えるとねこ/死帳


「猫」
「猫?」
「猫を飼いたいなって」
「猫をですか」
「うん、そう。真っ黒な子」
「いいんじゃないですか?」
「うん、それでね……えるって名前付けるの」
「……」
「そうしたら、寂しくないかなあって。思っ、て、……」
「寂しいですか」
「……」
「すみません」
「……ううん、って言ったら嘘になる、けど……謝らないで」

私は大丈夫だから。


数年前の会話を思い出す。貴方が発したひとつひとつの言葉をゆっくりと噛み締める。私は大丈夫だから。そっと膝上で眠る黒猫を撫でた。毛並みが貴方の髪の感触にそっくり、なんて。

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