(金しえ+他)
※キャラ崩壊注意
『志摩兄弟の誰かとしえみちゃんでギャグ甘』
「志摩ーお待たせ〜」
「遅くなってごめんね」
日も傾いた夕方5時。
志摩廉造の家に、祓魔塾の塾生+αが集まった。
夕食の為の机やお皿の準備をしていた金造、柔造、子猫丸、朔子、雪男。そしてたった今、材料の買い出しから帰ってきた廉造、しえみ、出雲、勝呂、燐‥に抱えられたクロの計10人+一匹である。
「おかえり〜」
「思ってたより早かったねぇ」
留守番組がみな笑顔で買い出し組を迎え入れる中。
「‥ちょお待ちぃ」
一人、不穏な空気を醸し出す男がいた。
「金兄‥?」
「?どないした、金造」
廉造と柔造がいち早く変化に気付き、買い物袋を覗き込んだまま動かない金造に問い掛ける。
「…コ」
「…は?」
「タコタコタコ!タ・コ!!」
「あ"あ"ん"!?誰がタコだコラ」
袋から顔を上げて『TAKO』と叫んだ金造に、燐が勘違いをしてメンチをきった。すかさず雪男が駆け寄る。
「落ち着いて、兄さん。今のは兄さんに喧嘩売ったわけじゃないと思うよ」
「‥えっ?あ、悪ィ!つい癖で‥」
「全くもう…兄さんの悪い癖だね。おでこつんっ!」
雪男が燐を宥める。
金造が再び口を開いた。
「…廉造」
「え!?僕?…な、なんやろか金兄」
「タコさんは?」
「…ぁ‥ごめん買い忘れたわぁ」
「お前っ!タコさん買ってこいゆうたやろがこのタコがあッ!!!」
「ッギャー!!なんで僕だけ!?」
思いっ切りハイキックを食らわされた廉造は、別の部屋へ吹っ飛んだ。
「お前ェ!タコ焼きするんに何でタコがないんやこのタコが!!!」
「誰がタコだ、ア゛ア゛ッ!?」
「兄さん落ち着いてったら。」
「あ‥すまねぇ、タコって言われるとつい反応しちゃって」
またしても下顎を突き出した燐を、兄のような弟、雪男が窘める。燐は恥ずかしそうに笑って引っ込んだ。
しえみと出雲は驚いた表情で、顔を青くして引いている。勝呂と子猫丸は慣れているようで夕食の準備を始めていた。朔子はニコニコと微笑みながら同じく準備を手伝っていた。
その間にも、兄弟喧嘩はエスカレートしてゆく。
「タコ焼きにタコ入れへんだら何入れるいうんやこのタコ!タコみたいな頭しよってからに!!」
「ひょえぇえ!タコは赤ですやん!僕の頭はピンクやで!」
「うっさいわ!大して変わらへんやろ桃色少年が!」
「そんな殺生な〜!!(てゆーか表現気持ち悪ぅ!!!)」
廉造は、金造に両足を捕まれぐるんぐるんと回転されながら叫んだ。
その時、台所から『焼く準備出来ました〜』という子猫丸達の声が聞こえた。それまでニコニコと弟達を見守っていた柔造はハッとして、
「金造、そのへんにしとけ」
と止めに入った。金造は不服そうに廉造から手を離す。
泡をふいて倒れた廉造を、出雲としえみが慌てて介抱した。二人の女の子に介抱され、廉造は幸せそうに『もういつでも往生できますよ』と言って親指を立てた。
「止めんといてや柔兄…」
「ええやんか、タコなくても。お前には柔兄がおるやろ?な?」
優しく微笑む柔造をチラッと見てから、金造は俯き、『アカンねん…』と呟いた。
「なんでや?」
「やって…タコ焼きはタコが入ってるからタコ焼きていうんやろ‥代わりに柔兄入れたら柔造焼きになってまうやんか」
「‥せやけどな、」
「タコなかったら!!タコなかったら…それはもう、タコ焼きとちゃうねんっ!!タコがないただの、ただの焼きや…っ!!!」
「金造…っ」
「タコ焼きマスターと呼ばれたこの俺が、そんな妥協許されんわ!まして好きな女の!しえみちゃんの前で‥!!」
「お前…そんなに真剣に考えて‥、くっ」
言いながら柔造は目元を押さえた。
「ねぇ神木さん、タコ焼きマスターって何かなぁ?」
少し離れた場所で廉造の口から出た泡を拭きながら、しえみが出雲に尋ねる。
「シッ!黙ってなさい!今いいところなんだから」
「神木さん‥?何メモ録ってるの?」
「次のBLのアンソロはこの二人で決定よ!帰ったら描かなくちゃ原稿が間に合わないわ!萌え〜っ!!」
素人の目では追い付けない速さで筆を走らせながら、出雲は萌え上がっていた。しえみは『びぃえるってなんだろう?』と首を傾げている。
「…いにしえより伝わる伝説に、こないな話があるらしい。」
アホの金造は何やら語り始めた。
「タコ焼きマスターの称号を得た者が一匹のタコをさばき、恋人と作った一個のタコ焼きを二人で突き合う時…その二人の愛は永遠のものになんねん!」
「ちょ、金兄なに言うてるん!?ていうか何やそのジングスみたいな呪い気持ち悪っ!!」
「何やと!?気持ち悪ないわ!昨日知らんおっちゃんが飴くれて教えてくれたんや!!」
「なに知らんオッサンに騙されてんねん!!アンタ幾つや!!」
「うっさい今出てくんなやこのドスケベが!!お前も金造色に染め上げたる!!!」
「イタタタやめてやめて禿げるから」
廉造は頭を抱えて転がり回った。柔造は真剣な眼差しで金造に近づき、優しく肩を叩いた。
「金造…お前の気持ちはよぉわかった。そない真剣なんやったら、柔兄が今からタコ捕りに潜って来たる。やから待っとり」
「じゅ、柔兄…ほんま?」
「おん。兄ちゃんが金造に嘘ついたことあったか?」
「っない!」
「ん。ほしたら信じて待っとれ。」
「おん!」
「えっ!?ちょお待って柔兄!捕りにって今から!?潜るって何処に!?金兄もそこ感動するとこちゃうやろ!!!」
「志摩…、」
「な、なん?奥村くん‥何で泣いてんのや‥?」
「お前の兄ちゃん‥いい奴だなっ!!」
「兄さんには及ばないよ!」
「雪男‥!」
「兄さん‥!!」
「…」
廉造はもうツッコむ気力もなくなった。
「廉造!」
「今度は柔兄…なんですの」
「金造は、今日しえみちゃんに愛の告白をするらしい」
「…なんで今日…しかもいきなり…ていうか今更…」
こめかみを抑える廉造に金造が答えた。
「今日の星占いで一位やったからや!」
「やからそんなもんに振り回されんなドアホ!!!」
「ア"ン"!?コラ!?誰がタk‥」
「兄さん!彼はタコじゃなくてドアホって言ったんだよ!」
「あ…そか、ごめん」
「…奥村くんと先生…帰ってくれへん…?」
「え?なんで??」
その時。
ガラガラ〜
「ただいま〜」
志摩家の大黒柱こと八百造が帰宅した。
「オトン!オトンや!!助けて!!」
廉造は縋るような思いで玄関まで走った。
「オトン助けて!!みんながおかしいね…ん‥」
「おお、廉造ただいま。そおいや今日お友達きはる言うてたなァ」
「おお‥オトン…、それ‥なん?」
「ん?これか?見たらわかるやろ、タコやタ・コ。近所の山田さんとこのご主人が釣りに行ったらしぃてな。くれはってん」
「…マジで」
「廉造?どないしてん青い顔して‥」
「もう嫌や…タコ嫌いやぁあああ」
「廉造!?どないしてんや!?」
「うぉおお!そのタコ金造様が頂いたぁあああ!!!」
「金造!?なっ、こっちくんな!!」
「オトン、最近の若いもんはタコ焼きパーティーをタコパて言うらしいで」
「柔造!?語ってんとはよ助けんかっギャアアーッ!!!」
その日、志摩家の近所でタコを片手に走り回る、金色の頭をした不審者が目撃されたという。
「三輪くん、タコなくても美味しいね〜」
「ホンマ。チーズとか合いますねぇ」
「あ。朴さんこっちもう焼けてんで」
「ホントだ、もう上げなくちゃ。勝呂くんお皿貸して?」
「おん、ありがとぉ」
ーーー
「兄さん…、僕たちなんで家に入れて貰えないんだろうね…」
「さぁ?よくわかんねぇ‥」
《燐!お腹すいた!》
「…クロも腹減ったらしいし…宿帰るか」
「…うん‥」