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気づいたら下校時刻になっていた。
「おーいゆめ姐さん、もう帰る時間じゃねェの?うん。」
「やっべ…デイダラ、片づけ手伝って。これ流し台に流してきてよ。」
「えーめんどくせェよー。」
「あ"?」
「任せろうん!!」
威圧させると大人しく言うことを聞いてくれた。最初からそうすればいいんだよ。
「ホント旦那と似てるよ…うん。」
「なんか言った?」
「いやなにも!」
あのドSと似てるだなんて失礼な。
私はあそこまで悪魔じゃない。
ガラリ。
「ゆめ、そろそろ帰るぞ。」
そこでイタチが入ってきた。
「はいよーちょっと待ってて。」
「…新入生、入ったのか。確か昼間の…」
「そう、デイダラっての。」
デイダラもイタチを覚えていたらしい。
けどデイダラはイタチを見るなり顔をしかめた。
「デイダラ、イタチは先輩なんだから…ほら挨拶しなって。」
「…1年のデイダラだ、うん。」
「うちはイタチだ。」
イタチの名を聞くなり、デイダラは叫んだ。
「てめェ、やっぱりうちはの奴か!うん!」
「…し、知り合いなの?」
「いや、初対面だ。」
「っ、ホントにムカつく野郎だな…!!」
デイダラはギリッ、と歯を食いしばった。
…イタチまた知らないところで恨み買ってたのかな。元々天然入ってるし、意外と他人には無関心なところがあるしなァ。
「…んで、過去になにかあったようだけどデイダラ、なにがあったの?」
一方的に睨んでいるデイダラを宥めて、落ち着いたらしいので訊ねてみる。
「こいつは、オイラのジジイ自慢の花火を侮辱しやがったんだ!うん!!」
「えーそれはダメだよイタチ。」
「そんなことをした覚えはないが…もしかしてその花火とは、オオノキさんのところか?」
「あァそうだ!忘れもしねェ中1の夏…!」
デイダラの話によると、デイダラの家系は花火職人らしく特に祖父、オオノキさんは有名な花火師で、毎年夏になるとそれはそれは見事な花を夜空に大きく咲かせるんだと。
デイダラはオオノキさんとは喧嘩ばかりしているが、1番尊敬している、と。なんだ意外と可愛いとこあるじゃん。
そしてそのオオノキさんと、イタチの祖父にあたるマダラさんは長い付き合いなので毎年夏になると家族揃って、特別席で花火を見に行くんだとか。
デイダラが中1、イタチが中2の頃。
デイダラも中学生になったから、ということで本格的に花火に触れさせようと思ったらしいオオノキさんはデイダラを連れ出した。
本来なら資格がなければ扱うことができないため、見てるだけだったみたいだけど。
そして連れ回されているときに、うちは一家が到着した。
デイダラもその存在は分かっていた。
だから面倒ではあったが、愛想笑いは一応浮かべていた。
花火が打ち上がり始めるとあちこちから感嘆の声があがる。
デイダラはオオノキさんが褒められているようで誇らしく思った。
ふと、うちはの子供が目に入った。
無表情で笑みの1つもない。
あろうことか欠伸まで漏らした。
もっと驚いたのは、その隣でさらに小さい子供がゲームをしていたのだ。
それがイタチ、弟のサスケだと後から知ったんだとか。
「…で、腹が立ったと。」
「そうだ!まだガキだったとはいえ、あれには腸が煮えくり返る思いだったんだ…うん!」
なるほど。
「イタチ、覚えてる?」
「………いや…そんなつもりではなかったのだが…。」
だろうね。
イタチは元々感情の起伏が穏やかで、表情も顔に出さない。
イタチにとっては普通だったみたいだけど、デイダラにはなにも感じてなかったように見えたんだろう。
ていうかお前絶対おじいちゃん好きだろ。
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