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『サソリ、みーっけ。』
『っ、あ…ゆめ、ちゃん…。』
『こんなとこにいたの?心配しちゃった。他の皆も捜してたよ、サソリがいない!って。』
『あ…あ、ぼ、ぼく、トイレに行こうとして、そ、それで、戻り方がっ、分かんなくなっちゃって、』
『うん分かってる、怖かったよね。』
『…う、ひっく、ゆめちゃん…っ!』
『よしよし、もう大丈夫だよ。一緒に皆のとこに戻ろう。』
あれは町内会でのイベントで遊園地に行った日のことだった。
サソリが5歳、私が6歳のできごとだ。
サソリがいなくなったとき、いつだって見つけるのは私の役目。
サソリを見つけることは簡単だ。
好きな人を、見つけることなんて容易いこと。
安心からか泣き始めたサソリの頭を撫でる。
小さい子供にとって1人になることはさぞかし不安だっただろう。
『大丈夫?落ち着いた?』
『う、うん…ごめん…。』
『いいよ、じゃあ行こうか。』
スッ、とサソリに手を差し出す。
『え…?』
『…手、繋いだ方がはぐれないでしょ?』
『…ゆめちゃん……。』
『あ、でも、嫌ならいいの、サソリが大丈夫なら…、』
ぎゅ、と自分よりいささか小さい温度が手に伝った。
『えへへ…ゆめちゃんの手あったかい。』
『…サソリの手も、あったかいよ。』
お互い笑って手を強く握り締め合った。
『じゃあ戻ろうか。』
『…うんっ。』
あの後戻って少しいろんなこと言われたけど気にしなかった。
初めてサソリと手を繋いだ。
その事実が幼いながらもたまらなく嬉しくて、サソリに触れた手を見ては1人で少しだけ頬を赤らめていた。
元々引っ込み思案であるサソリは両親やチヨバアにしか甘えない。
だからこそ頼ってくれたことが、ただ手を握ってくれたことが嬉しかった。
思えばあの頃から惹かれていたんだと思う。
いや、それよりも前から、違う、初めて出会ったあのときから。
そんなことを改めて思い知った。
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