(フレレナ)



―好きだよ。

そう告げられたとき、私は嬉しくて、満面の笑みで私も、と返した。
私も、フレディのこと大好きよ、と。

でもフレディは困ったような悲しいような、少し怒ったような、何とも言えない顔で私を見上げて言った。

「ねぇちゃん…絶対分かってないでしょ」

そんなことない、だって私はフレディのことほんとに大好きだもの。
そう言いたかった。
でもあまりに真剣な表情のフレディを見て、なぜだか言葉が喉に支えるようになって、出てこなかった。
まるで知らない人のように、フレディは私を見つめていた。
綺麗なグレーの瞳が、深い色を湛える。
淡い色の唇が、ゆっくり開いた。

「俺の好きとねぇちゃんの好きは違うよ。聞かなくても分かる。きっとそうだよ。意味、分かる?」


わかる、と言いたかった。だからそんな顔しないで、いつもみたいに笑って、そう言いたかった。
でも言葉は出てこなくて、代わりに涙がぽろり、と零れた。
怖い。なぜだかそう思った。

「ねぇちゃん!?」

慌てたように、フレディが私の顔を覗き込む。
いつものフレディだ。そう思ったら、安心して余計に涙が溢れた。
いけない、止めなきゃ。
泣いてばっかりじゃいけない。
そう思うのに、どんどん涙が溢れてくる。
でも何とか伝えたくて、必死で言葉を紡ぐ。


「わた、わたし、ほんとにフレディが、好きなの、でも意味とか、よくわからなくて、でも」

ぐ、と唇に力を入れて涙を堪える。

「好きなの…どこにも行かないで…」


勝手なわがままなのはわかってる。
フレディはいつだって私を助けてくれて、でも私は何も返せなくて、守られてばかり。
けれどフレディと出会ってから、私の世界に色がついた。フレディはいつだって眩しいくらいに明るくて、私の世界に知らない色をたくさん教えてくれる。


ふ、とフレディが微笑った。その深い色の瞳が、優しい色を帯びる。


「どこにも行かないよ」


暖かい腕が、手が、私をギュッと抱きしめた。


「ごめんね。少し焦り過ぎちゃった。怖かったよね」

あやすように背中を優しくポン、ポンと叩かれて、小さく首を横に振った。


「…ねぇちゃん」

少しの間のあと、フレディが私を呼んだ。

顔を上げると、穏やかで優しい瞳が、私を見つめていた。


「もう焦らない。ねぇちゃんを怖がらせることはしないし言わない。約束する。だけど俺がねぇちゃんの背を追い越して、ねぇちゃんを両手でしっかり抱きしめられるくらいになったら―」


もう一度
好きって言ってもいい?



かすかに鳴った鼓動に蓋をして
私は小さく頷く。
今はまだ考えない。
わからない。
でもいつかそのときがきたら
あなたの手をほんとうに離せなくなったら
そのときはきっと
もう戻れないから。


こちらも奏多ちゃんからの頂き物です。ありがとうございました〜!!!


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