出来損ないの妹と殺戮兵器/OP


幼い頃。私は兄と共に訓練に励んでいた。けれど、めきめきと頭角を現す兄に対し、全くと言っていいほど成長しなかった。毎日のように兄と比べられ、出来損ないだと冷笑を浴びせられた。悔しくて悔しくて、でも本当のことだったから何も言い返せず。
そうして皆が寝静まった夜。こっそり部屋を抜け出して、星空の下で背を丸めて泣いていた。血の滲む努力も実を結ばず、ますます滑稽だと嘲笑に晒されるだけ。悔しくて悲しくて、いつまでこんな生活を続けなければならないのかと、子供心に人生を儚んだものだった。そんなとき、いつの間にか頭を撫でる温かい手があった。確認するまでもなく、それは兄で。何も言わず、ただ傍に寄り添って頭を背を優しく撫でて、私が泣き止むのを静かに待っていた。
それは、兄が13になるまでの日常だった。
兄は歴代でも最たる才の持ち主だったらしい。僅か13という歳でCP9入りした兄は、養成施設から不夜島エニエス・ロビーへ移った。途端、だった。私は同年代の子達から暴力を伴ういじめにあった。訓練と称して行われる一方的な攻撃によって体には生傷が絶えなくなった。皆私より体術に優れ将来性に満ち溢れていたため、教官は気付いていながら見て見ぬふりをしていた。味方などいなかった。そこで初めて、私は兄に守られていたことを悟った。
そんなある日、教官に呼び出され何事かと怯えながら部屋に行くと、そこには何ヶ月も会っていなかった兄がいた。背中に酷い怪我を負ったと聞いていたが、姿勢よく立つ姿からは具合は察せられなかった。久々の再会だったが、挨拶もそこそこに教官が話し始めた。何を言っていたのか、正直あまり記憶に残っていない。さほど重要なことではなかったのだろう。ただ、君には才能がないのだ、と言う教官の冷えきった声音だけはよく覚えている。

「お兄ちゃん。私、お兄ちゃんと一緒にいてもいいの?」

兄は私を迎えに来たと言った。嬉しかったけれど、こんな場所からおさらばできるのも兄と共にいられるのも幸せだったけれど、それでも理解しているつもりだった。兄と私では、あまりにも違いすぎる。方や才に溢れいずれは歴代最強になるであろうと期待される新人、方や才がないと落第の印を押されたどこにでもいるような子供。住む世界が違うのだ。兄のことは大好きだったが、だからこそ出来損ないの私が傍にいることで兄までが笑われるかもしれないことが嫌だった。
そのときの私はたぶん、泣きそうな顔をしていたのだと思う。兄の手が頭を優しく撫でて、そっと抱き締められた。

「当たり前だろう。これからは、いや……これからも、おれが守ってやる」

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