イタサク



優しく女を貌どるすべてが、涙が出るくらいに好きだ。
好きで好きで、でもそれだけでは生きていけないと知っているから、更に涙が溢れる。



「待ってイタチさん、」

弱い拒絶に、チクリと胸が痛んだ。

「無理しないで、休んだ方が‥、」

白くて、小さくて華奢な手を、包み込んで唇を寄せる。それから彼女の口にそっと己の唇を重ねた。

温かい熱が愛しくて、愛しくて
身が溶けるような感覚に自身の熱も疼き始める。逃げる舌を追い、捕らえるように絡めると、彼女から力が抜けて行くのがわかった。
最後に小さなリップ音を発ててから離れれば、彼女はもうすっかり熱に茹だされているのが見てとれた。揺れる瞳を見詰めたまま、胸元から手を滑らせ、纏っていた衣服を剥がして行く。

「イタチさん‥」

一糸纏わず姿で恥ずかしそうに視線を逸らした彼女を見下ろし、視線を交わす。

「サクラ‥」

名を呼んだ拍子に、彼女の白い肌へと一滴の涙が落ちた。

「イタチさん‥?どうして泣いて‥、っ」

言いかけた言葉を口づけで遮り、無理矢理に誤魔化す。

(言えるわけがない。)

(叶わない望みを、口にするのは愚かなことだ)

瞼を閉じて、自分の心にも蓋をした。流れ出す涙が伝い、汗と混じる。僅かに喘ぐ吐息を合図に、彼女の芯へと求めるように手を伸ばした。






(生きたいと思った)
(生きて、君と連れ添う未来を想像してしまった)
(いつの間にか、死が怖くなっていた)



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