シリウス・ブラックがふられたらしい。
そりゃいい事だとかかとを鳴らしてスキップしていたのを、その弟に目撃された。あいつにしては珍しく青筋を立てながら、先輩って全力で生きてますよねと言って来た。何故か腹が立った。
しかしあのシリウス・ブラックが、と思うとそれどころではない。流石に実兄の惨状など知りたくないだろうと敢えて奴には知らせなかった。まあ、噂は風よりも早く出回るものだから、特に自分が言うべき必要事項でもないだろうし。

シリウス・ブラックがふられたらしい。
あのいけ好かない恥さらしがと思うと、食事で握るフォークやスプーンすらも勝手にステップを踏んで踊り出すのを、その従姉に目撃された。お願いだからそんなイメージを崩す様なことしないで!彼女の悲鳴の如き懇願はそういうものである。
しかし今あいつがどんな思いでパイをつついて居るのかと思うと、とんでもなく気持ちが浮き立つのである。何処のオンナか知れないが、いい判断だ。実にいい判断だった。

シリウス・ブラックがふられたらしい。
ついに耐えきれなくなって、自分と同じくらい暗いと評判の女子にそう言ってやった。古めかしい本の黄なびた黴臭いページを捲りながら、何の配慮か一旦こちらをちらりと見て、次に事も無げにこう言った。



「じゃあこれは知っている?
そのシリウス・ブラック、それから全力でアピールしてるらしいわよ」



そう言えば、シリウス・ブラックをふったのは、一体誰なのだろう?



浮かれちゃいねえ






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