うちは兄弟とサクラ*暗い




月が見ている。
禁忌を犯す愚かな私を。
月だけが見ている。


ただひたすら闇へと沈んだ。
制止の声を振り切り、あの人に会うために里を、友を、全てを捨てて走った。闇に沈みかけた私を引き上げるでもなく更に沈めるでもなく、思わず凍てついてしまいそうな冷たい目で男はただじっと見ていた。男の唯一の肉親の名を呼ぶと僅かに反応を示したが、直ぐにまたもとの無反応に戻った。攻撃してくるわけでも護ってくれるわけでもなく、相も変わらず私を遠くから監視し続けた。


足を止めて、想いを馳せた愛しい人の傍らへ寄り添った。その身体は横たわったままピクリとも動かない。淡い月明かりに照らされながら指先でユルリと彼の形の良い唇をなぞる。唇は冷たく、その冷たさは彼の肉親の瞳を彷彿させた。月に重なる影を見上げると、赤い双眸が、やはり飽きもせず此方を見ていて、視線が絡む。

「貴方がやったの?」

「…」

「貴方が、この人を殺したの?」

撫でた唇と酷似した造りの唇が『そうだ』と紡いだ。

「どうして、」

「どうして…とは?」

「貴方の兄弟でしょ‥なのに」

「邪魔になったからだ」

躊躇いもなく彼の唇が冷酷な言葉を紡ぐ。

「邪魔…?」

「お前を手に入れるためには、こいつは邪魔な存在だ」

カタカタと震えだした両手を祈るように組み、胸元へ寄せる。

「これは…貴方の幻術?」

「違う」

無機質な声が耳に刺さる。痛くて、強く瞼を閉じた。再び目を開けると、月に重なっていた男の影が消えて、背後から気配がした。

「側に寄らないで!来たら私、貴方を殺すわ」

「何故?」

「許さない、貴方は私の大切な人を‥っ」

「別に、お前に許されたいとは思っていない」

「!」

振り返れない私の首筋に、冷たい指が絡んだ。そのまま地面に体を叩きつけられて、一瞬視界が白んで意識が遠退きかける。怯んだ隙に男は私の胴に股がり、私を見下ろした。

「…やめて!大声出すわよ」

「出したところで誰も来ない。里抜けしたお前を、誰が助けに来る?」

「!だ、誰か…助けてっ、ナルト!カカシ先生っ‥い、」

すかさず口許に手が被せられて言葉が妨げられた。
パサリ、と私の皮が1枚剥がされる。背中に冷たいモノが走り、喉の奥から悲鳴が零れた。

「っ!」

側に眠る身体に手を伸ばす。

「諦めろ。もう死んでる」

伸ばしかけた手を地面に縫い付けられて、涙が一気に溢れだした。
声なき声で叫ぶ私の腹上で、月明かりに照らされながらサスケ君がクスリと笑った。








サスケがうちは一族を殺して里抜けして暁に入ったイタチのポジション的な話
最後まで二人を逆に捉えてもらえるように書きたかったのですが…撃沈。_(:3」 ∠)_



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