どこにだって一緒に行こう お揃いの記憶を集めよう
(アマしえ)
手を伸ばして、指先で触れて、輪郭を象る。しなやかな曲線を辿って鎖骨に触れた瞬間、私の手の動きは止められてしまった。
「しえみ」
「なぁに?」
「抱き締めてもいいですか」
「うん」
いいよ、と言えば、アマイモンは労るような優しい動作でしえみのを抱き寄せる。
「柔らかい」
「お肉が?」
「お肉?」
「な、なんでもない」
困ったようにしえみが笑うと、その振動に、アマイモンは擽ったそうな素振りで身を捩った。
「しえみのお肉は柔らかいですね」
「え?あ、あんまり嬉しくないよ」
「そうですか?でも、美味しそうだ」
「それも嬉しくないなぁ‥」
少しだけ唇を尖らせたしえみを、アマイモンは身体を離して伺った。
「しえみ」
「なぁに?」
「僕は美味しそうですか?」
「え、」
「柔らかくはないですか?」
首を傾げて聞いてくるアマイモンをまじまじと見詰めて、しえみはまたクスリと笑った。
「柔らかくないよ。アマイモンくんは、ちょっと固いかな」
「固い?」
「男の子だもんね。あと、美味しそうでもないなぁ」
「そうですか‥」
ガッカリしたように肩を落としたアマイモンの肩に、しえみは『あれ?』と首を傾げてからそっと手をのせた。
「アマイモンくん、柔らかくなりたいの?」
「はぁ…、まぁ」
「美味しそうにもなりたい?」
「だって、しえみとお揃いじゃないですか」
「えっ…」
うーん、と目を閉じて考えるしえみを、アマイモンはキョトンとしながら見た。
「いけませんか?」
「そんなことないよ」
「僕はしえみとお揃いが嬉しいです」
「あ‥そういうこと。」
しえみがポンッと手を打つ。そして嬉しそうに笑った。
「私もアマイモンくんとおそろいだと嬉しい。でもね、アマイモンくんとお揃いじゃないのも嬉しいな」
「違うのも嬉しいんですか?」
「うん。姿形は違って当たり前だよ。それでいいの。みんな一緒だったら捜すの大変だもの」
「それはそうだ」
「みんな違うからそれぞれ違う良さがあるし、良いと思う所も違う。私は唯一無二のアマイモンくんが大好きだよ。」
しえみはにっこりと満面の笑みをみせる。そんな彼女を見詰め、アマイモンは眩しそうに目を細めた。
「…僕もです」
「ん?」
「しえみが何処にいるか、捜すのは嫌いじゃない」
「そうなの?」
「はい。君を見付けた時、いつも自分がどれ程しえみを好きかを思い知るんです。僕は他でもない君のことが、世界中で一番好きだ」
「アマイモンくん…」
「違うのも、良いのかもしれないな」
言いながら絡められた指に、しえみは視線を移す。自分の指を絡め返すと違う温度が伝わり合い、二人は再び見詰めあった。
「お揃いも、良いことたくさんあるよね。」
「そうですか?」
「うん。思い出は、お揃いだと嬉しいよ」
「思い出…」
首を傾けたアマイモンの真似をして、しえみもコテンと首を倒す。
「色んな場所へ行って、色んなことをして、色んな話をするの。」
「しえみと?」
「うん。お揃いの時間を過ごして、お揃いの思い出を記憶に刻むんだよ」
「素敵ですね。」
顔を戻したアマイモンに釣られるようにしえみも姿勢を正した。
「僕にできますか?」
「アマイモンくんがしたいなら」
「なら、お供してください」
「え?行き先は?」
「なんでもいいです。君が一緒にいるのなら」
瞼を閉じて静かに頷いてから、しえみは目をパチリと開ける。
「ありがとう…私でよければ喜んで」
そして嬉しそうに微笑んだ。
どこにだって一緒に行こう お揃いの記憶を集めよう
未亜様より頂いた『どこにだって一緒に行こう お揃いの記憶を集めよう』から、アマしえ。
素敵なアイデアに感謝致します!
30000hitありがとうございました!