「綾崎さんと付き合うことになった……」 恥ずかしそうにそう言った仙石に、おめでとう。と呟いた。 そっか、綾崎さんと……。俺も綾崎さんのこと好きだったんだけどな。とは思うだけで口には出せなかった。 「おめでと」 もう一度言うと、仙石はあはは。と小さく笑った。 「京子には教えたの?」 「なっなななななんで京ちゃんに?」 「えーだって俺たち幼なじみじゃん?」 「俺はあの人と幼なじみだって思いたくないくらい恐れてる」 「仙石は要領悪すぎなんだよ」 そう言って笑うと、笑い事じゃないよ!と仙石は叫んだ。なんだか悲痛な叫びに思えた。 「そっかー綾崎さんと仙石がねー……」 そう呟いた瞬間、仙石と俺に壁が出来たように思えた。俺が勝手に作った分厚い壁だ。壁の向こうにいる仙石の姿も声も聞こえるけれど、確かにそこにあった。 あれ?俺はそんなに綾崎さんが好きだったっけ?仙石との間に壁が出来るくらいに? そんなバカな。と呟くと、仙石は不思議そうに首を傾げた。 「ごめん、帰るわ」 「あ……うん」 そう言って急に席を立つ俺に仙石は不思議そうな顔をしながら手を振った。 「確かに綾崎さん可愛いけど……そんなにかぁ?」 んー?と首を傾げながら歩いていたら携帯が震えたのでポケットから取り出す。そうだろうな、と思ったけれどヤッパリ仙石からのメールだった。急に帰ったから具合が悪くなったのかと心配するような内容で、俺はそれに素っ気なく何でもない。と返した。いつもなら可愛い絵文字や顔文字で溢れているのに、凄くシンプルで嫌になる。 それは仙石が壁の向こうにいるからなのかな。と思った。 遠いところから届いた手紙 仙石を壁の向こうに追いやってしまったから、俺は仙石と喋らなくなった。なるべく話しかけないように、話しかけられないように。そんなことを続けていたら、仙石からも話しかけてこなくなった。 しばらくすると俺も向こうも違う友達と話すようになって……2年になったら俺と仙石はただの知り合いになった。 それは酷く寂しかったけれど、厚い壁が邪魔をして近づくことができない。もはや俺にも壊すことが出来ないほど分厚くなっていた。 |