エース長編 | ナノ


学校、行かないのか?


私立高校に入学したという親友から届いたメールを眺めながら、ベッドに潜り込み頭から深く毛布を被る。思いの外強い力で閉じた携帯端末を床に放ると、余計な思考を振り払うように強く目を閉じた。

おれは───



「おはようございます朝ですよ!」
「……誰だテメェ……。」

結局あのまま寝てしまったらしい。
今日は出掛ける気分でもないからもう一眠りしてやろう……そう考えていたおれの、継続されるはずだった睡眠時間は突然、他人に壊された。

「カーテンも開けないで!暗いです。」
「──うお、まぶし……っ!」

バッと開けられたカーテンの先から入り込む久しぶりの日の光に、いつの間に退かしていた毛布を夕べと同じように被ろうと腰回りに手を伸ばす。

「………ない、」
「あっ毛布?ならここです。また寝られては困りますから!ほら早く起きた起きた!」

ばふばふと毛布を畳む音がする方に顔を向けると見知らぬ女が立っている。いや、見知らぬ……というのもちょっと違うな。どこかで、見たことがある気がする。

「お前……?」
「……やっぱり、忘れちゃいましたか?」

陽の明るさにやられた目を、それでも何とか凝らしてよく顔を見る。目の前の女は少し悲しそうに笑っていて、おれはそこでようやく気が付いた。

「お前、……名前か?」
「……!!よかった、覚えててくれた!」

おれの言葉でとたんに笑顔になったこいつは苗字名前。昔この辺に住んでいてまぁ所謂、幼馴染みってやつだった。でもこいつは確か中学入るときに引っ越して……?

「私、今年からまた戻ってきたんです。よろしくね……エースくん。」
「……何のつもりか知らねェが、おれは学校なんか行くつもりもお前とよろしくするつもりもねェ。」

大方、母さんが入れたんだろうがいきなり人の部屋に入るなんてどうかしてる。くそ……壊れた鍵、さっさと直しときゃよかった。ギロリと苗字を睨みつけ威圧する。泣くなりなんなりして早く出ていけ。

「……。」
「……。」
「駄目です!ほら早く制服来て!間に合わなくなっちゃ、いま、す!」

泣き虫だった記憶の片隅の幼馴染とは違う、期待外れの反応を見せた苗字は横たわるおれの腕をぐいぐいと引っ張り出した。どうやら是が非でもおれを学校に連れていく気らしい。

「あんなとこ、誰が……っ!」
「こらエース!せっかく名前ちゃんが来てくれたのよ!観念して、早く支度して学校に行きなさい!」


──最悪だ。
こうして、おれの一ヶ月の不登校ライフはあっさりと終わりを告げた。


遅刻しちゃいますよ!
(エースくんのお母さん、助かりました)
(いえ、私の方こそ)







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