めいん | ナノ
冗談だろ?



蒸し暑いジョウト地方、ワカバタウンの7月。
鬱陶しい梅雨が開けたとたんに、まるで雨によって邪魔された、いままでの活躍を取り戻すかのように、太陽の光がサンサンと地面に向って照り注ぐ。
草むらの広がる土地の木陰で、涼みながら佇む少年が1人。



「オイオイオイ!太陽さんよ!いままで活躍できなかったつらさ!それはわかるぜ、わかっけどよー!もちっと、もちっと手加減ってもんをだな、してくれってもんだぜ!あーーっちぃいいいいい!!!!!」

「なに…1人でさわいでるんですか」

「ン?オシャレ小僧じゃねーか!ひっさびさだなあ、アイスおごってくれよ」
「…出会い頭に、年下にせびらないでください、むしろおごってやるの一言は出てこないんですか?ゴールドさん」
「金ねーし!あったら1人でくってっし!」

ガハハハハッと盛大に笑うゴールドは、不意に現れた、顔見知りの年下に話しかける。

「それよりルビー、なんでお前、ここにいんだよ?」
「祖父母に呼ばれたんですよ。」
「へー?」
「先日…誕生日だったもので。遠慮したんですけど、どうしてもお祝いをしたいと言われたんで、里帰りです。まあジョウト地方の新しい美容商品なんかもみたかったですし、観光がてら小旅行中です。」
「フーン、で?オレに会いにきたと?」

はーっと盛大に、わざとらしく溜息をつきながら、ルビーは一瞥の目を向ける。

「おめでたいのはその髪だけで充分ですよ?ただでさえ暑いこんな日に、よくそんな暑苦しい髪型ができるものだと、ボクは心底不思議でたまらないのですけど」
「ンだと!?てゆーかオメーの帽子のが暑苦しいってもんだぜ?アン?」
「これがオシャレだと理解できないなんて…なんて可哀想な人なんですかあなたは」
「オーオー言うじゃねーか、オシャレ小僧?オレが、なんだって?勝負すっか?」
「ほら、そうやってすぐ頭に血がのぼる。どんだけ沸いてんですかその頭は」
「ンだと?」
「なんですか?」
「…」
「…」



はあ…と2人は同時に溜息をつく。


「なーんでこんなアッチー中、言い合いしてんだオレらは。よけー暑くなっちまう」
「それには同感です。アー、やっぱジョウトは暑いですね。」
「まったくだぜ、オレはシンオウ方面にでも小旅行でもすっかなー…あっ」



ゴールドは、ふと思いたったように立ち上がり、無言でその場から離れて行く。そんなゴールドを横目に、ルビーはチリチリとした、肌への不快な痛みを浴び、そよぐ風に心地よさを感じる。

「あー暑っ…」


土の擦れる音が響いて、ゴールドの戻ってきた気配を感じる。
背後にまできたとき、頬に急激な冷たさを感じる。

「冷っ…!??」
「ぶっはは!!驚きすぎだろーオメェー!!」
「いきなりなんですか?!」

ふと頬の横をみれば、露で湿った棒アイスの袋。

「…」
「ほらよ!たんじょーび、オメデトさん」
「…」
「んだよ、優しい先輩からのプレゼントダゼー?よろこべよ!!」

疑わしくゴールドの表情を除きこむと、あまりの満面の笑みに、ルビーは何も言えなくなってしまう。

「まあ、もらえるものはもらっておきますけど」
「素直じゃねーのな!ほらほら、溶けちまう!早いとこ食え食え!」

ゴールドは袋から取り出したアイスを、ルビーの口元に持っていく。少し遠慮がちに受け取り、ルビーは口に含む。
「これ、ウメェーだろ?この地域限定、モーモーミクル使用の、チョー濃厚アイスなんだぜ!たしか、たんぱく質がなんやらで美容にもいいとか書いてあったけどよー、まあオレにはよくわかんねーけど!ま、お前こーいうのすきだろ?ホラ、あの赤い屋根の店なんだけどよ、ポケモン用のも売ってるらしいからみてくといいんじゃねー?」

「はあ…」
「んで、ツレが誕生日ったらこれくれたからやるよ」
「?」
「モーモーミルク使用のパック、だとよ。そういうのもすきじゃね?」
「…ありがとうございます」
「いいってこった!」

カラカラっと笑うゴールドの隣で、ルビーは予想外の出来事に、少々戸惑いながら、アイスを頬張る。

「あ、お礼はちゅーとかでもいいんだせ?」





ッグ…思わず棒を勢いよく噛んでしまい、苦い顔をしながら振り向く。一息付いて言葉を吐き出す。



「…なに、ばかを言ってるのやら」
「…アー?そうか、残念だなァ」






「ところでルビーちゃんよォ」

「…なんですか?」
「オレ、今日誕生日なんだわ」
「…」
「もちろんお祝い、くれるんだろ?」





「ボクは、好きな人と以外と、そういうことはするつもりはないんですけど」
「ンー?オレだって誰ふり構わずするつもりなんざネーよ」
「…」
「けどよー?わざわざ小旅行中に、オレの地元にくるなんざ…なあ?」

「ゴールドさんって、自意識過剰ですね。たまたまですよ」



「…なあ、ためしてみるってのも、大事じゃねー?」
「…」



ふと目の前が暗くなる。先ほど冷やした口内が、暑く熱く暑く熱く熱く温度を上げる。

「ッ…」



「ンー?甘ぇな…」




暑さで頭は朦朧とし、処理が全く追いつかない。体温の上昇も止まらない。太陽のせいなのか、それとも目の前にいる人のせいなのか。暑さに眩暈を感じながら、ルビーは顔を歪める。

「あなたが…悪い」




ただ一目見て、それから話しかけて、ただ、ただそれだけで去るつもりだった。のに、不意な誘惑に誘われてしまえば、我慢する術なんてものはまだ知らない。

もうすでに、心は傾いているのかいないのか。こんな、こんなデリカシーのない人に。

ゴールドに覆い被さりながら、ただ本能に身を任せ、ルビーは自身の熱に意識を預けた。


なんでまったく、本当に、なんでこんなこんなこんなこんなこんなこんなこん…な、






冗談でしょう?



end



はじめまして、あさおです。
まずはこんな、素敵な企画をして下さったきいちゃんに、とても感謝しています。ありがとうございます!

文を書く行為がとても久々すぎて、文章もまとまらず四苦八苦しましたが、ここまで読んで下さった方には、とても感謝します。

一応ルビゴなのですが、ルビゴかゴルビなのか。そんな曖昧な2人の関係がすきです。つまりはゴルビゴがすきです!ゴルビゴ!!

それではこの場に参加できたことに、心より感謝しながら、改めて主催のきいちゃん、ありがとうございました!



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