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「おーっすゆめ…って、暗ェなおい!」
「おはよう飛段…。」
いつもと様子が明らかに違う親友に飛段は困惑する。
どう違うかというと、雰囲気がなんかもうどんよりとしている。いつものゆめとは別人のようだ。
「どうしたんだァ?朝飯でも食い損ねたのかァ?」
「そこまで食い意地張ってないし朝ごはんはちゃんと食べたよ。私は飛段と違って寝坊なんてしない絶対。」
「ならどうしたんだよ。」
さり気なく貶されたことはスルーして、飛段は詳しく聞こうとした。
「同居人ができた。」
「は?」
「だから同居人ができた。」
「……………で?」
「なにその冷めた反応!私にとっては深刻なことこのうえない問題なのに!相談に乗れマゾ野郎!!」
「マゾ野郎とか関係なくね。でも同居人ができたからってマイナスになることってなくねェ?」
余りにも内容が大したことなさ過ぎて拍子抜け、といった様子の飛段。
その飛段の様子にゆめは腹を立てた。
「その同居人が問題なんだよ!色々と!!」
「あァ?どんな奴なんだよ。」
耳をほじりながら適当に訊ねる。
ゆめは額に青筋を薄っすらと浮かべながら愚痴り始めた。
「あんの野郎、結局引越しの荷物殆ど私にやらして人の部屋勝手に入って物色するわ、居候の分際であれこれ命令するわ、気づいたらいないわ…!」
「…ヘェー…。」
「帰って来たのいつだと思う!?夜の8時だよ8時!なにしてたって聞いたら散歩とかマジふざけんなだよ!4時間以上かけた散歩とか暇人だろ!なんで荷物片付けないんだし!」
「…ほー…。」
「帰って来るなり風呂沸かせだの飯は煮物がいいだの疲れたからマッサージしろだの…亭主関白かってのあァん!?一体なに様なんだあんの赤髪鬼畜野郎!!」
「…でも要望全部聞いてやったんだな。」
「………まァ仕方なく…。」
はァ、とため息をつくゆめ。
昨日だけでかなり疲れているようだ。
きっと今朝も大変だったのだろう。
「追い出しちまえよそんな奴。おれだったら耐えらんねーなァ、角都以外。」
そう言うとゆめは俯いた。
「……ら、」
「ゆめ?」
「それができたら、苦労しないって…。」
悲しそうに、辛そうに。
今までに見たことない表情をしていたゆめに飛段は思わず狼狽えた。
「お、おいゆめ!?どうしたんだよそんな辛気臭ェ面してよォ…。」
俺なんか変なこと言ったかァ?と、焦ったように言う。
ゆめはそんな飛段を見て、吹きだした。
「あ!んだよ、なに笑ってんだ!!」
「飛段ってさァ…ホント見た目アレだけどすっごいいい奴だよね。」
ありがと、といつも通りの笑顔で言う。
褒められたのか貶されたのか複雑ではあったが、ゆめの笑顔を見て飛段はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
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