指導者たちの打ち合わせ

 ラウンジのテーブルを一つ占領し、東は訓練中のC級狙撃手の今後の訓練メニューについて考える。すでに師を見つけ個別に指導を受けている者もいれば、まだ誰に教わればいいのか、まごついているC級もいる。
 しかし早くB級に上がりたいと言っている者にランク戦形式に触れる機会も作ってやらないと、と考えていたところに向かいの席に誰かが座った。

「春秋、近々ビル密集地域での狙撃手訓練あるなら、オペレーターも混ぜてもらっていいか?」
「将生」
「そろそろ次に進めたい子達が居てさ。基本の手順はもう済む頃合いだろ」

 柏木は端末と紙資料、コンビニ袋を手にしていた。広げていた紙を集め、わずかだがスペースを空ければありがとうとその場に紙と袋を置く。失礼かと思いつつ、どうせ後から共有する情報だと思いなおし、置かれた紙に視線をやる。案の定、オペレーターの教習進度と適性や性格、所感が乱雑に書かれていた。

「へえ、もうそこまで進んだか。でもまた狙撃手からでいいのか?」
「真っ先に地形把握するのは狙撃手だろ?」
「まあ、そうだな」
「オペレーターは戦況把握が第一。ならまず場所の使い方を覚えさせないとな」

 ほら、と袋から差し出された缶コーヒーをありがたく受け取る。場所の見方・使い方を覚えるなら確かに狙撃手と組むのがいいのだろう。しかし臨機応変な戦術対応となると攻撃手の方が手間取るはずだ。

「新人への戦術講習は? 攻撃手との連携がないと狙撃だけじゃ厳しいぞ」
「いや、攻撃手はどの武器で行くのか決まるまで少し間が空くから決めてない」

 確かに近距離の攻撃手、中距離の銃手、射手と主戦力となる攻撃手はスタイルの確立まで時間を必要とするが、先の入隊式からはひと月半。そろそろ大方決まってくる頃合いだろう。進捗を聞くなら攻撃手の育成担当をしている嵐山達に聞くのが早い。

「嵐山たち呼ぼう。あいつら確か今日は本部に詰めてるはずだ」
「なら俺達が隊室に向かった方が早そうだな。春秋、時間あるか?」
「勿論」
「じゃあ先に一言入れとくかな。ああそうだ、行く前に購買に寄らせてくれ」

 端末を片手に操作しつつ、あいつら何が好きだったっけ、というこいつはどうやら後輩への差し入れを買っていくようだ。きっと片手に収まらないであろうそれらをどうやって手伝って運ぶか、俺は考えることにした。

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