Sweet Breakfast@

「……どうして君がいるんだ?」

クリスマス休暇で皆が帰省し、一段と静かなホグワーツ。
勿論孤児院には戻らずホグワーツに残ったリドルは朝食を摂りに大広間へ入った。思った通りごく少数の生徒しかいなかったが、なんとその中に実家に戻った筈のナナシがポツンと1人で自分の寮のテーブルに座り、スープを飲んでいた。
スープに集中していたのか突然後ろから話しかけられ、異様に驚いたナナシはスープの中にスプーンを落っことした。

「わ、わ、」

スープが撥ね、彼女の私服に染みを作る。その私服姿をまじまじと見つめながら、リドルは魔法でその染みを綺麗にとった。
前にもこんなことがあったな、と思いながらリドルは彼女の横に座る。

ナナシは真っ赤になりながら「ありがとう」と呟いた。その髪には少し寝癖がついている。朝から可愛い。

「リドルくん、朝早いんだね。大広間に入るところをびっくりさせようと思ってたのに」
「逆にびっくりしちゃってるね」
「もう……」

自分の揶揄いを窘めながら、スープに落としたスプーンをなんとか拾い上げ、布巾で拭く。そうしたナナシの様子を眺めながら、リドルは彼女が学校に居ることを実感していた。
確か昨日、暫くの別れを前にお互いを想う言葉を交わしたはずだ。しかし彼女はここに居る。そういえば少しそわそわしていたような気もしなくはないが。

「実はね。リドルくんが学校に残るって言うから、わたしもそうすることにしてたの。今年はOWLも控えてるし、勉強するって言ったら家族は許してくれた」
「相変わらず熱心だね」
「あ……えっと。そうじゃなくて」
「?」

ナナシは一旦スプーンを置き、背の高いリドルを見上げた。その顔は真っ赤なままだ。
小さく深呼吸してから、おずおずと口を開く。

「リドルくんとクリスマスを過ごしたかったから、残ったの」

リドルに衝撃が走った。
いつもナナシをリードしていたので、彼女から自分に対して行動を起こされたことが初めてだったのだ。

「リドルくん7年生だから……今年でいなくなっちゃうでしょ? だからその……少しでも一緒にいたくて……」
「ナナシ」
「あ! でもでも勉強の邪魔はしないから! ごはん一緒に食べたりとかできれば、それ、で……え? あの……」

必死に訴えていたナナシはリドルの異変を感じて口籠った。

近い。
いつの間にか彼の顔がすぐそばに迫っている。

頭の後ろに手を回され、まさかと思ったときには、唇が重なっていた。
ナナシは全身が燃えるように熱くなるのを感じた。何度も何度も重ねられ、くぐもった息が漏れる。
ついには深まろうとする口付けに、慌ててリドルの胸を押した。彼は仕方なさげにナナシから体を離す。

「リドルくん……!! こ、ここ、大広間……」
「人が少ない。見てないよ」

正直見られていた。視界の端で顔を真っ赤にしてこちらを凝視する少年や、飲み物をこぼしている少女が見える。
しかしそんなことは全く気にならないほど、リドルはナナシに触れたい衝動を抑えられなかった。

またも近付いてくるリドルにナナシはたじろぐ。

どうしようどうしようと頭がいっぱいになっていたが、危機一髪でナナシの体が動いた。
リドルの顔をかいくぐり、彼の胸に抱き着いたのだ。

「ここじゃ恥ずかしいってば……!」

彼女を捕まえようとしていたリドルの腕が宙を泳ぐ。自分の胸にしがみつき、耳を赤くしながらもごもごと訴える恋人。
彼に2度目の衝撃が走った瞬間だった。

ナナシの行動はキスを避けることができたものの、リドルを欲情させる結果を生み出したのだ。

「じゃあ、ナナシ。2人っきりになれればいいんだよね?」
「へ?」
「僕の部屋においで。同室の者たちは皆帰省したんだ」

彼女が油断して体の力が抜けたところで、リドルは立ち上がり、彼女の腕を引く。されるがままに大広間の出口へ歩き始めたことにナナシは慌て始めた。
このまま2人っきりの部屋に連れていかれたら……することなんて1つしか思いつかない。

「り、りどるくん、朝ごはんは、」
「君にする」

あまりの台詞に抵抗力を失ったナナシを、リドルは上機嫌でスリザリン寮へと誘導するのだった。



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