気まぐれ王子C*
晴れてリドルと恋人になったわたしは、わりと恋人らしい交際の日々にそれはもう浮かれていた。
まずは試験後のホグズミードは2人で回った。と言っても、面白がった友人たちが後をつけていたので最後には合流したけど。
口元についていたバタービールの泡を拭われたときは、ベタだけどとってもドキドキした。
夏休みの間は手紙のやり取りを続けた。フクロウが帰って来るたびに心が躍った。リドルの綺麗な字で綴られた手紙たちは、わたしの宝物箱に大切に仕舞われている。
約束をして、1度だけロンドンでデートした。公園で作ってきたサンドイッチを食べて散歩するだけだったけど最高に幸せだった。学校以外の場所でリドルに会うのは、なんというか恋人の特権みたいな気がしたのだ。木陰で久しぶりのキスをされたときは、いっぱいいっぱいになってしまって、ずっとリドルにしがみついていた。
9月1日がこんなに楽しみだったことはない。
新学期が始まってからは、図書館のあの場所で勉強を教えてもらうことが多くなった。リドルの説明はとってもわかりやすかった。これなら(リドルのせいで)下がってしまった成績は取り返すことができそうだ。
図書館で会うたびにもれなくキスをされるので、教えてもらったことが頭から飛びそうになったけど。
リドルほどわたしを弄る人はいないという安心感からか、他の男の子と喋るときの緊張は少しだけ落ち着いた。
免疫がついてきたのかもしれない。
「僕の秘密を1つ教えてあげよう」
とある金曜日の夕方、わたしはリドルに誘われて石壁の前に立っていた。
目を瞬かせているうちに扉が現れたのに驚いて、ぎゅっとリドルのローブを掴む。
「……あったりなかったり部屋?」
「その通り」
風の噂で聞いたことはあった。でも本当にあるなんて。
「すごい……」
連れられて中に入る。松明に照らされて部屋の中に浮かび上がった景色に息を呑んだ。
たくさんの本、調べものにピッタリの大きな机とソファ、薬草に大鍋、呪文が練習できそうなスペース、見たこともない道具……。
魔法を極めるにはもってこいの部屋だ。
リドルは慣れたようにソファに掛ける。それに続かず暫くうろうろと部屋の中を見回っていると、彼はこちらに向けてくいっと指を動かした。
「わ、」
あっという間に引き寄せられて、気がついたらリドルの両脚の間に座っていた。
そのまま後ろから抱き締められる。
右肩に顔を埋めるようにされて、リドルの呼吸が首元に触れ肌が粟立った。
9月下旬なのに暖かい日で、今はローブもセーターも脱いでシャツ1枚。その1枚を挟んで背中全面がリドルと密着している。
「!」
左腕がお腹に巻きついて、右手がスカートの上から太ももを撫で始めた。
まるで蛇に絡みつかれているかのようだ。
こんな風に体を寄せるのは初めてで、どうすればいいかわからずされるがまま。
自分のハグに戸惑っているわたしが面白いのか、リドルが首元でくすっと笑う。その擽ったさに耐えていると、彼の右手がスカートの中に侵入してきた。
「や、やだ、リドルくん?」
問いかけるように名前を呼んでも返事は無く、手が内腿をなぞり始める。
その手つきは厭らしく、少しずつわたしの呼吸を乱していく。
更に、左手がシャツの中を昇ってきて、やんわりと下着の上から胸に触れた。
胸に触れられていることと、ドッドッと喚く心音を知られること、どちらも恥ずかしくてわたしは抵抗するように彼の腕を掴む。しかし力が入らず、ただ腕を重ねたようなものになってしまった。
ああ、リドルに対して免疫なんて全くつかない。
脚の付け根ギリギリの場所を撫でられ、秘部がきゅんと疼いてしまう。
胸は、谷間の部分から下着の中に彼の手が入り込んできて、直接突起に触れられてしまった。くりくりと捏ねられて、甘い刺激に体が震えた。
「ひっぅ、! やだってばぁ」
「ふうん? 嫌なのに感じてるんだ。ナナシはエッチだね」
ついにパンティの上から秘部に触れられ、じんわりと湿ってしまったことを知られる。
彼の意地悪な言葉に、顔が爆発しそうなほど熱くなった。
どこまで進むつもりなんだろう。からかってるだけだよね?
「ま、まだ、学生なのに」
「でも恋人同士だよ。触れたいって思うのは当たり前だろ?」
「ひゃ、」
耳を甘噛みされて嬌声をあげてしまう。
加えて、リドルの指が下着越しに肉芽を擦り始めた。遠慮ない速さで。
痺れるような快感に声を抑えることができない。
「ふ、ぁあ……あっあ、っ、」
聞いたことが無いような自分自身の甘い声が羞恥心を刺激し、快感と相まって、じわじわと目に涙が溜まった。
ふと、リドルの動きが止まる。
「……ああもう、からかうだけのつもりだったのに」
次の瞬間ぐるりと視界が回転して、わたしはソファに仰向けに押し倒されていた。
「僕の理性を壊すのが、本当に得意だな」
「そんな、つもりじゃ、」
「ねぇ……本当に嫌?」
リドルがネクタイを緩め、すうっと首から外す。
その妖艶さに魅入ってしまって、彼がわたしのネクタイを外すのをあっさり許してしまった。プツプツとシャツのボタンを外され始めて、慌てて我に返る。
「だ、だめ。赤ちゃんできちゃうかもしれないんだよ」
「避妊すればいい」
リドルはポケットからビニールの包みを取り出すと、歯で噛み切って中身を広げた。
……コンドームだ。開いた口が塞がらないとはこのこと。
しっかり準備してるなんて。
この――破廉恥王子め!
「これ、魔法で破れないようにしてあるからすごく薄いんだ。生でしてるみたいに感じると思うよ」
「な、なんでそんなもの持ってるの……」
「2人で会うときはいつも持ち歩いてたけど。万が一に備えて」
あまりの台詞に言葉を失う。顔から湯気が出そうだった。
リドルがわたしとそういうことをするのを想定していたことに、驚きと恥ずかしさで内臓がぐるぐる回っているような感覚に襲われた。
いつのまにかシャツのボタンは全て外されて、肌を露わにされている。
リドルは眩しそうに目を細めて、わたしの体を見つめた。
「お願い」
わたしを捉えたリドルの瞳は、赤く揺れている。
そう認識したときにはもう、彼の唇に侵されていた。
口内を調べるような深いキス、その合間、背中に回された手がブラジャーのホックを外して、もう片方の手が尻を撫でたかと思えばパンティーがずらされていく。
もう何もかもついていけない。
溺れているような気分だ。
勿論男の子とこんなことをするのは初めてで、お相手は憧れの王子様。二人っきりの特別な部屋。
――こんなの、心臓がいくつあっても足りない。
わたしの唇から唇を離すと、リドルは耳、首、鎖骨とキスを落とし、ホックが外されだらしなくぶら下がっていたブラジャーをずらして、ちゅうっと胸の突起を口に含んだ。
「っっ!」
体がビクンと跳ねる。
そんなわたしに構わず、リドルはわたしのパンティーを膝辺りまでずらした。入り口がひんやりと外気に晒されて、脚を閉じようとする。しかしそんなことは許されるわけがない。
彼の手が割りいるように秘部に触れる。直接肉芽に触られて、わたしは一際高い声を上げてしまった。
「弱いね……ここ」
「まって、りど、ぅ」
布越しでもあんなに気持ちが良かったのに、直接触れられてはひとたまりもなかった。くにくにと激しく弄られ続けて、何かが押し寄せてくるのを感じる。初めての感覚だった。それは瞬く間に他の感覚を支配して、わたしの頭を空っぽにした。
「――――あっ」
快楽に耐えるように目を瞑る。
「イっちゃった?」
肩で呼吸するわたしにリドルが嬉しそうに問いかけた。目を開いて映り込んできたその顔は少年のように笑んでいて、とっても意地悪だ。
待ってって言ったのに。紳士な彼はどこにいったの。
「!」
今度は、つぷ、と指が中に入ってくる。
そこからは拷問されてるような、甘やかされているような、とにかく色んな意味で耐えがたい時間だった。
脚を広げさせられて、スカートをめくられて、秘部を見られて、中を掻き回されて。必死に手で口を押さえてみても声が漏れてしまう。
リドルは上手だった。丁寧な愛撫をして、大した痛みを与えることなく、閉じられていたわたしの膣をじっくりと拡げた。自分の耳に水音が届く。かなり、濡れてしまっている。
「そろそろかな」
リドルはベルトを緩めて、閉じ込められていた彼のものを取り出した。雄々しく反り立っているそれはわたしの目を釘付けにした。普通の状態もまともに見たことがなかったので目新しさもあったし、こんなものが自分の中に入るのかという不安に襲われた。
視線に気づくと、リドルはわたしに「エッチ」と先程と同じ言葉で窘めて、コンドームをはめる。
よく言う……!
「そんなに欲しい?」
「ち、が、」
「……」
「……」
「怖い?」
こくんと頷くと、リドルは前屈みになり、わたしに覆い被さるようにして、キスをくれた。何度も何度も。
今までキスはわたしをドキドキさせて緊張してしまうものだったけど、今のキスは不思議と安心をくれる。
いつのまにか、入り口に彼のものがあてがわられていた。ごく浅くなぞられて、下腹部がぞわりと鳴く。
「……君が好きだ」
真っ直ぐにわたしの瞳を見据えて、小さい子に囁くような優しい声色で、リドルが言う。
欲しい。可愛い。そういった言葉はたくさん貰っていたけど、好き、という言葉をくれるのは初めてで。
胸がいっぱいになる。
「……わたしも……」
もう心は決まっていた。
わたしの返事に微笑むと、リドルは腰を進め始めた。
「……っ、」
膣を少しずつ押し拡げて、リドルの性器が入ってくる。丁寧に指で慣らされたけど、やはりその大きさや重みはかなり違う。痛かった。
浅い呼吸を繰り返して耐える。
「力、抜いて。いくよ」
手を握られる。
返事をするように指を絡めると、下腹部に突き破られるような衝撃が走った。
「いっ……! ぅ〜〜」
やっぱり力を抜くことが難しくて、リドルの手をぎゅうっと掴んだ。
「痛い?」
こくこくと頷くことしかできない。
リドルは挿入したまま、キスを何度も落としたり、わたしの胸や腰をマッサージしたりした。優しい手つきに段々と身体がリラックスしてくる。
彼にもわたしの力が抜けてきたことがわかったのだろう。ゆっくりとした抜き差しが始まった。
部屋に響くのは、厭らしい水音とわたしたちの息遣いだけ。
「……ぁ!」
ふと、どこかを擦ったとき、全身に駆け抜けるような快感に襲われた。背中が反れて、脚がピンと張る。
「……そう。ここか」
「あっあ、」
リドルはすぐにその場所を突き止めて、執拗にそこを攻めた。
「ぁん、ん、ん」
「声、我慢しないでよ」
「だって、あ! やだ、はや……」
ピストンが速められたので、もう声を抑える余裕は失われた。
何度も何度も弱いところを擦られて、居ても立っても居られなくなって、リドルの首に縋る。彼の頭がわたしの首元に埋まって、艶やかな黒髪がわたしの汗ばんだ肌にへばりついた。
「あ、あぁ……もう、くる、っあ」
「ナナシ、」
「こわい、りどる、く……っ」
リドルの舌がねっとりと首を舐め上げ、わたしの身体を震わせた。腕に力を込めて彼を引き寄せる。そのせいで角度を変えて膣内を刺激され、わたしは2度目の絶頂に溺れた。
収縮する膣に締め付けられ、リドルも「う」と声を漏らして果てる。彼の性器が中で跳ねる感覚に身震いする。
わたしたちは暫くの間、そのままの体勢で荒い呼吸を整えた。熱の籠ったリドルの息が肩にかかる。
なんだか幸せだった。
たったいま処女を失ったというのに、充たされている。
「初めてがリドルくんで、嬉しい……」
心からの言葉が漏れた。
すぐに恥ずかしくなって、誤魔化すように笑うと、リドルは体を起こしてまじまじとわたしを見る。「リドルくん?」と声をかければ、中で彼のものが質量を増したのを感じて。つい「あ」と声を上げてしまう。
リドルは小さく溜め息を吐いた。
「君は本当に……」
そう呟くと、突然。
揺さぶるように腰を振られてわたしはまたも快感の波の中に引き戻された。
「な……! ん、あぁっ」
「〜〜う、ぅあ、やめ、て、ぁ!」
先程の絶頂の興奮が冷めきらぬままに奥を突かれて、程無くして達してしまう。わたしの締め付けに眉を顰めて、リドルは快感に耐えていた。すごくセクシーだ。
あまりの快感に目を潤ませていると、リドルはトントンと指でわたしの下腹部を小突く。
「これから先もずっと、君の相手は僕だけだ。それ以外、許さない」
そして今度は奥に押し付けるように腰を回されて、足腰ががくがくと震える。
「りどるくん、もう……! おかしくなっちゃう、」
「いいよ、なっても」
「やぁ、りど、はぁ、あ」
「ナナシ……!」
涙でぼんやりとした視界、真っ白な頭の中、汗ばんだ肌がぶつかる心地良さ、下腹部から全身を駆け抜ける快楽。くぐもったリドルの声に名前を呼ばれて。
こんなの、虜になってしまいそうだ。
「ああ、いつか君を孕ませてやりたい」
ぎらりとした赤い瞳に睨まれて子宮が疼く。
空が群青色になるまで、わたしたちは必要の部屋で肌を重ね合った。
[目次]