サスサク→←ナルヒナ




『サスケを好きなサクラちゃんが好きだ』


ナルトが笑っている。
私に話しながら、笑っている。
私はそれをまるで他人事のようにぼんやりと見ていた。
まるで幽体離脱して違う場所から見てるみたいだ。不思議な感覚だった。悲しいのか、苦しいのか、嬉しいのか、全くわからない。

ナルトはすらすらと、まるで準備していたかのようにスムーズに言葉を並べて行く。


『俺ってば、サスケを追い掛けてるサクラちゃんを追い掛けてた。サスケを追い掛けてるサクラちゃんだから、俺は追い掛けてたんだ。』


サクリ。透明なナイフが私を刺す。それは胸の奥の奥に入って、開いてはいけない何かに当たった。その場所が静かに疼く。
私の疼く気持ちを私自身が押さえ込む。出てきてはダメだ。ダメだと。
言葉の見当たらない私に、ナルトは更に続けた。


『サクラちゃんに対しては憧れの気持ちだった。俺が恋愛感情で好きなのは、ヒナタだって気付いたんだってばよ』


私も同じことをずっと前にナルトへした。疼く胸の痛みに耐えながら、私はやはり何も言わずにいた。言えずにいた。気づかないふりをした。この胸の痛みの何倍も、いま彼の胸は痛んでいると知っているから。


『だから…だからサクラちゃんは、サスケのこと見棄てないでやって。』

ああ。
心の中で、私が泣き出す。声を張り上げて泣き出した。
表の私はやはり何も言えず、昔のナルトのように事実を突き付けられずに、ただゆっくりと頷くしか出来ない。
これ以上気付いてしまわないように。
大切な人達を傷付けないように。

これから先、私の腕はサスケくんの体を抱き締めて、ナルトの腕はヒナタの体を抱き締めるのだ。こうするのが一番いい、これでよかったのだと自らを無理やり納得させながら。


「好きだったよ、サクラちゃん」


ナルトが笑っている。
目には笑顔が映るのに、それは笑顔じゃないんだとわかってしまったから。


「‥ありがとう、ナルト」


ナルトは優しい。そして同時にとても残酷でもあった。



さようなら。さようなら。

かなしいね、私たち。



透明な



(きっとこれでよかったんだ)




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