短編 | ナノ
「……暑い。」

容赦なく照りつける陽射しに板書の手を止めたDTO先生は唸りながら教壇に突っ伏すと「自習!」と叫んで動かなくなってしまった。規則正しく上下する肩に良く眠れるものだと半ば感心しつつ呆れるも、集中が途切れそうだったのは同じで私も机の上のものを片付ける。

カーテンの隙間からそっと空を覗けば透き通るような爽やかな青には似つかない暑苦しい光が瞼を掠めて思わず強く目を瞑った。開けている窓から入り込む温い風は涼ませてなんてくれなくて、瞬時に渇きを与えてくる。喉に張り付く唾液の感覚に耐えられず無意識に喉を鳴らす所作をする。

こんな日はキンキンに冷えて汗を流す、ガラス瓶のラムネが飲みたい。しゅわしゅわと弾ける炭酸の感覚を想像して更に喉の乾きが増した。

結局その後DTO先生が起きることはなく、本日最後の授業だったこともあってHRの為にやってきたハジメちゃんのお小言を交わしつつ先生は寝ぼけ眼で職員室に戻って行った。


「…ナマエー。帰らないのか?」
「………。わ、ハジメちゃん。」
「えっ何それ驚いてんの?」

飽きることなく光る空を見るのに夢中になっていて放課後になったことにも気づかなかった。それどころか大好きなハジメちゃんがこんなに近くにいるのに気が付かないなんて。

じっとハジメちゃんの顔を無言で見つめる私はさぞ彼の目に不気味に映っているだろう。そんな私を不思議そうに見返しながら顔の前で手を振るハジメちゃん。

「……太陽。」
「…へ?」

そのままハジメちゃんと外を見比べながら呟くと彼は訳がわからないという顔をした。特に深い意味は無くてただハジメちゃんは太陽に似ていると思ったら口が滑っていた。だから、私はあの空にどこか心惹かれたのだろうか。

「………なんでも!ねえハジメちゃん、そこの駄菓子屋でラムネ買って〜。」
「はあ?お前、教師に集る気か?」
「いいじゃんケチ。今度メロンパン奢るからさ。」

そう言えば一瞬目を輝かせたハジメちゃんだったが「生徒に奢らせるなんて!」とか何とか叫んだかと思えば直ぐに頭(カブリ)を振って真面目そうな顔を作って、けれど直ぐに表情を崩す。私の好きな表情。困ったような、呆れたような仕方ないなって感じの優しい顔。

「はやくしないと置いてくぞー?」
「あ、っちょ、待って…!」

慌てて追いかけた背は、思っていたよりも広くて。

もう太陽は沈みかけているはずなのに体中が渇きを叫んで仕方がなかった。渇いていたのはきっと心の、





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