残滓(竜と嘆霊)




「アンタは出来るわよ、」

能力の劣等を隠蔽する為に穏和を装い、辛うじて陰険な味を隠して理性を保つハッフルパフは見ていて吐き気がした。
能力の過信を臆する事無くさらけ出して己の微々たる自信を奮起させるグリフィンドールには悪寒がした。
けれども能力の劣等も過信も見せず、寮の方針に乗っ取り勉学に精出して、果敢でも無く穏和でもない関係を保つレイブンクローには、大した敵意は無かった。
だからなのだと噛み締める唇をそのままに、自分に言い聞かせた。

「何も怖がる事なんかないわ、」

そもそも全く自分の好みじゃない。
半透明に濁った眼鏡は洒落気なんて欠片も無く、その裏には厚ぼったい一重瞼。
顔には赤い斑点みたいな面皰が至る所にあるし、顔も可愛い部類じゃない。
流行遅れの着こなし方をした制服は水に濡れてぐしょぐしょと音を立てる。唯一褒められるのは二つに結われた、思いの外綺麗な艶をした黒髪くらいだろう。

「私を信じて、」

声は高くてヒステリックにしょっちゅう叫んで、その癖酷くロマンチストだ。鼻の奥がムズムズするのはきっとそんな彼女の砂糖塗れみたいな言葉のせい。それに何だか安堵を覚えるからと、何度人目を忍んでこの扉を開けた事か。

人に短所を見せるのは嫌いだ。
人に弱点を教えるのは嫌いだ。
常に人よりも優位に立てば、そんな愚鈍で自意識過剰な自分の向上心を少しは収める事が出来るような気がしたから。



「頑張りなさいよ、
やれば出来るんだから」



便器の蓋を閉じてその上にうずくまる僕の頭を撫でる手は、どこまでも優しい。



残滓=残りかす。
(奇妙な恋慕)



六巻のドラコは死ぬ程可愛い。



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