(柔しえ)
裏
ぽたり。ぽたり。と落ちてくる汗は、今の寒い時期から考えると季節外れな気がした。
しえみは不思議な気分になりながらそれを見ていた。
そっと手を伸ばして、近くに見える額の汗を拭おうとする。だが、その手は空を切ると大きな手に掴まれて、熱を持った唇へと寄せられた。そして掌に吸い付く様にキスをされる。
篭ったような荒い呼吸の音が聞こえる。耳に掛かる吐息が熱くて躯が芯からズクズクと疼いた。『しえみ』と呼ばれて、脳から痺れるような何かがしえみの体内を走り抜けた。
「よそ見してる余裕あるんか?」
突然擦り付けながら挿入されて、しえみの躯は大きくは跳ねた。
「っ、ぁ!」
「無理させんとこて、思てたんやけどな」
「柔、造‥さんっ」
ズブリと深く侵入してくるソレが苦しくて、異物感に堪えるようにしえみは柔造にしがみついた。
強張ってしまうしえみの躯に柔造は指を這わせ、ゆるりと腰を撫でる。
「‥ゆっくり息、吐き出しぃ」
「っ、‥はぁ、はっ」
「そう、‥ええ子やなァ」
柔造は、浅い呼吸をしているしえみに片手を添えて、呼吸を整えさせるとしえみに口づけながらゆっくりと入っていった。そのまま抱え込む様に抱きしめると、更に奥へ奥へと進めていく。
「、んんッ」
「‥キツ、」
「は‥ぅっ」
「辛かったら背中に爪、立ててええからな」
柔造はしえみの頭を撫でると、頷いたのを確認してから一気に最奥へと腰を進めた。しえみの躯が弓なりに反る。
「ッじゅ、ぞ‥さんっ」
「ん、全部‥入ったで‥」
苦しそうに背に腕を回したしえみの頭を、柔造は『頑張ったなァ』、と言ってよしよしと撫でた。しえみは固くつぶっていた瞳をうっすら薄く開けて、柔造を見詰めた。
「‥辛ないか?」
尋ねられてふるふると首を振る。
柔造は、優しく微笑むとしえみの頬に汗で張り付いた髪を優しくそうっと剥がしてやった。そして軽くキスを落とし、ゆるゆると律動を始めた。
「っ、柔造、さん‥っ」
「ッは、‥痛ない?」
「んっ、大丈夫‥です、」
柔造は、切なげに寄せられたしえみの眉間と涙が溢れそうな目許にキスを落としていく。しえみはまたギュッと瞼を閉じて、身をよじり柔造に手を伸ばした。
「柔造さん‥っ」
「‥気持ちええか?」
「んんッ‥い、です‥あっ」
「、は‥しえみ、可愛らしなァ」
結合部から聞こえる卑猥な水の音が、部屋の中を侵す。
しえみの喘ぎ声に艶が出てきた頃を見計らい、柔造は速度を上げた。
悦い処ばかりを突かれて、しえみは感じながらも逃げるように身をよじる。
だが、柔造の腕がそれを逃さなかった。
更に高みへと追い詰められて、しえみの口から悲鳴のような嬌声があがる。
「あッ、あっ!じゅう、ぞ‥さっ!」
「‥一緒に、な?」
「ん、だめっ!あ、あッ!」
「はぁっ‥しえみ、‥っ好きや」
「ん、ぁッ、っあああッ!」
「っ!!」
ドクリと大きく脈打つと同時に、柔造から白濁が吐き出される。しえみの躯もビクリと大きく跳ねて絶頂を迎えた。
柔造はドクドクと脈打ち続ける自身をしえみの中に擦りつけると、萎えたそれをずるりと引き出した。呼吸を整えながら、しえみの隣へ躯を投げ出す。
「ん‥柔造‥さん」
「‥なぁ。キスしてくれんか?」
「、!?は‥恥ずかしい、です」
「ハハッ、今さらやん」
柔造は『しえみ、おいで』と呼んで、まだ胸が大きく上下しているしえみの躯を抱き寄せ、唇にキスをした。
「愛しとんで」
くしゃりと破顔した柔造を見詰め、しえみは怖ず怖ずと恥ずかしそうに触れるだけのキスを送る。そして蚊の鳴くような声で『私も‥』と告げると、幸せそうに笑った柔造の元へピッタリと身を寄せたのだった。