あの公園の一件からというもの幼少期のおれと特に一緒にいたのは多分あいつで、はじめこそ誰かが常に傍に居ることに困惑はしたものの、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
物好きな奴もいたものだと冷めた気持ちを持ちつつも、今考えれば嬉しかったんだよなとも、素直に思えた。
『エースくんエースくん』
『……ンだよ。』
『いっしょに遊ぼう?』
そう言ってほぼ毎日、飽きもせずに笑いかけてくる苗字を、最初は変なやつとしか思っていなかったおれもだんだん心を許し始めていた。
『今日はね、おにごっこしよう!』
『二人でかよ。』
『う……ふ、ふたりでも楽しいよ!』
そうして誰もいない公園で二人、くたくたになるまで走り回ったっけ。苗字は大人しそうに見えて案外、外で遊ぶことも好きなようで。
『……あいたっ。』
『!だいじょうぶか、』
『へへ……転んじゃった!』
だけど、だからといって運動が得意なわけでもないから木登りしては木から落ちそうになったり、走り回っては転んだりと、苗字はおれをハラハラさせる天才だった。
『ち、血がでてる、』
『……だいじょうぶだよ、これくらい。』
『帰るぞ……!』
転んだ苗字に駆け寄れば、擦りむいた膝からわずかな鮮血が膝を伝っていて──子供のおれには、それさえも大変な怪我に思えてしまって、戸惑う苗字をおぶってあいつの家まで送ったんだったか。
自分の怪我で血なんて見慣れていたはずなのに、苗字のそれは全く別のものに感じて……。あいつもあいつで、遊べなくなって、それから困らせてごめんねと家につくまでずっと泣いていた。
「……ハハ。どんだけお人好しだよ。」
その点で見れば今も何ら変わらない彼女のことが思い浮かんで、振り払うように頭を降りながらも、口元からだけはしばらく笑みが消えなかった。
今でも鮮明に浮かぶ記憶から
(今のおれはまだ目を背けてしまうけど)