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『Re:』

その言葉は、重くて、あらぬ事が頭を過ぎる。
いつでも覚悟はできている。
それなのに、頑なに拒んでしまう。
現実なの。
事実なの。
受け入れて、その上で前進しなくちゃ。

今までだって、何人もの夫の同僚を見送ってきた。
その家族の苦悩も聞いた。
精一杯のエールも送ってきた。
あれは全て、他人事で済ませてしまっていたのかもしれない。
薄情な自分を責める余裕もなく、ただ、おろおろと毎日が過ぎていく。
分からないから、いつもと同じ顔をする。
避けるように、笑顔を作ってみる。
夜になると安心してしまう自分がいる。

初めは二人で寝ていたベッド。
遠征中は一人で寂しかったっけ。
二人の時は、色々あったり。
歳月に薄められた思いがそれでも顔を熱くする。
いつもの位置に、夫。
それに背を向けて眠る、娘。
べったりとくっ付いて眠る日もあれば、どうやら今日は離れて眠る気分らしい。
彼らの間に、ゆっくりと潜り込む。
二つの寝顔を見比べながら確かな遺伝子を感じる。
横にある小さなベッドは空っぽなまま。

だらりと伸びた腕。
邪魔にならない場所へ運ぼうと手を握ると、反射的に握り返してきた。
いずみの手だと思ったのかな。
緩んだ頬をそのままに、もう片方の手も重ねる。
大きな手。
いつから、心臓が跳ね上がらくなったんだっけ。
彼にとっては軽くしてるつもりでも、時々痛いときもあるんだよね。

あたし、いるよ。
ちゃんと、いるから。
何もしてあげれないけど。
言わないと伝わらないのに、言葉に出せなくて。
彼の皮膚に伝わる温度にそれを託す。

怖いくらいに、彼の行動が分かったり、
言いたいのに言えない事があったり。
濃ければいいと思い込んでいた距離感。
散々心の中で暴れて、時間の流れに任せる事にした。
言いたい事は、何でも話して。
彼の話もいっぱい聞いた。
聞きたい話は、なかなかしてくれなくて、ちょっと寂しくなったりした。
破片を拾い集めて、自分なりに想像した。
それが、今のあたし達。

しっかりと握られたままの手。
すごく気持ちいい。
ストンと落ちた眠り。
リラックスしてるのに、深い眠りにはならない。
手を離したくなくて、体制を変えれない。
好き。
いつまで経っても変わらない。
あたしの一部になった感情。

下にしたままの肩が痛い。
カーテンの隙間が明るんでいる。
時計を見たい。
でも、手が。
一度離して、すぐ戻ればいい。
そう寝ぼけた脳が答を出す。
丁寧に紐解き、解放させる。

ほんの少し冷たい指先。
壁側に目をやる。
こんな時間から、もう外は明るいんだ。
今日は天気良いんだろうな。
そう確信しながら、再び布団へ潜る。
同じ場所には大きな手がない。
でも、諦められなくて。
起こしてしまわないように、探す。
手。
こんな事でしか伝え方を知らない。

しまった。
大きく彼が動く。
いずみが赤ちゃんだった時から眠りを妨げないように注意してきたのに。
空気を壊さないように、眠っているふりをする。
穏やかに、穏やかに。
極力ゆっくりと息を吐いていく。

しっかりと手首を掴まれる。
スッと大きく息を吸い込む。
この数分の努力が泡と消える。
起こしてしまった。
悪あがきは承知の上で、瞼は閉じたまま。
力を抜いた腕だけが奥へと導かれる。
辿りつくと、手を重ねてそれを握らされる。
2枚の布を隔てているとは思えない。
熱くて、硬くて。
まさか、こんなになっているとは思わなかった。
あたしの手を包み込んだ手が動く。
急速に細胞たちが、それを思い出す。

どういう時に、こうなるのか知っている。
最近触れた時よりも、昔の事の方が鮮明に思い出せる。
早まる鼓動までも再現できる。
体の中心を通る熱い芯。
熱で蕩けて、溢れてくる。
握らされたモノの脈を感じる。
きっと先端は湿っている。

大きな二つの手が這い回る。
わき腹から腰のラインをなぞる。
あたしを確認してる。
触れて欲しい所はそのまま。
ゆっくりと肩や背中、太ももを辿る。
それだけなのに。
首から上がたまらなく熱い。
湧き上がる物を押さえようと膝を閉める。
熱が篭もっている。
上昇し続ける血液。

目を閉じたままでも別の体温の動きを感じる。
大きな熱が、あたしの上に覆いかぶさる。
次は。
緩めた唇が重なり、ヌルリとした物が奥に進入する。
前歯を一舐めしたら、躊躇なく隙間へ進む。
戸惑う舌を吸い上げられ、サラサラとした唾液を飲み込む。
声を出してはいけない。
それだけで精一杯で、熱い棒状のモノを離れた手がシーツを寄せる。

おへその辺りに居た彼の手が、スルリとズボンと下着を脱がしていく。
瞬時に腰を浮かしてしまう自分が恥ずかしい。
下半身と腹部が直接シーツに触れる。
布団の隙間から、ふわりと自分の臭いがする。
恥ずかしいと思うたびに湧き出る透明な液体が音を立て流れる気がする。
恥ずかしい。

隣では娘が寝ている。
冷静な部分が時折そう教える。
それを無視し、強く目を閉じる。

欲望が止まってくれない。
できるだけ力を抜いた膝を広げられ、腰と腰が接近する。
あたしのヌメリを、アレが浴びる。
「ぅうん・・・」
しまった。
鼻にかかった抑えた声が漏れる。
反省よりも順調に進むそれを迎え入れる。
器用な舌のように内壁が歓迎する。
掴まれた脚を素直に彼に巻きつける。

奥まで行くと遠慮なく動き出す。
それに合わせて腰を振る、あたし。
慣れた行為。
理解し合えているのに言えないこともある。
こうしている時にだけ感じることがある。
初めて繋がった時から同じこと。
恥ずかしさと、少しの罪悪感が毛穴を開く。
熱を沈めようとする体が雫を出す。

粘着質な音を奏でる。
ベッドが軋む音と、それだけが支配する。
鼻先に掛かった力が声を閉ざす。
硬直する表面とは裏腹に、胸の中で大きな物が弾みだす。
揺さ振られるスピードが速まる。
しっかりと掴まれた腰に食込む爪が痛い。
腹の底から出す深い吐息。
力加減を間違った脚は渾身の力で彼を引き付ける。
上半身から溢れる汗で身を包む布を張り付かせる。

来た。
意思を離れた自分の体がヒクヒクと上下する。
脚はそのまま。
体内に注ぎ込まれる熱い液体。
全身を駆け巡り、あたしを呼び起こす。
内太ももから感じる、汗にぬれた夫の皮膚。
緩やかな痙攣で名残惜しげに離れる。
ドロリとあたしを経由して夫が出した物が
シーツに流れる。
下半身がドロドロとしてる。
動く度に溢れ出る濃厚な液体。

軽く触れるだけのキス。
初めてそうしたシーンが浮かぶ。
再び鼓動が早まる。
穏やかに奥底へ着地する。
いつもの日常へと戻してくれる。

いずみが起きないように。
悟られないように。
余韻に浸るよりも、現実。
そんな自分に冷めながらも、今日からは作り笑顔はいらない。
明るい日差しを家族で浴びる。

おわり

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