(しえみ+柔造+金造+廉造、他)
『志摩兄弟に可愛がられるしえみ』


しえみ受け/1万打フリリク




どうしてこうなんだったっけ…
しえみは大きな男の人を見上げながら、だらだらと汗を流していた。



事の始まりは1時間前。

その日、祓魔塾の塾生たちは任務のために京都へ来ていた。だが、着いてすぐ、しえみは急な発熱でダウンしてしまったため宿泊用の宿で残って安静にしていることになった。

「じゃあ俺ら行ってくるから。しえみはちゃんと休んどけよ」

「何も心配いらんで、ゆっくり休んで下さいね」

「ほな行ってきます〜」


塾生たちはしえみを除いて任務へ出ることになり、シュラに引き連れられて出掛けて行った。しえみはそれを、布団の中から力無く手を振りながら見送った。



ケホケホ。
咳の音が部屋に響く。

「あつい…、」

眠ろうとしていたしえみは、先程シュラから貰った薬を飲んでいなかったことを思い出した。首を回すと、枕の側に置かれたお盆の上に粉末の薬とミネラルウォーターが見える。オブラートもあったが今は包む動作すら億劫に感じた。もぞもぞと起き上がり、薬をミネラルウォーターで流し込む。苦味ごと嚥下してホッと一息つくと、再び布団に潜り込んだ。体温調節ができていないためかゾクゾクと悪寒が走る。体を自分で抱えるように抱きしめて、瞼をゆっくりと閉じた。直ぐに睡魔に襲われてウトウトとしていたその時…。
ドクリ、と鼓動が大きく跳ねた。
驚いて目を開けて胸をおさえる。だが、身体の力が急速に抜けていき、呼吸が乱れて目が回り、耳鳴りが酷くなっていった。風邪の症状とは何かが違う。

(誰か‥呼ばなくちゃ、)

どうにか起き上がろうとしたところで、しえみの意識はプツリと途切れた。



****



目が覚めると体は楽になっていた。
うっすらと広がってゆく視界に、先程の霞みはもう見えない。額に手を当てると冷たくなっていて、怠さも全く感じなかった。

不思議に思いながらもなんとなく時計に視線を移したしえみは、驚きで目を見開いた。薬を飲んでから、まだ10分程しか経っていない。時計に表示されている日付もかわっていなかった。
意識を飛ばしていたほんの数分の間に、体は何事もなかったかのように良くなったのだ。薬が効いたにしてはあまりにも早過ぎる。
夢だろうかと思ったが、夢にしては感触や外から聞こえてくる音がリアルだ。
しえみは妙な違和感を感じつつ、ゆっくり起き上がると部屋を後にした。

廊下へ出た瞬間、しえみを見た宿の女中さんが驚いた様子で駆け寄ってきた。とても大きな女中さんで驚いたが、『そないな格好でおったらあきまへんえ』と言って着替えさせてくれたので、されるがまま何も言わず着物を着付けて貰った。お礼を言おうとしたが喉の調子がおかしいのでペこりとお辞儀をすると、女中さんは『あら。礼儀正しい子やね。』と微笑んで、忙しそうにどこかへ行ってしまった。
貸してくれた下駄を履いて、外へ出る。しえみの中の違和感は、更に膨らんでいた。何もかもが大きい。やっぱり夢なのかもしれない。昨日みた風景とは全く違って見えて、しえみは不安になった。
とりあえずシュラ達に合流する為に、今日行く予定だった任務地へ足を進めることにした。



***



やはりというか、何と言うか…。しえみは道に迷ってしまった。
京都に全く土地勘がないしえみには、その場の名称や店の名前を見ても自分が何処にいるのかサッパリわからない。相変わらず喉の調子もおかしい。それに加え、ずっと感じていた違和感はしえみを困惑させていた。
キョロキョロと辺りを見回しながら不安げに足を動かしていたしえみは、突っ込むように人にぶつかってしまった。


「、ぅお!」

(‥っ!)

思いっ切りぶつかりよろけたしえみを、誰かが素早く支えた。ギュッと閉じた瞼をおそるおそる開けると、困った表情で自分を見ている目と目が合う。
とても大きな男の人だ。容姿は何処かでみたことがあるような気がする。

(誰だろう‥?誰かに似てる‥)

しえみが必死に考えていると、男の人はしゃがみ込んで、「ごめんなお嬢ちゃん。大丈夫か?」と言ってしえみの体を元に戻してくれた。
ハッとして慌てて詫びようとしたが、やはり喉がおかしい。声が出ないのだ。お腹に力を入れても咽頭を震わせようとしても擦れた音すら出ない。そんなしえみを他所に、立ち上がった男の人は隣に立っている金髪の大きな男の人に、「金造!何ボーッとしとんねんドアホ!お前がぶつかってんからはよ土下座して謝れ」と言った。

(謝らなくちゃいけないのは私です…私が余所見をしていたから…)

必死に話そうとするが、唇がパクパクと動くだけでやはり音は出なかった。
金髪の男の人はしえみに、『ごめんな。』と謝ったあと、興味深々に『ところでその髪どこで染めたん?』と聞いて、黒髪の男の人に頭を叩かれていた。

(どうしよう…、あ!そうだ)

考えに考えたしえみは、金髪の男の人の手を取った。不思議そうにしている彼の掌に自分の指で字を書く。

「だ・い・じ・よ・う・ぶ・で・す…、大丈夫です?」

尋ねた金髪の男の人に、しえみはニコリと笑うとコクコクと頷いた。続いて不注意だった事を詫びると、彼は俺もほんまごめんなと言って困ったように笑った。

「君、もしかして声が出ぇへんのか…?」

それを見ていた黒髪の男の人が、ポツリと零すように言った。

「へ?何言うてんの?柔兄」

「何って…。‥君、声が出んのやろ?」

しえみが見上げてコクりと頷くと、金髪の男の人が『せやったんか!』と大きな声を上げた。

「こんな小さい歳で…色々大変やったんやな…!名前教えてくれんか?え?し・え・み、しえみちゃんいうん?そぉかしえみちゃんいうんか!しえみちゃん!お兄ちゃんがいっぱい遊んだるからな!」

(えっと、あの、)

「金造、落ち着け」

「どこ行きたいんや?高い高いしたげよか?お兄ちゃんの素敵な歌聞かせたろか?」

(いえ、そんな、)

「金造‥」

「柔兄!しえみちゃん全部首ふって遠慮しはるわ!なんて謙虚な子なんやろ!!かいらしいな!」

「引いてはるだけや」

お前は近付いたんな、と言って、柔造はしえみをひょいっと抱き上げた。

(わぁ!高い…!)

「何か探してたんやろ?」

尋ねた柔造を見て、しえみは頷いた。『ご両親とはぐれたん?』という問いには首を振る。

「何処の幼稚園行ってるんや?」

「柔兄、保育園かもしれんやろ」

「あ、そうか」

(ようちえん‥?ほいくえん‥?違います、ええっと…)


言い合う二人に、しえみは文字を書いて答えた。

「せ・い・じ・ゅ・う・じ・が・く・え・ん・ふ・つ・ま・じ・ゅ・く…」

「せいじゅうじがくえん‥ふつまじゅく…」

「……。っ、正十字学園祓魔塾!?」

柔造と金造は驚いた表情で顔を見合わせた。



2ページ目→



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -