孵化(水仙と夢)




「ねぇ、カッコウがどのように雛を育てるか御存知?」
「えぇ、知って居ますが」

目の前の金色に眩いお姫様は、良くある雑学を自分の口で御披露したかったのだろう、戯れに読んでいた学書の一章をすらすら諳んじた自分に、頬をぷくりと膨らませ、つまらなそうな顔をした。
すかさず、良く知ってますねと聞き返すのも忘れない。彼女のご機嫌は秋空よりも変わりやすかった。

「では、その卵が2つあったらどうなるか知っている?」

私は元来、この方と根本的な考え方が違っている気がする。分かりませんと聞くと、何だか酷く可笑しそうな顔をしてころころと笑うのだ。彼女のご機嫌は秋空よりも変わりやすかった。

「孵ってしまった二羽の雛は、自分が生き残る為に互いに殺し合うのだそうよ」

かっこう、かっこう、潤んだ桜色の唇でそうさえずって、彼女はどこか遠くを見つめてクスリと笑いを漏らしてから、凄惨な位に妖艶な笑みを浮かべる。

「…それで?」
「は?」

cockoo,cockoo.静かに儚く独善的に、金色の賢いカッコウは深い胸の内を訥々と独鳴していた。翼を折る覚悟で、何処かで血まみれのカッコウは鳴いている。
「私の愛しいお姉様方は、一体どちらが地面に堕とされたのかしら?」

彼女のご機嫌は秋空よりも変わりやすかった。私は血の気が引くのを感じた。



孵化=卵がかえる事、卵をかえす事。
(ずるさはお互いさま)



カッコウの卵のエピソードって意外と子供心にトラウマなんですけれども。
ちなみに雛には、卵を落としやすいように背中に窪みがあるそうです、よ…





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