Lに甘やかされる/死帳
Lは、私がくよくよ泣いているといつもすっ飛んで来る。
「どうしました。転んだんですか?それともぶつけてしまいましたか?どこか痛みますか?苦しい?それとも、誰かに何かされましたか。酷いことを言われましたか」
「う、ううん……」
違うの。どれでもないの。
怖くなる。どうしてこの人、こんなに優しいんだろう。少し泣いただけでーーその少しが普通の大人にとって少しでないことは分かっているーー幼子を宥めるみたいに。背を撫で、頭を撫で、柔らかい声で訊いてくる。何も答えなくても、何も言わずにそばにいてくれる。優しい。すごく。だから怖い。
怖くて、泣いてしまう。
「える、は、」
「はい」
「鬱陶しいとか、思わないの?」
きょとんとした。あ、かわいい、なんて。
「鬱陶しいだなんてとんでもない。貴女を泣き止ますのはとても楽しいんですよ」
「たのしい……」
「涙がぽろぽろ流れていたのに、ふとそれが止まって、花のような笑顔が戻る。その瞬間が好きです」
ぱちぱち。瞬きを繰り返す。涙は止まっていた。
Lはにっこり笑う。
「ほら、今、この瞬間」