今ならきっと、思う存分胸を張って、あの小憎たらしい顔に向かい「たわけ者」とはっきり言える。
職員会議があるからと、早めになった放課後の鐘と一緒に、図書館へ行かないかという彼女の誘いに乗ったのは五分前。
ついでに一応、曲なりにも彼氏彼女の関係であるあいつに、先に帰るからと声をかけてくると彼女が言ったのが一分前。
教室に居ないのに気付いて、何処へ行ったのかを頭の中でぐるぐる考えながら、もう知らないと彼女が振り向いたのが、

「…落ち着け」
「はやく、いきま、しょ」
「…」
「図書、か、閉まっ、」
「そんな顔で行けるか?」

薄く桃色に色付いたカーディガンの裾はびしょびしょで、仕方なく、自分の灰色の地味なハンカチを貸してやった。
鼻水が付かないように綺麗に目元だけを拭いながら、セットでついてきたの?とわずかに笑みながら言った彼女に、あいつに言うより先に小さく「たわけ者」って言ってやるまであと一秒。

夕陽も遠い、帰り道。
今日は強く大きく風を切って、彼女の涙が乾くくらいにしっかり漕がなければ。



自転車2ケツの登下校
(明日の朝も乗せてやるよ)



セット=ぱんちゅと
きっと途中で交代する
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