世話のかかる人

自販機の前で座る将生さんを見つけた。この人が休憩しているところは久しぶりに見た。缶コーヒーを目元に当てて小さく唸る様子に思い当たることがひとつ。

「将生さん」
「ん? ああ慶か。どうした?」
「顔色が悪い」
「気のせいだろ、ここの照明暗いし」

へらりと笑って誤魔化そうとするときは大体疲れている時だ。出会ったばかりならともかく、兄弟弟子としての付き合いが何年あると思ってるんだ。

「今日この後は? ていうか今何連勤な訳?」
「心配ないって」

ほらみろ、質問に答えちゃくれない。
通信で作戦室にいるはずの国近に将生さんのスケジュールの確認を頼む。こうして将生さんの予定の確認を頼むのは珍しくないから、国近は二つ返事で確認しておくと返した。
仕事着のままその場から動こうとしない将生さんの首からネクタイを引っこ抜き、とりあえず部屋に連れていこうとする。

「慶、ネクタイ返して。俺また戻るんだから」
「駄目」
「けーい、頼むって」
「あれ、太刀川さんと柏木さん?」

チャリチャリと小銭を鳴らしながら歩いてきた出水が何をしてるのかと聞いてくる。

「出水、丁度いいところに来たな。将生さん部屋まで連行するぞ」
「は?」
「慶、」
「将生さん働き詰めで体調崩してる」
「あーいつものっすか。東さん呼びます?」

成る程と納得した出水は小銭をしまい、将生さんの隣に置いてあったタブレットや書類を手に、部屋に行きますよと背中を押す。

「ゆうさん? 柏木さん体調崩してるって」
「そーゆーことか。じゃ本部長に連絡しておくね〜」
「お願いします。俺と太刀川さんは部屋まで運んでくるんで」
「出水も、俺まだシフトあるから」
「駄目っす」

書類を返せと出水に手を伸ばす将生さんの手を引き、さて人目につきにくいルートはどれだったかと考える。連絡を終えたのか国近が道を指示し、将生さんは今日と明日は完全にオフになったという。

「もう慶の手伝いも稽古もしないからな……覚えとけよ……」
「そんだけ言う体力あるなら今のうちに休んでよ」
「だからまだ大丈夫だって」
「駄目。忍田さんからも今日明日は休みだってさ」


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