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入学式は数時間で終了した。
長ったらしい校長の話、来賓の誰かの祝辞、どっかの会長の話など全て頭の片隅にも残ってはいない。
…ただこびりついて離れないのは、
「(…制服、似合ってた……。)」
新入生代表で挨拶していた。
壇上に上がった瞬間、辺りがざわめいた。
女子のほとんどは恍惚としていた。
「(今頃女子に囲まれてるんだろーな。)」
容易く想像できてしまうから憎たらしい。
サソリのことだから適当に相手して軽くあしらっているんだろう。
あいつはどんなに可愛い女の子でもまともに相手なんてしない。
そう分かってはいても、これから先またあんな光景を嫌でも見なきゃならないのは正直こたえる。
まァ1年生と2年生のフロアは違うから学校で会うことなど滅多にないだろう。
「…、ゆめ!」
「、!」
「おいおい大丈夫かよ?」
飛段が心配そうに顔を覗き込んできた。
「ごめんなんでもないよ。」
「そうかァ?」
「それで、なに話してたんだっけ。」
あァ、と飛段は話しだす。
「なんでもよォ、おれ達のクラス転入生が来るらしいぜ!」
「転入生?」
「角都から聞いたから間違いねェよ!」
飛段はどこか楽しそうに話す。
転入生、か。
「えーと…どっから来るのかは忘れちまった!」
「…まァ大して興味も湧かないからいいよ。」
飛段の記憶力はあてにならない。
こいつから回ってくる情報は7割がデタラメだ。そりゃ赤点もしくは、それギリギリの点数しかとらない奴だから仕方ないっちゃ仕方ないけど。
また勉強教えないとなーなんてそんな先でもない未来のことを考えている最中だった。
「……な、なァ!」
「あァ?誰だおま、ふが、」
「やめなよ飛段怖い。」
話しかけてきたクラスメイトの男子をギロリと睨む飛段の口を塞ぐ。
ホントこいつ口悪いな、見た目も厳ついんだから少しは学習してほしい。
「あ、あのさー…、」
「なーに?」
「…っ、あ、その、」
「んだよてめェはっきり、」
「黙ろうね飛段。ごめんね、なに?」
照れからか少しはにかみながら、視線をぐるぐるあちこちにやりつつも彼は言葉を発した。
「その、お前らって…付き合ってんの…?」
予想の斜め上をいく発言をされた。
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