「きっと戦争になるわね」
「嬉しい事言ってくれるじゃないか」
「事実を言ったまでよ」

目の前で肘をつき、興味深々で彼女の一挙一動を見つめているものの、当の本人は問題集にあるアメリカの教育関心度とか、そんな良く分からないものに夢中らしい。
ボブとキャシーがうだうだとそれについて話して居るだけの、何が楽しいのやら。

そんな事を考えていたからだろうか。
とっくに彼女に奪われた、かたちで言えばハート形の臓器がある場所に一番近いボタンにふと視線を留めて、彼女はふうと溜め息をついた。

「人気者は辛いわね」
「僕の友達よりマシさ」
「…ああ、何か全部とられそうね」
「むしろ剥かれるんじゃないかって心配してる」
「守ってやんなさいよ」
「やだよそんな恐ろしい」
「……自分の心配したら?」
「え」
「言っとくけど私は要らないわよ」
「えー!そんな!じゃあ誰がもらってくれるって言うのさ!」
「私に聞かないでよ」

かきーん、なんて間抜けな音が、夕暮れに染まるグラウンドから響いて来る。秋の終わりはゆっくりと近付いて来ているのかと、窓からさらりと流れて来る冷たい季節風で肌で感じた。

とん、と音がして振り向くと、いつの間にかボブとキャシーは綺麗に折り畳まれて、彼女の好きなキャラクターがごちゃごちゃ印刷されたクリアファイルに入れられていた。どうやら終わったらしい。

「…こうしない?」
「え──ッうわ、」

グイと引かれた力にびっくりして、だけどいつもより近い綺麗な赤毛に、時めく。
さらり泣いたのは、季節風。何故なら彼女のそれは、もっと強く艶めくはず。
間抜けな音で、ちょきん。いつの間に手に忍ばせたのか、携帯用の小さなはさみを得意気に揺らして。
…はさみ?じゃあ、今切られたのは…

「それまで、預かってあげる」

何のメリットも無いけどね、なんて笑った彼女の顔は、夕焼け空みたいに赤い。ああもう太陽の馬鹿、せっかくの機会なのに。

「…くそー…可愛い、なぁ」

走り去った彼女からは、頼むから見えないようにして欲しい。どうしようも無い愛しさが溢れて、窒素してしまいそうだった。


気になるあの人の第2ボタン
(可愛いあの子のスカーフを!)






シリやリマが居ないところでしか素直にリリに好きって言えないジェム


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