backbone

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『backbone』

「ふー何か、スッキリした!」
朝から変わらない軽やかな表情。
オフ日だからと、一日中買い物に付き合わされた。
同じ様な店ばっか見てるし。
文句を言うと、「たまにはいーじゃん」
と、笑顔で返された。
マイペースに、そんな顔されると返せる言葉は無い。
こういうのを弱点と呼ぶのかもしれない。
もしかすると、それを知った上で効果的に使われているのかもしれない。

体型の違いは見えている以上に大きいらしい。
服の着心地など大して気にした事はない。
女って邪魔臭い。
鏡の前で、ブツブツと英会話の本を見ながら寸法修正の支持を練習する姿を見た事がある。
それが、今日は気に入った服がピッタリで非常に機嫌が良い。
サイズ直しの手間が無いらしい。
店でハシャグあいつを窘めながらも、うんうん、と頷く店員達の様子には悪い気はしなかった。

一緒に買い物に出るたびに、俺よりインディアナポリスに詳しくなっていて驚く。
裏路地にあるパン屋が美味しいだの、いったい誰に聞いたのか。
治安は悪いとは思わないが、ここはアメリカだ。
自分自身の経験が、喉の奥をほろ苦くさせる。
そろそろ少しばかり修正して、あの話をしてやるか。

夕食も外で済ませたし、今夜はたっぷりと・・・。
リビングで落ち着きすぎないうちに。
「へへへ、これ、これ!」
服なんかで、そんなにテンション上がるのか?
早く着たいのは分からんでもないが。
鼻歌が聞こえてくる。
ソファーに置いた袋から服を出し、ニコニコと眺めているだけかと思っていた。
ちょ、ちょっと待て。
明るい部屋の中で、堂々と服を脱いでいる。
おぉ!と見入りたいけど、もう少し恥らってくれ。
それ用の部屋に行けよ。
確かに、全裸じゃないし普段と大して変わらないけど。
いざって時は「電気消して」って言うくせに。
体の奥が苛立ちとは違う熱を持ってくる。

「ねぇ、後ろのファスナーお願い」
慌てるこちらなどお構いなしに、項から背筋のラインを、目の前に晒される。
白く滑らかなそこは、今まで注目したことはなかった。
どちかと言うと、前の方が気になってしまう。
でも、こんな所までも艶やかなのか。
背骨の通る浅い窪み。
表情豊かな肩甲骨。
しなやかに曲がるそこをなぞってみたい。
言われた通りファスナーを上げようと伸ばした手より、唇と舌がそれを辿っていた。
ビクリと抵抗を示す背中に逃げられないよう、両腰をしっかりと手で包み込む。

くすぐったそうに首を窄めている。
手応えを感じ唾液の分泌が増す。
耳元で名前を囁いただけで、二の腕までも赤く染まっていく。
新たに発見した箇所に夢中で吸い付く。
「シャワー浴びてから、ね?」
十分に、その気になっているくせに。
振り返られると、潤んだ瞳が目に入る。
これ以上、無駄な事を言わせないように目じりと、唇にキスを落とす。
逃さないように、しっかりと抱き寄せると観念したように、やわらかい髪が肩にもたれ掛かった。

這い上げた手で、二つの膨らみを包む。
服の上からでも伝わるその柔らな感触。
知っている。
この心地よく、敏感な所を誰よりも。
布の中で、何度となく形を変える。
揉まれてもプルンと元に戻る。
不安定なのか後ろ手に太ももを撫でられる。
そうで無いとは思いつつも、急がされているように感じる。

腰の曲線を通り手を降下させる。
素肌に触れると、躊躇わず進入する。
光沢のある布より艶やかで魅了させる肌。
一気に下着を下げる。
膝を付き、しっかりと見える位置へ行く。
「あっ・・・」
自然光とは違う光の下で鮮やかに愛液を垂らしている。
生々しくも逸らす事はできない。
ここ。
なかなか見せてはくれない所。
背を向けている事を幸いに思春期の頃、テレビ画面に向けていたように凝視する。
薄紅色の皮膚が視線を感じトロリと興奮を流す。
溢れる透明なそれ。
指でなぞると、たっぷりと絡みつく。
甘酸っぱい香りに刺激され口内に溢れた物を飲み込む。

濡れた太ももを拭う。
存在感を増した芽を確認する。
思い通りの吐息。
何度も狂わす潤む狭いとこに中指を飲み込ます。
「うっ、んん・・・」
ブチュリと卑猥な音を立てながら根元まで差し込む。
下手なテーピングのように指先が締め付けられる。
僅かに薫の背中に力が入った。
いつもの様に指を動かすとでも思ったのだろう。
しかし、すんなりと引き抜いた。
名残惜しげに小さな唇が閉じられていく。
ネットリと女にまみれた指。

一瞬だけ集中を己に戻し、出番を待ちわびたと主張するモノを晒す。
磁力のように対極を求める。
必要以上に反り返るそれを握る。
妻の太ももを濡らすヌメリを遡っていく。
目的の場所に着くと、すぐさま挿入する。
速度に合わせ、小さな吐息が耳を刺激する。
不慣れな角度で腰の位置が定まらない。
細い腰を抱き寄せ、己を迎えさせる。

精巣が吊るように小さく痛む。
ワッツが語ってたっけ。
「女は限界まで我慢させろ」
向こうから腰をすり合わせてきたり、言葉に出すまで焦らすらしい。
そうすると、イイ具合になるって。
そんな事しなくたって、薫はイイっての。
熱い泥濘に侵入していく。

服に隠れていても白い背中を流れる窪み。
その延長線に今。
ソファーの背もたれに、しがみ付きながら頭を上下させている。
「あっ、あぁ・・・」
いつもより高い声。
乱れる髪と、くねる肩。
「痛いか?」
「ぅうん、ちょっと違うの・・・その・・・」
歯切れの悪い返事をしながら、見る見るうちに肌が染まる。

痛くはないらしいが、どうも様子が違う。
繋がっている部分は、気持ち良いとヌルヌルと締め付けてくる。
動きを止めてやれる程、大人ではない。
落ち着いてきた本能が、根元まで挿入しないとセーブをかける。
「あー、あぁー・・・ん」
欲望に負け、時折最奥を突く。
若干の後悔をしながらも、それに反応し、また一段締め付けが強まる。
催促するように、薫が揺れだす。
押し殺す声にすら興奮する。
ビラビラと小さな収縮が飲み込もうとしている。

もっと味わっていたい。
女より先には逝けない。
額から雫が流れ落ちる。
意識が逸らせない。
限界が近い。
それなのに、何かが足りていない。
意味もなく焦りながらも、自らの腰の動きに煽られる。
早く見つけないと。

何を求めているのか。
答えと同時に舌打ちしてしまう。
格好が付かなくて嫌になる。
上半身を密着させ、片膝を抱く。
「うっん、きゃっ・・・」
状態を起こしてやりながら反転させる。
浅く繋がったまま。
うっすらと目を開けた表情を横目で確認し、両腕を首に絡めさす。
委ねられた柔軟な体。
キュッと抱きつかれると気分が良い。
改めて最奥へ進む。

所有してる訳じゃない。
独占してはいけない。
こいつは、こいつのままじゃないとダメなんだ。
分かってる。
それなのに、今だけは。
欲しいんだ。

ムッチリとした太ももを掴む。
ズシリと来る重みさえ、これが現実だと教えてくれる。
乱れた息遣いを胸に感じながらスパートをかける。
突き上げる度に、腕の中がタプンと揺れる。
「うぅぅ・・・」
お互いがお互いを精一杯抱き合う。
骨同士が苦しそうに、ぶつかり合う。
短い呼吸が意識を曖昧にさせる。

思いのままに動き続けていた腰が、自由を失う。
ネットリと吸い付かれ、導かれるままに欲を吐き出す。
プルプルと腰が震え残らず搾り取られる。
ユルユルと他の生物のように白濁した液体を飲み込んでいく。
それでいい。
奥まで流れ込めばいい。

できるだけ丁寧にソファーに寝かす。
整えようとする呼吸をそのままに、潤んだ瞳で見つめられる。
新しい服に皺が入ってしまったかもしれない。
茂みに絡む白い液。
我侭なのだと自覚している。
ゆっくりと口元が緩み、一番好きな表情をくれる。
再び早まる鼓動。
誤魔化そうと、頬に手を掛けキスをする。
そんな事は逆効果で、いつまでも反省を生かせない。
触れるだけの予定が、深まって行く。
もっと。
一旦は冷めた熱が再び戻る。

明日のスケジュールを浮かべ、ちらりと壁に掛かる時計に目をやる。
まだ大丈夫。

おわり

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