰だよコイツ!」
「寝顔マジ別人!」
ピロリーン♪
「今の音何?」
「誰か写真撮っただろ!」
「はい、ボクです」
「後で俺にも送って!」

先程までの静けさはどこへやら。一気に部室が騒がしくなる。
そのうるささに火神が目を覚ますまであと少し。


眠る横顔



優しい恋人と5題より/title by Lump


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