篝火(小王と夢)




振られたと無様に泣き叫んで、自分で命を絶つ事すら出来ずに、仕様もない奴等の言いなりになった様な、どうしようも無く惨めな人だったのに。

どうしてだろう、好きになったのだ。

未だに傷を癒せない彼女をドロドロに甘やかして、いつか彼女が自分だけを見てくれる日を願って、恋を、している。

「勝ちますよ、僕は」

彼を越えたい。全ての意味で。
あの英雄ぶった顔を丸つぶれにしてしまったら、彼女はこちらを見て、笑ってくれるのだろうか。

「勝てるわけ、ないじゃない」

だって相手は、そう言いかけて気付いた後は、嫌いなモノを食べた兄とそっくりな顔をして黙り込んでしまった。
嗚呼、折角可愛いピンク色だった頬が、灰色の記憶の所為で色褪せていく。

右腕も左腕も右足も左足も、

「千切れるかと思いましたけど」
「良いんじゃないの?少なくとも浮気とか悪戯とかしないだろうし」

そんな心にも無い事をぼそりと呟く癖に、自分の服の裾を離さない手は、何だろう。笑って引き寄せたら手を抓られた。
こういうところが駄目なんだ!頬を膨らませぷいとそっぽを向いてしまった彼女に、赤く発熱する手を冷やして苦笑い。

どんだけ向こう見ずだと小突かれた。壁に叩きつけられてしまった際、左眉の上をかなり深く切ってしまったのを、忘れて居るのか居ないのか。

「…真正面から突っ込んで行くとか」
「たまには良いじゃないですか」

ホント、馬鹿げて居る。
けれどもどうしてだろう。
好きに、なったのだ。



篝火=警備や証明などのために、鉄製のかごの中で焚く火。
(沈黙がただ愛しく)



すごく、微妙です…!
試しに始まりと終わりをひっくり返してみたんだけど、駄文はひっくり返しても駄文だということを思い知らされた。





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