瓊樹(獅子と蛇と鏡)
「そぅら、美しいだろう?」
ゴドリックの馬鹿がまた何か怪しい行商人から大きな古ぼけた鏡を買って来た。いくらで買ったんだと聞いて極上の笑顔と共に示された指の数には気が遠くなる。果たしてコイツは自分の有り余る資産の端くれからそれを出してくれたのか。
とか考えたがそこはしっかりと領収書まで貰って来ていたのだから有り難い。いっそ死ねばいいのに灰になるまで。
汚い鏡だ。自分の姿さえ朧気に見えるほどしかその本来の機能を発揮していないような。その馬鹿でかさだけが取り柄か、買い主とそっくりだと笑った。
自分の望みが見えるんだと彼が言ったなら、お前には何が見えると聞くのだ。
「そぅだなぁ…恐らく一生このままで一緒に居る僕らが見えるよ」
そんな可能性叩き割ってやる。
少なくとも、そんな清潔で誰にも障れないような望みなんて私は持ちたくない。
「綺麗だろう?」
ウットリと鏡を見つめる刃は冷たい。
瓊樹=宝石のように美しい木。
(永遠の享受過程)
誰にも理解されないヒーロー。
誰でも信頼してくるラスボス。
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