後悔と幸福について/死帳(L)


「後悔していませんか」

ワタリさんお手製マドレーヌを頬張っていたあたしは、暫く咀嚼を続けたあと、ごくんと飲み込んで、そうして首を傾げた。二つ目に手を伸ばしながら、Lの黒々とした瞳を見返す。

「なんで?」
「……」
「後悔、するようなことなくない?」

こんなに美味しいお菓子が毎日食べられて、ふかふかベッドに明らかにブランド物の服、好きなことをしてても怒られなくて、うざい上司の顔も見なくて済むし、それに何より、

「Lといられるんだから、こんなに幸せなことってないでしょ」

好きな人といられること。これ以上ない幸福。後悔とはまさに対極にある。

「……貴女って人は、本当に、」
「じゃあLは?後悔してるの?」
「しているように見えますか?」
「見えないね」

あたしのこと大好きだもんね。
ソファから下りてぺたぺた歩く。照れて黙り込んでしまったかわいいLのお口にマドレーヌを持っていけば、間髪入れずぱくりと。もぐもぐと食べるLは、心底幸せそうに微笑んでいた。

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