サスサク




私はサスケくんが好きだ。
毎日思う。
だけど彼は重罪人で、そんな人を好きだなんて言うことは絶対に許されない。下手したら密通してるのではないかと疑われ兼ねない。
里の女の子達も他の皆もあんなにサスケくん、サスケ、と言って持て囃したのに、好意を込めて彼の名前を呼ぶ人間は今や一握りだけだ。彼を殺したら、その人は英雄と呼ばれるだろう。そんなのってないなぁと思いながらも、仕方ないと思う自分もいる。



「サスケくん、好き」

偶然会ったように装う彼へとそう告げれば、微かに顔を歪めた後、『馬鹿か』と言われた。今なら私を殺せるのにそうしようとしない彼の方が、私からすれば馬鹿だ。冷酷非情の重罪人と言われているくせに、彼はその名に相応しくなかった。そんなだから私は性懲りもなく彼を好きでいてしまう。

「なんとでも言っていいよ。何言われても好きだから。」

「ウザいな」

「うん。ごめんね」

冷たい眼に、昔の面影が重なって泣きたくなる。

その瞳にはずっと優しい色が滲んでいたのにね。
なんて思い出して、胸が傷んだ。
私には力がなくて、止めてあげられなかった。瞳の優しい色は消えてしまった。それでも、いつかの色を取り戻せると信じている。

「好きだよ、サスケくん」

昔のあなたが好き。
今の貴方に見え隠れする昔の貴方が好きだ。重なって見える、優しい貴方が。
酸素を取り込もうとする肺のように、絶えず私は貴方を求めていた。

「お前、その目やめろ」

「目?」

「その何処を見てるかわからない目だ」

「?私はサスケくんを」

「見てねぇだろ」

「…、ごめんなさい」

「謝るのもやめろ」

「ご、ごめんね」

「お前‥死にたいのか」

「そう…なのかなぁ」

わからないや。

そう言えば、サスケくんは嫌悪するように顔をしかめた。

死にたくはない。だけど、サスケくんに殺されるならいいかもしれない。
これを彼に告げたら、またウザいとか、勝手に死ねとか言われるのだろうか。

思っていたらどうやら口に出ていたらしい。しまったと気付いた時には遅かった。サスケくんはまた、盛大に顔を歪めて不快感を露にした。

「俺に殺されたいと言ったな」

「え?‥う、うん」

「なら、お前は俺が殺す。」

「サスケくんが、私を‥」

「そうだ。これは契約だ。だからお前は何が何でも絶対、俺に殺されろ。俺の知らないところで勝手に死ぬんじゃねぇぞ」

「え…?」

「わかったな」

「わ、わかったわ」

見れば冷たい眼に優しい色が滲んでいて、ほんの僅かな間だけ呼吸の仕方を忘れてしまった。
優しい色は消えていない。ずっと、消えてなどいなかったのだ。

昔のあなたも今のあなたも貴方なのだという事実を飲み込んだ瞬間、二つの貴方が一つになって、躊躇う私の背をそうっと、優しく押してくれた。



堕天使が泣いている


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